その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は大橋好光さん、柳澤泰男さんの『 設計実務に使える 木造住宅の許容応力度計算 』です。
【はじめに】
2025年、木造住宅に関する建築の法規制が大きく変わります。改正建築基準法や改正建築物省エネ法が全面施行され、省エネ基準の適合義務化や4号特例の縮小などが実施されます。いずれも小規模な木造建築を特別扱いしてきた法規制を見直すものです。
住宅設計者にとって特に影響が大きいのは、4号特例の縮小です。4号特例とは、建築確認の際、小規模な木造建築については構造審査を省略する制度です。これが改正され、25年からは2階建て木造戸建て住宅では構造審査が実施されます。住宅設計者は、壁量計算や四分割法などに関する設計図書や、許容応力度計算の構造計算書などを提出することになりそうです。
さらに国土交通省は22年10月、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準などの高い省エネ性能を確保した木造住宅が重量化しているとしてZEH壁量等基準の案を示しました。仕様規定に当たる基準値は、従来の壁量の1.5倍から2倍に及んでいます。一律の基準値は、簡易に確認する方法であるため、大きめの値となっているのです。一方で、国交省は許容応力度計算などの構造計算を用いれば、基準変更の影響を受けないと説明しています。このため、構造計算を採用する住宅設計者が今後、増えると予想されています。
住宅設計者が構造計算に対応する方法として、構造計算ソフトを活用したり、構造設計事務所に外注したりすることが考えられます。いずれの場合も、できあがってきた構造計算書に間違いがないかを、住宅設計者自身がチェックしなければなりません。「そんな時、役立つ書籍を書きたい」と考えたのが本書執筆のきっかけです。
本書は、許容応力度計算をはじめたい住宅設計者をサポートする入門書です。
25年に向けて準備をする時間は、まだあります。本書が、許容応力度計算の基本を理解し、構造計算書を読み解く際に役立ことを願っています。
筆者代表 東京都市大学名誉教授 大橋 好光
【目次】