コンサルティングや投資などの事業を展開するシグマクシス・グループ。事業を拡大し、新卒や経験者の社員採用を積極的に行うなかで、社員が能力を発揮し成長できる環境をどうつくり、個々人のキャリアをどのようにサポートしていくか。同社で採用や社員のトレーニングを担当している武藤壮平さんと若林裕子さんに、そのために参考となる本を聞きました。連載第2回。

必要な能力を見極め、足りなければ補う

武藤壮平さん 私がお薦めしたいのは、『 ピーターの法則 「階層社会学」が暴く会社に無能があふれる理由 』(ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル著/渡辺伸也訳/ダイヤモンド社)です。私自身も、かつて同僚から薦められて読んだ本です。

組織運営やトレーニングの企画・運営で参考になったという『ピーターの法則』
組織運営やトレーニングの企画・運営で参考になったという『ピーターの法則』
画像のクリックで拡大表示

 「階層社会学」とタイトルに付いていますが、組織づくりに焦点を当てた内容となっています。簡単に説明します。例えば、小学校にクラス担任の先生がいるとします。担任として子どもたちを指導し、やる気を引き出すことに長(た)け、人気もあった。やがて学年主任に昇任したところ、どうにも力を発揮できない。

 あんなに有能な先生だったのに、なぜか。それはマネジメントする対象が「子ども」から、「他のクラスの担任」に変わったからです。さらに教頭、校長と役職が上がると、マネジメントする対象が、学校内のすべての先生、PTAや教育委員会、地域の有力者といった人たちに変化します。ある役割で優秀な人が上の組織階層に昇任する仕組みだと、求められる能力の変化に対応できず、能力が発揮できない。その結果、無能な人がポストにとどまることになり、組織もだんだんと無能化していく、というわけです。

 他にも分かりやすい例を挙げると、営業マンのトップだったけれど管理職である営業部長になるとつまずく、プロ野球選手としては一流でも監督になると成果を出せない、というパターンもあります。

 この本は、プロジェクトチームの編成、組織運営や社員のトレーニングの企画・運営をする際に、大いに参考になりました。それぞれの仕事で必要とされる能力を見極め、その仕事を担う人に足りない能力があれば、トレーニングで埋めていくのです。また、各ポジションで求められる能力も明確に定義して、それに適した人を見極めるべきだと思います。

主体的にキャリアを切り開く

若林裕子さん 私がお薦めするのは『 プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術 』(田中研之輔著/日経BP)です。「プロティアン」とは思いのままに姿を変えるギリシャ神話の神・プロテウスのこと。そこから転じて、社会や職場の変化に応じて柔軟に働き方を変えていく、「変幻自在なキャリア」を意味します。

「変幻自在なキャリア」を解説する『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』
「変幻自在なキャリア」を解説する『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』
画像のクリックで拡大表示

 新卒・経験者採用社員に対する入社時トレーニングを担当する立場として、これから共に働く仲間には生き生き働いてほしい、と願っています。でもやはり、誰もが「入社して自分に何ができるのか」と悩むことがあります。

 私たちは変化の激しいVUCA(ブーカ=変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)時代を生きており、かつ人生100年時代でもあり70代まで働く必要があるといわれています。そんななか、生き生きと働き続けるには、年齢に関係なくスキルを磨き続け、できることを増やしながら、キャリアを自ら切り開いていくことが求められます。

 私自身、かつて勤めていたメーカーにて事業統合を経験し、状況が変わっても活躍できる力を身に付け、自分自身も変化しながら道を切り開いていかなくてはならないと感じました。

 この本では、環境の変化に惑わされず、70歳まで自分で柔軟にキャリアを構築していくための実践的な方法が紹介されているので参考になります。30~40代が読むべき本、とされていますが、もっと早くてもいい気がします。若手のうちから読み、自分の価値観・目的を意識しながらも変化に柔軟に対応し、より良いキャリアを築いていってほしいと思います。

「これから共に働く仲間には生き生きと働いてほしい」と言う若林さん
「これから共に働く仲間には生き生きと働いてほしい」と言う若林さん
画像のクリックで拡大表示

自らの価値観や目標を理解する

若林さん ただ、「柔軟なキャリア」を築くには、自分の強みや特性が分かっていないと難しい面があります。その参考となる本として、『 セルフ・アウェアネス 』(ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編/DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部訳/ダイヤモンド社)をお薦めします。

 キャリアを構築するにも、自分が何に興味を持ち、何が得意で、何が足りていないのかを知る必要があります。自己認識ができれば自分の価値観や目標をより深く理解できます。この本は「ハーバード・ビジネス・レビュー」の関連記事がまとめられた本で、理論的にもしっかりとしており、自己認識を深めるための方法がいくつか紹介されています。

 印象的だったのは、「自分の内面的自己認識(自分の価値観、能力、周囲への影響力などに対する理解)と外面的自己認識(他人が自分をどう見ているかということに対する理解)を同時に深めていかなければいけない」という部分。内面的自己認識を深めるためには内省し、外面的自己認識を深めるためには他者からフィードバックをもらうのが重要であると説明されています。

 新卒社員の入社時トレーニングでも、日々自分のできたこと、できなかったこと、どうありたいかということを振り返ったり、『 さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0 』(トム・ラス著/古屋博子訳/日本経済新聞出版)などの自己分析ツールを使い、自分の特性や強みについて理解を深めたり、内省をする時間を取ったりしています。

 さらには、周囲を巻き込み積極的にフィードバックをもらうことで自己認識を深め、主体的にキャリアを築いていってほしいと思います。

シグマクシス・ホールディングスの武藤さん(左)と若林さん
シグマクシス・ホールディングスの武藤さん(左)と若林さん
画像のクリックで拡大表示

取材・文/三浦香代子 写真/品田裕美

「変幻自在なキャリア」をつくる

刻々と変わる環境に応じて、自分の働き方も変幻自在に変わること。それが「プロティアン・キャリア」です。もしあなたが、変化に適応して変幻自在に変わるキャリアを構築できれば、きっとこの先の人生も生き生きと、第一線で“現役”を続けることができるでしょう。

田中研之輔(著)/日経BP/1650円(税込み)