その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は田中亨さんの 『Excelの本当に正しい使い方』 です。

【はじめに】

 ビジネスパーソンの必需品ともいえる表計算ソフト「Excel(エクセル)」。これをうまく使えることは、今や、仕事を素早く的確にこなすために必須の条件となっています。
「Excelの操作がわからず、無駄に残業をしてしまった……」というのではあまりに非効率です。「ある人は1日かかってしまったデータの入力作業を、Excelに堪能な人が行ったら30分で終わった」なんてこともよくあります。最低限、Excelの基本的なスキルは身に付けておきたいものです。
 ただ、「Excelの操作方法を知っている」というだけでは、ビジネスパーソンとして不十分です。なぜなら、ビジネスの現場では「実務に適したExcelの使い方」があります。その作法を守らなければ、Excelがかえって業務の弊害になることすらあるのです。

「間違った使い方」が、自分も他人も困らせる

 Excelの「正しい使い方」を理解するために、ビジネスシーンでよく見かける「間違った使い方」を、3パターンに分けて考えてみましょう(図1)。

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 1つめは、そもそも「できない」というケース。Excelの使い方がわかっていないため、作業が進みません。さらに困るのは、わからないからとインターネットで検索し、そこに書かれていた数式やマクロをそのまま“コピペ”して「できたつもり」になることです。意味を理解することなくやみくもに使えば、計算結果が間違っていてもその検証ができません。Excelがどのようにデータを扱うのか、どうすれば適切な処理や計算ができるのか、根本から理解していなければ、大きなミスにつながる恐れがあります。
 2つめは「わからない」というケースです。他人から受け取ったブック(ファイル)を見ても、その内容を理解できないので修正や更新ができません。データを追加したことで数式を変更する必要が生じた場合にも、どこを修正すればよいのかわからないので、応用が利きません。これでは困ります。
 一方、「自分はできるし、わかる」と思っている人ほど、陥りがちな誤りがあります。それが、3つめの「引き継げない」ケースです。自分がExcelを使えるからといって“独りよがり”なブックを作り、「他人がわからない」ものにしてしまう人がいます。自分では便利な機能をたくさん盛り込んで完璧なブックを作ったつもりでも、それを引き継いだ人が使えなければ、業務全体の効率は下がってしまいます。
 ここでいう「他人」には、自分自身も含まれることを意識してください。自分が作ったブックでも、1年後、5年後には作成時のことなど忘れているものです。それはもはや、他人のブックと同じでしょう。自分を含め、誰がいつ見ても内容を理解でき、再利用できるブックにしておく必要があります。
 つまり、Excelの「正しい使い方」とは、操作や技術の問題であると同時に、業務に取り組む姿勢の問題でもあります(図2)。Excelはあくまで“道具”。実務において何が必要かを考えて、Excelを使いこなさなければなりません。

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政府もExcel表の作り方に統一ルール

 2020年12月、総務省が「統計表における機械判読可能なデータの表記方法」の統一ルールを策定したことが話題になりました。これは、各府省が政府統計の総合窓口「e-Stat」に掲載する統計表の作り方について、ルールを定めたものです。その内容を見ると、Excelで統計表を作る場合のチェック項目として、「1セル1データとなっているか」「数値データに文字列が含まれていないか」「セルの結合をしていないか」といった注意点が具体的に示されています(図3)。

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 筆者からすると「当たり前のこと」ばかりですが、裏を返せば、「間違った」表の作り方をしている例が、これまでいかに多かったかということです。各種の統計データは貴重なもので、それをうまく集計・分析して活用できれば、自分のビジネスや生活に生かすことができます。それなのに、数値が「文字列」になっていたら、計算もグラフ化もできません。セルが「結合」されていると、並べ替えすらできません。“データ社会”ともいわれる現代、各種の資料や統計は紙のように閲覧するだけのものではありません。データとして活用し、繰り返し再利用できてこそ意味を持つものになります。
 もちろん、総務省の統一ルールは「機械判読可能なデータ」にするためのもので、プレゼンテーション資料など「見栄え重視」の表を作る場合は、異なる作法があるでしょう。ただ、Excelには目的に応じた「正しい使い方」があり、やみくもに使うことは許されないということは、常に念頭に置いておくべきです。そのためには、Excelの機能や特質をきちんと理解して、データの共有や再利用も意識しつつ、「業務全体」を見通した使い方をすることが重要になります。
 本書では、そのような“本物のExcelスキル”を習得できるように、「これは知っておいてほしい」というExcelの根本から解説しています。小手先のテクニックではなく、業務に必要な「正しい使い方」を身に付けるための参考になれば幸いです。

【目次】

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