プログラムがどう動くのかを図解入りで分かりやすく解説した 『プログラムはなぜ動くのか』 。2001年の初版から2007年の第2版を経て、2021年に待望の改訂第3版が出版された。初版から20年、変わったことと変わらないことなどを著者の矢沢久雄さんに聞いた。今回は1回目。(聞き手は、「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)

いつの時代でもやはり基礎が大事

尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 著書『プログラムはなぜ動くのか』を出版される以前は、どのようなことをしていたのですか。

矢沢久雄(以下、矢沢) ずっとIT業界でプログラミングをやってきたのですが、出たがりなものですから、雑誌にいろいろと投稿しているうちに記事や本を書くようになりました。それが研修会社さんの目に留まって講師をやるようになり、今は講師と著作家を主ななりわいとしています。開発からは離れてしまったので、自分のことを“ソフトウエア芸人”と称しています。

尾上 雑誌に投稿されていたのですね。

矢沢 雑誌を読んでいてアイデアを思いつくと、発表したくてうずうずしてしまって。当時はコネクションがなく、電子メールもないので、手紙に記事を添えて送っているうちに載せてもらえるようになりました。『トランジスタ技術』や、当時の『月刊アスキー』、『月刊C MAGAZINE』などに片っ端から投稿していました。

尾上 それから『日経ソフトウエア』で連載を持ち、『プログラムはなぜ動くのか』の初版を出されたのが2001年ですね。

矢沢 当時の『日経ソフトウエア』の編集長から「雑誌はたいていはやりの技術を取り上げるけれど、いつの時代も基礎が大事なのでそのような連載にしたい」と相談をいただきました。基礎って何だろうと考えながら月刊誌(編注:現在は隔月<奇数月>で発行)で1年間連載したものが、この本のベースになっています。

「いつの時代も基礎が大事」のメッセージを込めて書籍化された
「いつの時代も基礎が大事」のメッセージを込めて書籍化された
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尾上 『プログラムはなぜ動くのか』が出版された当時、私は書店の営業として秋葉原辺りも担当していたのですが、驚くほど売れていました。

矢沢 私も編集長もビックリするほど売れました。自慢話なんですけど、当時、Amazonで一瞬ですが1位になったんです。そのときの2位が『ハリー・ポッター』シリーズですよ。いつの時代も基礎が大事というメッセージが受け入れられたのか、それとも疑問調のタイトルが良かったのか、いまだに分かりません。

尾上 『プログラムはなぜ動くのか』がきっかけとなり、その後に『コンピュータはなぜ動くのか』『ネットワークはなぜつながるのか』などとシリーズ化されて、この第3版が出るまでに累計の発行部数が69万部になっているんですよ。

矢沢 『なぜ』シリーズは全部私が書いたわけじゃなくて、作品ごとにいろいろな方が書いていますが、それにしても、すごいですよね。

20年たっても根本の仕組みは変わらない

尾上 『なぜ』シリーズの先陣を切った『プログラムはなぜ動くのか』が発売された2001年頃から比べて、プログラマーの状況に変化はあったのでしょうか。この20年間で技術は進歩して、メジャーなプログラムの言語など変わった部分はあるにせよ、プログラムが動く仕組みは変わっていないわけですよね。

矢沢 プログラマーの世界は今でも派手ではないかもしれないけれど、地道にプログラマーとして頑張っている人たちはたくさんいて、基礎が大事という本のメッセージは伝わっているんじゃないかなと思います。

 コンピューターというのはハードウエアが母体にあり、その上にプログラムがのっかっているわけで、表面上は変わっても根本的な仕組みが大きく変わったわけではありません。ですから本を改訂しても、内容を大きく変える必要はないんだなと思いました。

尾上 20年前のプログラマーやエンジニアは理系出身の人が多かった気がしますが、その後はあまり理系文系に関係なくこの世界に入っているケースが多いですよね。

矢沢 私は研修講師をやっていて、IT企業の新人研修を担当することも多いのですが、半数くらいは全く経験がない人たちです。プログラミングは比較的習得しやすい技術だと思いますよ。コンピューターもプログラムも結局は道具で、それを生かすことが重要ですから、企業としても理系にこだわっていないのではないでしょうか。

仕組みを知ることが好きになるポイント

尾上 プログラミングの言語だけを学ぶのと、根本的な仕組みを理解しておくのとでは、やはり差がありますか。

矢沢 絶対にあります。何事もイヤイヤ歯を食いしばって勉強してもダメで、好きじゃないと身に付かない。じゃあどうやって好きになるかというと、仕組みを知ることが有効だと思います。車の運転ができるだけの人と、ボンネットを開けて中をいじる人とでは、好きの加減が違うと思いませんか。熱くなっているエンジンなどを見ると、より車に愛着が深まりますよね。

 仕組みを知ることが、好きになるポイントだと思います。好きになってしまえば、あとは放っておいても勉強しますから。研修をやるときも、何か細かいことを教えるのではなくて、とにかく好きになってもらうことばかり考えています。そのためには、車に例えるならボンネットを開けて中を見て、どうして動くんだろうと考えてみる。こういった原理は、すごく大事だと思うんですよね。ですからこの本には、コンピューターを好きになってもらおう、プログラムを好きになってもらおうという気持ちを込めたのです。

構成/佐々木恵美

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