文章術について書かれた100冊を読み込み、絶対ルールをまとめた書籍 『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』 がロングセラーとなっています。

 その著者、藤吉豊さんと小川真理子さんが、6月21日、立命館アジア太平洋大学(APU)で文章講座を開催! 参加したのは同大学の大学生たち。なぜ今、文章力が必要なのか。納得の解が得られる「SNSや就活に生きる!『伝わる文章』絶対ルール」と題して行われた講座の様子をお届けします。

伝わる文章にはルールがある。文章力は他の能力をも伸ばす、欠かせないスキル
伝わる文章にはルールがある。文章力は他の能力をも伸ばす、欠かせないスキル
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なぜ文章力は、「誰もが身に付けるべき」と言えるのか?

藤吉豊さん SNSやメール、チャットは皆さん、当たり前に使っていますよね。ビジネスシーンではオンライン会議が、大学ではオンライン授業が、もはや特別なことではなくなっていて、会わないで文章でやり取りをする機会が今、とても増えています。

 それに伴って増えているのが、文章でのやり取りによるトラブルです。言いたいことがうまく伝わらなかったり、相手からのメッセージに嫌な気持ちになったり、チャットでのやり取りが進まずすれ違ってしまったり…。自分の考えや気持ち、学んだ知識や体験を正しく文章にして伝えるには、やはり、文章力が必要です。

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 文章力は、ポータブルスキルです。

 ポータブルというのは、直訳すると「持ち運べる」という意味です。どんな仕事でも、どんな職場でも、どんな人とやり取りをするときでも、役に立つスキル。また、ポータブルスキルと言えるのは、文章力だけではありません。コミュニケーション力、論理的思考力、読解力、要約力、問題解決力、問題発見力、立命館アジア太平洋大学(APU)の出口治明学長が日ごろから言われている「タテ・ヨコ・算数」で考える力……こうした力もポータブルスキルで、職種、業種、時代背景に影響されません。能力を発揮できる仕事に制限がないのです。

 僕たちは、何か特別な専門的で難易度の高い資格や能力を身に付けなければ、社会に出て活躍できない、世間から評価されないと考えがちですが、それよりも前に身につけるべき、基礎的な能力がある、それがポータブルスキルなのです。

 その中で僕は特に、文章力が大事だと思っています。

 文章というのは、相手とやり取りをするときにも書くものですよね。ですから、正しく分かりやすい文章を書こうとすると、同時にコミュニケーション能力も高まる。正しく書くには、情報を正しく読み取って、適切な順番で書かなければいけない。すると、論理的思考力も伸びていく。このように、文章力は他の様々な能力につながっています。
 ポータブルスキルは社会に出たときに、皆さんを支えてくれる能力なのです。

文章は「書かないこと」を意識する

 文章を書くコツやテクニックはたくさんあります。今日は、厳選して2つのポイントを紹介します。

 1つ目のポイントは「文章はシンプルに」。文章術について書かれている本を読み込んでみると、100冊のうち53冊に、「文章をシンプルにすることが大切です」と書かれていました。

■「なくても意味が通じる言葉」を削る

 文章をシンプルにするというのは、「なくても意味の通じる言葉を削る」「ムダを省く」ということです。言葉を削れば当然、一文の長さは短くなります。短くなると、主語(何が・誰が)と述語(どうした)が近づきます。何がどういう状況なのか、誰がどうしたのか、という事実関係が、正確に分かりやすくなります。

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 文章を書いたら、読み返してください。削りやすい言葉があるならば、残したほうがいいのか、削っても大丈夫なのかを見直してみる。そうすることによって、文章はシンプルになっていきます。

「なくても意味の通じる言葉は削りましょう」と語る藤吉さん
「なくても意味の通じる言葉は削りましょう」と語る藤吉さん
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■一文の目安は「60文字」以内

 「一文を短くする」といっても、どれぐらい短くすればいいのか、分かりにくいですよね。読み込んだ100冊の本の中には、一文の文字数の目安を提示しているものがありました。その平均値を出してみたところ、「60文字以内が好ましい」ことが分かりました。

 ただしこれは、「必ず60文字以内にしないといけない」ということではありません。頭から読んだときに、誰が何をしているのかが理解できるならば、一文が長くても問題ありません。ですが、文章を書き慣れていない人は、複数の情報を一つの文章にまとめようとして一文が長くなってしまがちです

■ワンセンテンス・ワンメッセージ

 一文に入れる情報は1つに絞りましょう。それが、「ワンセンテンス・ワンメッセージ」です。情報ごとに文を切り分けて、一文に入れる情報を1つに絞ると、正確に伝わりやすくなります。

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伝わる文章には型がある

 2つ目のポイントは、「伝わる文章には『型』がある」こと。

 型とは、フレームワークやフォーマット、テンプレート、ひな型などと言います。つまり、思いついた内容を思いついた順番で書くのではなくて、書く順番をあらかじめ決めてしまうということです。順番を決めることで、どの内容から書くか迷わなくなり、結論がはっきりする。論理的で矛盾がなく、筋道が立った文章になり、また、情報の過不足もなくなります。

