マッキンゼー、そして経営コンサルティング業界までもつくり上げたマーヴィン・バウアー。経営コンサルタントは、医師や弁護士のようなプロフェッショナルなのだと自ら定義し、それを徹底して同僚・依頼主・メディアに広め続けたのです。その偉大な業績を 『マンガ 経営戦略全史〔新装合本版〕』 (三谷宏治・著/星井博文・シナリオ/飛高翔・画)から抜粋してお届けします。

マーヴィン・バウアー
・ハーバード大学出の弁護士&MBA
・36歳でマッキンゼーを引き継ぐ
・1950~67年の17年間、代表
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バウアーによるマッキンゼーの「創生」

●世界最大の経営コンサルティングファームであるマッキンゼーは、ジェームズ・マッキンゼー(James McKinsey、1889~1937)が亡くなったあとに、事実上のスタートを切りました。

●2つに分裂した組織の片方を、創業者の名前とともに引き継いだのは、入社6年目、36歳だった弁護士マーヴィン・バウアー(Marvin Bower、1903~2003)でした。彼はマッキンゼーを経営「エンジニアリング」会社から経営「コンサルティング」会社に仕立て直し、経営コンサルティング業界そのものをつくり上げていきました。

●ハーバード大学での法学修士号とMBA(経営学修士)を持つバウアーは、経営コンサルタントは(医師や弁護士のような)プロフェッショナルなのだと自ら定義し、それを徹底して同僚・依頼主・メディアに広め続けたのです。HBS(ハーバード・ビジネス・スクール)は彼を「近代マネジメントコンサルティングの父」と呼んでいます。

「組織コンサルティング」に絞って仕事を標準化

●自らを「経営と組織の問題に取り組むプロフェッショナルファーム」と定義したのはいいものの、具体的なサービス内容を固めるまでに数年間の試行錯誤がありました。結局、バウアーが見つけ出したのは組織改革コンサルティングでした。

●1950~60年代のアメリカは、アルフレッド・チャンドラーが『 組織は戦略に従う 』(1962、邦訳はダイヤモンド社)で看破したように大きな組織変革期にありました。事業の多角化・海外進出が、組織の分権化を強く要請していたのです。そして、マッキンゼーは「事業部制の導入支援」を主力商品にしました。

●同時に彼は総合的な企業診断ツール「ジェネラル・サーベイ・アウトライン」を完成させます。クライアント企業の組織、プロセス、実績、予算などの効率性を定量的に測定する標準手引書です。この包括的企業調査マニュアルは、経験の浅い新人コンサルタントを戦力化するのに大変役立ちました。バウアーはトップとして17年の任期中、マッキンゼーの売上高を10倍にしました。

マッキンゼーの油断

●マッキンゼーはその社史に記すように、その後の1970年代を苦しみながら過ごすことになります。チャンドラーの密かな予言通り、「(企業・事業)戦略そのものの変革」が大切になってきたからです。オイルショック(1973)の大波に苦しみ、単純な事業拡大に行き詰まった企業から、「事業部制にしたが、その後戦略はどう変えるのか?」といった問いを突きつけられるようになりました。それは「組織戦略」ではなく「企業戦略」や「事業戦略」の話でしたが、そこへの準備はまだ不十分でした。

●その隙を突いて急成長したのが「戦略オタク」ブルース・ヘンダーソン率いる新興コンサルティング会社、ボストン コンサルティング グループ(BCG)だったのです。

シナリオ/星井博文 画/飛高翔 編集協力/トレンド・プロ

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