しつこい肩こり、繰り返される腰痛……。そんな全身の不調の原因が、実は「首」にあるかもしれません。長時間のデスクワークやスマートフォンの使いすぎで首に負担がかかり、それが肩こりや頭痛、腰痛、疲労感などの症状を引き起こしているのです。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが、「首の骨=頸椎(けいつい)」をケアすることで不調を一掃するメソッドを解説した『 すごい頸椎 首・肩・腰を一気によくする 』から一部を抜粋・再編集してお届けします。今回は、腰痛を改善し、予防するための「ドローイン」のやり方についてです。

腰痛の多くは原因のはっきりしない「非特異的腰痛」

 前回(参照:腰痛を慢性化させないコツ 高級な椅子より「ペットボトル」を活用)、デスクワークが長くて腰が痛くなりがちな人が、腰痛を悪化させないためにやるべきことについて解説しました。

 腰痛は、大きく2つに分けられます。1つは、筋肉や骨、軟骨、靱帯などの損傷によって痛みが出るもので、これを「特異的腰痛」といいます。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などによる腰痛が代表的で、この場合はまず医療機関での治療が最優先となります。

 もう1つは、明らかな損傷などの異常が認められず、原因のはっきりしない「非特異的腰痛」です。実は、腰痛というと85%はこの非特異的腰痛に分類されるという研究報告もあります。

 医師の診察を受けても原因が見つからない非特異的腰痛に悩んでいる人は、運動によって症状が改善される場合があります。

 レントゲンなどの画像診断でも、筋肉や靭帯、骨、軟骨などに異常がないのであれば、問題は精神的なストレスかもしれません。慢性的な腰痛が続くと脳が過敏に反応するようになり、筋肉のこりや張り程度でも「痛み」として認識してしまうのです。

 こうした状況を改善するためには運動が有効で、私もよく腰痛を抱えるクライアントのトレーニングを指導します。

 腰に痛みを抱える人にやってもらうのは、「ドローイン」です。ドローインとは、腹式呼吸を行いながらお腹を意図的に膨らませたり、へこませたりして、体幹部のインナーマッスルに刺激を入れるメソッドです。

基本的なドローインのやり方(『すごい頸椎』より。イラスト=内山弘隆)
基本的なドローインのやり方(『すごい頸椎』より。イラスト=内山弘隆)

 刺激を入れる筋肉の1つが、腹横筋です。腹横筋には呼吸と連動して収縮する性質があり、ドローインを行うときには、腰背部から腹部にかけてコルセットのようにお腹を引き締めてくれます。

 ドローインを続けることで、動きの悪くなっていた腹横筋や横隔膜が、その働きを取り戻していきます。その結果、腰椎をしっかり支えられるようになるのです。

寝る前のドローインで腰痛を翌日に持ち越さない

 ドローインによってインナーマッスルが腰椎を支えてくれるようになると、腰椎を構成する椎骨やその周りの靭帯、筋肉に対して過剰に負荷がかかるのを避けられるようになります。すると、それだけで腰の痛みが軽くなることがあります。慢性腰痛では、わずかな刺激に対しても脳が過敏に反応してしまうことがありますが、ドローインでインナーマッスルが使えるようになると、そのわずかな刺激から守ってくれるようになるのです。

 それに、ドローインは「呼吸」とセットに行うことも重要です。腹式呼吸を取り入れると、副交感神経が優位になり、精神的なストレスが軽減されやすくなるため、脳が過敏に反応して腰の痛みを感じるという状態が改善される可能性があるのです。

 「今日は一日中デスクワークで座りっぱなしだった」とか、「腰が重だるくてつらい」と感じるような日は、ぜひ寝る前にドローインを行ってみてください。私も、「この腰の痛みを翌日まで引きずりたくないな」と思うときほど、ドローインをやってから寝るようにしています。

 腰の状態がよくないときは、あお向けで寝ると腰が反って痛みを感じることがありますよね。膝を曲げると腰の反りが緩和されて少し楽になるのですが、こういうときこそドローインが有効です。ドローインで腰の痛みが取れると、脚を伸ばした状態でもあお向けで眠れるようになります。

 また、ドローインでは深い呼吸を繰り返すので、副交感神経が優位になり、睡眠の質も向上します。翌朝は頭も体も驚くほどスッキリした状態で目覚めます。

(写真=buritora/stock.adobe.com)
(写真=buritora/stock.adobe.com)

 腰が痛くても疲れているときは、寝る前にドローインを行うのはおっくうだと感じるかもしれません。その気持ちはよくわかります。私も面倒だなと思うものの、夜遅くでも、就寝前にドローインを行うようにしています。ベッドの上でドローインを3~4回繰り返すだけで、腰の痛みが和らぎ、そのまま寝落ちしてしまうこともあります。

 時間にすれば30秒から1分程度です。とにかく忙しくて時間がない、という方でも続けやすいですよ。

[日経ビジネス電子版 2026年10月6日付の記事を転載]

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中野ジェームズ修一(著)/日経BP/1870円(税込み)