その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は松岡貴志さんの 『ラズパイ自由自在 電子工作パーツ制御完全攻略』 です。

【まえがき】

 私が電子工作に初めて触れたのは、30年以上前の高校生の頃。基板の自作やはんだ付けをするのが当たり前の時代でした。
 その頃と比べると、電子工作を楽しむ人が増えているように感じます。ラズパイ(Raspberry Pi)やArduinoといった、初心者にも扱いやすいPC/マイコンボードが登場し、電子パーツを追加して手軽に機能を拡張できるようになったことが大きな理由でしょう。私自身もラズパイを使って、RCカー(無線操縦車)のラップタイム測定器を作ったり、合わせ鏡でLEDが無限に広がるように見える無限鏡の時計を作ったりと、今も工作を楽しんでいます。
 電子工作を楽しむ人が増えたもう一つの理由が、電子工作の記事やブログがネットで無償で読めるようになり、さらに、使いやすいライブラリなどが利用できるようになったためだと思います。
 しかし、ネットの記事を参考にしながら電子パーツを結線してソフトウエアを切り貼りしただけでは、思うように動いてくれないことがよくあります。ソフトウエアに間違いがあるのか? 結線が間違っているのか? そもそも電子回路として大丈夫なのか? ラズパイとセンサーとは正しく通信できているのか? 思い付く原因は多数あります。こういう状況になってしまうと、もはや楽しむどころか苦行になってしまいます。

 そこで、思うように動かないときに解決できる電子工作のスキルを身に付けてもらいたくて、本書を執筆することにしました。
 本書は「ネット上の作例のコピペでは満足できない」「いろんな電子パーツを使いたい」「電子パーツの違いを知りたい」「動かないときの解決策を知りたい」という人を対象にしています。工場や小売の店頭といったIoTの現場で、システムを確実に動かしたい方にも役立つでしょう。

本書の構成

 本書は、2部構成になっています。どちらから読んでも問題ありません。

 前半の「パーツ分解・実験編」は電子パーツをとにかくつないで動かす、実践的な内容です。センサーやモーターなどの電子パーツをラズパイに結線する方法と、すぐに動かして試せるPythonプログラムを掲載しています。PythonプログラムはGitHubのサポートサイト「https://github.com/matsujirushi/raspi_parts_kouryaku」(短縮URL:https://bit.ly/3ozOIou)からすべてダウンロードできます。
 電子パーツを分解したり、複数機種を比較する実験をしたりして、電子パーツの仕組みや特性を詳しく調べた点が、本書の大きな特徴です。仕組みの違う電子パーツを見比べて、用途に適したものを選び、ラズパイで使えるようになります。

 後半の「Raspberry PiのIO詳解編」は、ラズパイを電子パーツとつなぐ方法(インタフェース)を解説する技術的な内容です。ラズパイと電子パーツは、汎用入出力端子にあるI2CやSPIといったインタフェースを使ってつなぎます。このインタフェース(デジタル入出力、PWM出力、I2C、SPI、UART)のそれぞれについて、特徴と仕組み、入出力するための具体的なPythonプログラムを掲載しています。
 実際に電子パーツをつないで少しずつ動かしながら、機能を網羅的に確認できるように工夫しました。I2Cインタフェースの「クロックストレッチ」など、実際にトラブルが発生しやすい部分も網羅しています。「ロジックアナライザー」などの測定器も使って、細かい挙動を確認しました。今までなんとなく使っていた各種インタフェースを理解することで、電子パーツのデータシートを参考に、自らラズパイに接続して操作できるようになります。

 「とにかく手を動かして経験をためて覚える派」は前半から、「細かな仕組みを十分理解したい理論派」は後半から読むとよいでしょう。ラズパイのインタフェースを基本から押さえたいという場合も、後半から読んでください。

電子工作は苦労も楽しい

 電子工作の作品を見て、「既製品でもっと良いものがある」と言う人もいます。しかし、自ら手を動かして作品を作る作業には、なんともいえない喜びがあります。
 私自身の原点は、高校時代の経験です。74シリーズロジックICのデータシートとにらめっこしながら頭の中で回路を動かし、方眼紙にタイミングチャートを何度も手書きして回路図を考えました。回路図が出来上がると、OHPシートに油性マジックで配線パターンを手書きして、感光基板に露光、現像、エッチングして基板を手作りしました。そして、はんだ付け。うまくはんだ付けするには慣れが必要で、ヤケドしながら何度もやり直しました。
 試行錯誤しながらも、自分で考えた回路が基板になって、実際に手元で動くのが楽しかったです。最後の穴開けが、とてもつらかったのを今でも覚えています。自分で言うのもなんですが、ちょっと変わった高校生だったのかなと思います。
 そんな苦労がまた楽しいのが電子工作です。本書の中でも、さまざまな試行錯誤を重ねています。読者も本書を参考に、自分なりのトライをしていくとスキルがどんどん身に付いていくはずです。

謝辞

 執筆経験の無い筆者の無謀とも思える願望に、刊行の機会をくださった日経BPの安東一真氏には大変感謝しております。執筆の機会に加え、執筆内容においても長期間にわたってアドバイス、リーディングをいただきました。本当にありがとうございます。
 また、子育てで大変な時期にもかかわらず、さりげなくサポートしてくれている妻 ひとみにも感謝します。ありがとう!

 私自身の経験から、“初心者の次” へ行くのに身に付けるべきスキルをとりまとめた書籍に仕上がりました。読みにくい点、至らない点がいくつかあると思いますが、本書によって少しでも読者の電子工作がより楽しくなることを願っています。

2022年2月
松岡 貴志

【目次】

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