内容紹介

会社の老化は止められない。しかし、遅らせることはできる。そして、系を新しくすることで「生まれ変わる」ことすらできる――。ベストセラー『具体と抽象』の著者である細谷功氏が、「具体」と「抽象」の思考の軸を発展させ、会社の成長と老化のメカニズムを説いた組織進化論。
具体とは個別バラバラの事象であり、抽象とはそれらを束ねる関係性・構造である。一つの抽象の下に、複数の具体がぶら下がる。この関係が幾重にも積み重なって、私たちの認識はピラミッドの形をとる。ピラミッドを下りる操作が具体化であり、上る操作が抽象化である。この具体と抽象の思考の軸に時間軸を加え、それをモデル化して会社の成長と老化のメカニズムを解き明かすのが本書である。
組織に所属するすべての人にとって自ら所属する組織がいま、成長と老化のどのフェーズにいるのか、そこで何をすればいいのか気付きを与えるとともに、不可逆過程の老化に抗う力を行使し、組織のアンチエイジングに取り組む際の理論的支柱となる一冊である。


<目次>

はじめに

第Ⅰ部 具体 現象―組織の老化を観察する

 第1章 会社組織という不可逆過程

  組織の老化チェックリスト
  一つずつ、来歴をたどる
  このリストの読み方
  これは日本だけの話か
  「うちの会社だけじゃないんだ」で終わらせない
  一つの思考実験:「逆」の項目を考えてみる
  後戻りできない「大企業病」「官僚主義」
  あるある事例:症状は連鎖する
  「成長」と「老化」は同じ
  のこぎり曲線:若返っても元の位置に戻らない
  なぜ歯は戻りきらないのか:不可逆性は人間心理に由来
  下りはタダ、上りは有料:具体化は自然に進む
  組織の老化は人間の老化と同じ不可逆過程

第Ⅱ部 抽象 原理―老いをモデル化する

 第2章 全体モデル―1枚の絵と3本柱

  第Ⅱ部の読み方
  自然に進む「具体化」、それに抗う「抽象化」
  抽象化は目的がセット:「上りは有料」の正
  座標軸と時間軸
  動的な全体像:複数ののこぎり曲線の集合体
  上端と下端:新しい系の出発点も上がっていく
  大包絡線は誰が持っているのか:器の入れ子
  1枚の絵から3本柱のコンセプトを読む
  組織エントロピーの定義は「3段」
  3層の地図:哲学→モデル→指標
  目次がモデルに従う
  モデルの全体:二つの側面、三つの心理、二つの打ち手
  これだけ頭に入れておけば先へ進める
  軸を時間方向へ延長する

 第3章 止められない―組織エントロピーとして読む
  Ⅰ定義:一組織エントロピーという量と三つの心
  Ⅱ見え方:観察者と三角形
  Ⅲ診断への橋:何を数えどう読むか

 第4章 遅らせる―組織ネゲントロピーを注ぐ
  シュレーディンガーの問い:生命はなぜ秩序を保てるのか
  孤立系と開放系:ただし書きが救いになる
  動的平衡:生命は先回りして自らを壊す
  組織ネゲントロピー:具体から抽象への「不自然な力
  2種類のネゲントロピー:傾きを寝かせると堆積を削る
  「整理する」とは:マクスウェルの悪魔の3段
  更新の源は二つ:外は他の系、内は考える従業員
  「遅らせる」という介入:既存の系の延命
  アンラーンはなぜ効かないのか

 第5章 生まれ変わる―系の世代交代
  最後の柱へ:延命の先にあるもの
  組織の宇宙は一つではない、ビッグバンは何度も起こる
  「生まれ変わる」という介入:系の世代交代
  生まれ変わりの必然性:ひずみが次の系を呼ぶ
  生まれ変わりはどこで起こっているか
  状態と更新力:二つの主役に二つの指標系
  多様性:次の頂点の候補をいくつ抱えているか
  系は国によって終わり方が違う

第Ⅲ部 具体 応用―原理から処方箋を導く

 第6章 診断―組織の症状を読み解く

  第1章の症状を読み解く
  具体(手段)が抽象(目的)を駆逐する
  縄張り意識・たこつぼ化:組織エントロピー増大と視野狭窄
  ルール・手続きの増殖:内部状態数の増大
  会議の増加:すり合わせで頂点を代替
  「整理したのにかえって面倒」:見通しのために枝を足す
  全体像の喪失・近視眼化:頂点から見る力の喪失
  「いまあるもの」が「いまないもの」を駆逐
  「ない」を「ある」にする仕事から「ある」を割る仕事へ
  岩から砂へ:担い手の側の「ない」から「ある」へ
  肩書だけが増える:顧客に向かない区別が増える
  製品が増えて違いが説明できない:顧客の関心は裾野
  証拠づくりが仕事に:関心の向きが数えられる形で現れる
  「危機感がない」:系内では組織エントロピー増大が平常
  性善説から性悪説へ:組織エントロピーによる統制で代替
  症状は3系統に分かれる
  多様性抑圧:生まれ変わりの源を自己攻撃する免疫反応
  系は入れ子:層をまたぐ組織エントロピー
  多階層下請け構造への適用
  [回収表]症状→診断→効く介入

 第7章 延命の処方―遅らせるを実装する
  処方箋の氾濫:どれが何に効くのか
  Ⅰ傾きを寝かせる:区別が生まれる頻度を下げる
  Ⅱ堆積を削る:歯を刻む
  Ⅲ効かない処方:見分け方と代表例
  延命の処方を身体の言葉で:運動・食事・代謝
  いつ遅らせ、新生するか:決めるのは状態ではなく更新力

 第8章 新生の処方―生まれ変わりを実装する
  系を生むことは経営の技術になるか
  世代交代と「社長の若返り」
  系を生む四つのスキーム:境界の設計という観点から
  なぜ新規事業は既存組織の中で潰れるのか
  M&A:系を買うということ
  新旧交代として見る:同じ環境変化への二つの異なる応答
  頂点の「下」と「外」:理想/独裁/烏合の衆/老化
  独裁の罠:多様性を殺して組織ベクトルを偽装する
  強い方向づけ≠独裁:削る対象が区別か多様性か
  生殖:個体は老いても系統は若さを保つ

 補論 長寿企業―長く続く企業から何を学ぶか
  規模と長寿:通説をデータで壊してから組み直す
  家族経営:目撃の連鎖を人為的に延長する
  独自製品とブランド:顧客から見た組織ベクトル
  長寿には二つの経路
  二つの留保

第Ⅳ部 拡張 新しい現象―AI

 第9章 AI時代、今後の展望

  AIは仕事から何を奪い何を残すか
  AIは発散と収束のどちらを安くするのか
  ネゲントロピーの源としてのAI
  コンサルティング業界という「先行事例」
  同じことは他の知識産業でも起こる
  AIエージェント時代に組織はどう変わるか:頂点と視野
  自分の業界に同じ問いを向ける

おわりに
付録