書くのが下手な人の共通点

 以前、僕たちは、大学生に3年間、雑誌作りのアドバイスをしたことがあります。その中で、文章の苦手な大学生には、共通点が2つあることが分かりました。

 1つは、「文章の流れが悪い」こと。それからもう1つは「情報に過不足がある」ことでした。流れが悪くて過不足があるから、同じような内容が繰り返し出たり、急に話が飛んでしまったり、論理展開が破綻してしまったり、文脈や結論が分からなくなったり。そうした課題を一発で解決するのが「型を使う」という方法です。

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 「文章を書かなければいけないけれど、何をどういう順番で書いていいか分からない」と悩む人は非常に多いと思います。型は、本当に便利です。最初のうちは、型をまねて文章を作る。そして書き慣れてきたら自分なりの型を見つければいいと思います。

 例えば論文を書くとき、書くのが上手な先輩の論文を一度見せてもらうことをお薦めします。内容をそのまままねるのは問題ですが、論文の上手な先輩は、どういう要素をその論文に入れているのか、どういう順番で組み立てているのか、という「型」を学ぶのです。

言葉には生き方が表れてしまう

小川真理子さん 私たちは文章術の本を100冊を読み込んで、ベストな40のポイントを抽出しました。その中には、書く技術以外に、心構えや心構えについてのポイントが多くありました。文章を上手に書くためには、心構えや準備がとても大切だというのです。

 そこから言えるのは、「文は人なり」。

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 文章は、その人の思想や考え方、性格といった人間性が自然と表れます。そしてまた、ある文章のプロは、「文章の上達に必要なものは、3つある」とも言っていました。その3つとは、「人生観・情報・テクニック」です。

 文章をまとめるとき、情報、つまり内容はとても大事です。新しい情報、面白い情報、正しい情報を集める必要があります。それからテクニック。先ほどお話ししたようなテクニックを身に付けるだけでも、文章は格段にうまくなります。

 しかし、文章のプロたちは、みな口をそろえて、人生観が大切だと言います。人生観がしっかりしていなければ、読み手に感動を与えることはできません。これは普段の会話やおしゃべりでも同じです。

 例えば、こんなことがありました。私はお花がすごく好きです。トビシマカンゾウというユリ科の花が咲き乱れている断崖があると聞いて、2週間前に新潟県の佐渡島に行ってきました。トビシマカンゾウは日本では山形の飛島と、新潟の佐渡島でしか見られず、しかも見ごろが短いお花です。トビシマカンゾウを見るのが本当に楽しみで、私は1日バスツアーに参加しました。すると、そのツアーのガイドさんは、断崖に向かうバスの中で、次のように言いました。

 「これから、バスで島を北上して、トビシマカンゾウを見に行きます。今年のトビシマカンゾウはとっても元気。先週満開になって、見ごろを迎えました。今も3割咲いています。近くではちょっと枯れた花が写真に写ってしまうから、写真は引きで撮って、楽しんできてくださいね」

 私は、このバスガイドさんは、すごく言葉を選んでいると感動しました。なぜなら、もしこのバスガイドさんが、

 「今日のお客さんは本当に残念。先週満開を迎えちゃって、もう7割散っちゃってますから。もう3割しか咲いていないんですよ。また来年チャレンジしてください」

 なんて言っていたら、参加している人は皆、がっかりするからです。「トビシマカンゾウが3割咲いている」という事実は1つ。これをどう見て伝えるのか。「3割も咲いていてよかったな、お客さんに喜んでもらえるな」とプラスに思うのか、あるいは「今日のお客さんは本当にかわいそう。もう3割しか咲いてない」とマイナスに思うのか。それは、人生観の違いだといえます。そして、この人生観の違いが、会話や文章には自然と現れてしまうのです。

 私たちは、「文道」という社名を掲げています。この社名を考えてくださったのは、愛知県小牧市にある、福厳寺という名刹の大愚元勝住職です。文は文章の文。道は人生を表します。私と藤吉にとって、文章は人生そのものです。

 そして、私たち2人が日ごろ文章を書くときに大事にしている、大愚元勝住職に教えてもらった心構え、それが「愛語」の実践です。

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 愛語という言葉には、お母さんが赤ちゃんを慈しむように、大切に言葉を扱いましょうという思いが込められています。

 どんな言葉が人を勇気づけるのか。それを意識して、言葉を集めてみてください。自分が励まされた言葉、自分が元気づけられた言葉は、誰かに使ってあげるといいでしょう。自分はその言葉を言われてどう思ったのか。そんなふうに自分の心を見つけることが、自分を磨いていくことにつながると思います。

身のまわりの愛語を探すグループワークをする学生
身のまわりの愛語を探すグループワークをする学生
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 言葉を丁寧に扱うことを意識する。人を非難したり傷つけたりするために言葉を使うのではなくて、励ましたり、勇気づけたり、人を守ったりするために言葉を使う人が増えれば、世の中はもっと穏やかに、平和になっていくと信じています。

構成・文/宮本沙織(第1編集部)