企業や官公庁に幅広いITサービスを提供する日本IBM(以下、IBM)では、社員が「変わっていくスキル」と「変わらないスキル」を身に付けることを重視していると言います。同社IBMコンサルティング事業本部マネージャーで、新人研修の企画・運営も担当している新矢貴章さんに、新人や若手社員に薦めている本を聞きました。

「変わらないスキル」も身に付ける

 私は現在、IBMのハイブリッド・クラウド・サービス部門で、主にクラウドを用いたシステム構築のプロジェクトマネージャーを務めています。また、IBMには「アソシエイツ」という新入社員が最初の2年間所属する育成組織があり、そちらの研修の企画運営にも関わっています。

 IBMが研修で重視しているのは、「変わっていくスキル」と「変わらないスキル」。技術の進歩が著しいITのテクニカルなスキルなど「変わっていくスキル」に対しては、現場の社員を講師に迎え、常に最新のカリキュラムに更新しています。一方、「チームで仕事をする」「プロジェクトを円滑に進める」といったスキルは、どれだけテクノロジーが進化しても本質的には「変わらない」スキル。その両方を身に付け、「市場価値の高い人材になろう」と新入社員たちに説いています。

「IBMが研修で重視しているのは、『変わっていくスキル』と『変わらないスキル』」と話す新矢さん
「IBMが研修で重視しているのは、『変わっていくスキル』と『変わらないスキル』」と話す新矢さん
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 ちなみに、IBMではITスペシャリスト、コンサルタント、データサイエンティスト、デザイナーとさまざまな職種がありますが、ロジカルシンキングやプレゼンテーションなどのコアスキルについては、みんな等しく研修を受けます。例えば、ロジカルシンキングは「コンサルタントだけができればいい」のではなく、どの職種であっても身に付けてほしい。さまざまなチームメンバーでプロジェクトを進める際の共通言語となるからです。

マンネリを感じたときに読む本

 そうした新人研修を受け、さまざまなプロジェクトに関わり、何年か過ぎて仕事もずいぶんできるようになった。でも、ふと気づくと忙しいだけの毎日で、これでいいのだろうか…と悩む時期が誰しも訪れるのではないでしょうか。そんな仕事へのマンネリを感じたときに読んでほしいのが、『 仕事は楽しいかね? 』(デイル・ドーテン著/野津智子訳/きこ書房)です。

「仕事へのマンネリを感じたときに読んでほしい」という『仕事は楽しいかね?』
「仕事へのマンネリを感じたときに読んでほしい」という『仕事は楽しいかね?』
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 この本は、毎日忙しく仕事に追われるだけで将来に何の希望もない「私」が空港である老人と出会い、仕事で鬱積(うっせき)した思いをぶつけるところから話が始まります。実は、この老人は世の中の企業トップがアドバイスを欲しがる高名な実業家。思い悩む「私」に、老人は、「目標を立てるな」「試してみることに失敗はない」「明日は今日と違う自分になろう」とアドバイスをします。

 今の世の中は変化が激しく、その変化についていくことが仕事で活躍するための重要な要素となってきています。変化を楽しみ、どんどん新しいことにチャレンジするとき、「試してみることに失敗はない」「明日は今日と違う自分になろう」というメッセージは心強いですよね。若手から入社10年目ぐらいまでの中堅社員が、「今の自分はコンフォートゾーンに落ち着いているのではないか」と感じたときに、ぜひ読んでほしい1冊です。

「自分とは何者か」と悩んだときに

 また、仕事に忙殺されていると、「自分とは何者か」「本当は何がしたかったのか」と分からなくなるときもあるでしょう。

 そんなときには、マーケターでユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復させた森岡毅さんの『 苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」 』(ダイヤモンド社)もお薦めです。

USJを立て直した森岡毅さんが書いた『苦しかったときの話をしようか』
USJを立て直した森岡毅さんが書いた『苦しかったときの話をしようか』
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 この本は森岡さんが就職活動に悩むお嬢さんに向けて書いた本で、就活に関する話題も多いのですが、「自分の強みを知る」「どうセルフブランディングをしていくか」という部分は若手社員にも刺さる内容だと思います。なかなか自分で自分の強みはつかみにくいものですが、この本では「ブランド・エクイティ・ピラミッド」というフレームワークも紹介されていて、自分のキャリアの棚卸しができます。IBMでは、仕事で自らの強みをアピールすることも求められるのですが、そのときにも大いに役立つと感じました。

パッションを取り戻したいときに

 次は、「キャリアにおけるリーダーシップ」について書かれた1冊です。IBMでは、若手のうちからプロジェクトチームのリーダーを任される機会が多いのですが、慣れないうちは迷うことも多いと思います。そんなときに薦めたいのが、『 FREE,FLAT,FUN これからの僕たちに必要なマインド 』(伊藤羊一著/KADOKAWA)です。

 私も最近読んだのですが、誰かをリードするには、まず「Lead the self(自分を導く)」ことが必要であり、次に「Lead the people(他者を導く)」、さらには「Lead the society(社会を導く)」ことが大事であると分かり、かなり腹落ちしました。何よりもパッションあふれる伊藤羊一さんの文章を読んでいると、仕事に対するモチベーションが上がります。

 仕事で新しいチャレンジをしなくなっているとき、向かう方向が分からなくなっているとき──ぜひ、読者の皆さんもこの3冊を読んでみてください。

「パッションあふれる伊藤羊一さんの文章を読んでいると、仕事に対するモチベーションが上がります」と言う新矢さん
「パッションあふれる伊藤羊一さんの文章を読んでいると、仕事に対するモチベーションが上がります」と言う新矢さん
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取材・文/三浦香代子 撮影/品田裕美