仕事で成果を上げるためには、自分の価値を高めることが重要。Twitterフォロワー数12.5万人を誇るmotoこと戸塚俊介さんは、著書の『WORK 価値ある人材こそ生き残る』で自分の価値を高める70の考え方を紹介しています。その内容や反響について聞きました。今回は2回目。(聞き手は、日経BP編集者で同書担当の中野亜海)
会社の成長を考えずして自分の成長はない
中野亜海・日経BP編集者(以下、中野) 『WORK 価値ある人材こそ生き残る』 の26ページにある「自分の成長より会社の成長を考える」というところがとても面白いと思ったのですが、ちょっと物議を醸しそうですね。
戸塚俊介(以下、moto) はい、ここは結構、物議を醸しました。会社に入ることで自分が成長したいという人は、割といると思うんですよ。
中野 いますね。それが志望動機になったりして。
moto リクルートにいたときは、確かに僕もリクルートに入ることで自分が成長して、どこでも活躍できる人材になりたいと思っていました。上司にそう言うと、こんな話をしてくれました。
moto リクルート事件でリクルートが危機に陥ったとき、会社を立て直して活躍していたのは、自分の成長ではなく、会社をどうしたら立て直せるのかを考え、そのために努力できた人間で、そういう人たちはリクルートを辞めた後でも活躍をしていると。会社のことや、世の中と会社のつながりをしっかり考えられる人間が成長していくもので、会社の成長を考えないと自分の成長はないと言われました。
中野 確かにおっしゃる通りですね。会社が危ないというときに、自分の成長ばかり言う人とは一緒に仕事がしづらいかもしれません。たぶん、いかなるときも会社には危機感があって、ちゃんと会社として立て直していくという視点を持たないと、会社は機能しなくなりますね。
moto 一方で、「自分の成長より会社の成長を考える」というフレーズが炎上したときにあった意見は、会社に奉仕しても自分へのリターンはないのではないか、なぜ会社に尽くさなきゃいけないのかというものです。
僕は、ラクすることを考えながら働くことよりも、会社の成長という視点をもって目の前の仕事に取り組むことが、結局は自分の経験となって成長につながるのだと思っています。
中野 結局は自分のためになるということですね。
moto そうですね。この本は言葉を切り取って出すと炎上要素が結構あって、実際にTwitterでトレンドに入るぐらい炎上してしまったこともあります。でも、本の一部を切り取るのではなく、全部読んでもらうと、腹に落ちる1冊になっています。
自分で考え、仕事を生み出す
中野 30ページの「仕事のアクションは自分で起こす」という項目も面白いです。やらされ仕事なのか、それとも自分で生み出した仕事なのかをまず考えようということですね。
moto はい。例えば、今日は特にやることがない…というとき、上司も休みだし早く帰ろうとか、リモート勤務だからYouTubeでも見よう、と考える人もいるでしょう。別にそれが悪いとは言わないけれど、与えられた仕事だけをしていると、言われたことしかできない人間になってしまうのではないでしょうか。また、与えられた仕事で失敗すると、あの人に言われたからやっただけです、みたいな他責思考になりがちです。それだと、結局、成功しても他人の成功、失敗しても他人の失敗で、自分に残るものが何もないんですよね。
今日はこれをしよう、明日はあれをやろうと、自分で仕事を生み出して生産的に動き、成功や失敗を経験したほうが得られるものは大きいです。別に目先の給料が上がるという話ではなくて、長い目で見て自分の価値につながると思います。
中野 しかも、そうしたほうが働いていて絶対楽しいですよね。
moto はい、そうだと思います。自分がやった通りに動いていくし、仮に上司にダメと言われても上司を説得するのもまた仕事で。常に達成するための手段を考えて動いていくことが大事だと思います。
中野 motoさんの話を聞いていると、できそうな気がしてきます。
moto そう思ってもらえたらうれしいですね。
誰もやりたがらない仕事にも価値がある
中野 この本の中で私がとても好きなのは、34ページの「誰もやりたがらない仕事は、信頼を獲得する大変いい機会」というところです。
moto 誰もやりたがらない仕事だけど、やったら会社のためになることってありますよね。例えば、本来は「お店のお客さんを増やす」という目的があるけれど、実際に仕事が下りてきたときには「会員カードを作って登録してねキャンペーン」みたいな感じになっている。自分としてはそれをするメリットがよく分からない。
でも、何のためにこの仕事をやるのかをよくよく考えていくと、会員カードでお客さんを囲うことによって、会社がお客さんにリーチしやすくなるメリットはすごく大きい。そういうところもちゃんと考えながら行動していくことが大事で、意外と見落としがちなポイントかなと思います。
中野 つまらない仕事だと思っていたことが、違う見方をすると価値あることに変わるというのは、素晴らしい発想ですね。今まで自分が避けていた仕事も、きちんと価値を見直してみたいと思います。
構成/佐々木恵美