その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は中道圭人さんの『 科学的根拠に基づく「引き出す」子育て 後伸びする10歳までの育て方 』です。
【はじめに】
「うちの子、将来ちゃんとやっていけるだろうか」
子どもを育てる親なら、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。勉強についていけるか、自分から進んで学ぼうとするか――。そんな不安を抱えながら、今日も子育てに向き合っているかもしれません。
「早くから漢字や計算の先取りをさせるべきなのではないか」「有名な幼稚園に入れれば学力が伸びるのではないか」「習い事をたくさんさせれば将来が開けるのではないか」。中には、こんな思いが芽生えた人もいるでしょう。
しかし現実は、そう単純ではありません。幼児期から先取り学習や習い事を積極的にさせていても、小学校に入って成績が伸び悩む子どもや、頭では分かっていても行動できない子どもはいます。では、同じことをしても差が生まれる要因はどこにあるのでしょうか。
生まれつきの能力に差を求めるかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。例えば、他者を思いやり、協力できる「社会情動的スキル」は、学力と関連することが近年の研究で明らかになっています。また、「宿題を先に終わらせてから遊ぶ」「難しい問題でも途中で投げ出さない」といった行動を支えている、研究者が「実行機能」と呼ぶ力も重要といえます。難しい言葉ですが、言い換えると衝動をコントロールし、計画を立て、目標達成に向けて行動を調整する力です。
これらはいずれも幼少期から育むことができる能力であり、学びの土台となるものです。つまり、この土台が育っていなければ、生まれつきの能力が高くても長い学びの道のりで壁にぶつかってしまう可能性が出てきます。
私はこれまで、幼児期から学童期にかけての子どもの発達を研究してきました。そんな私が本書で提案するのは、この社会情動的スキルと実行機能を、家庭の日常の中で育むという方法です。特別な教材の準備も、高額な習い事もしないことを前提に書いています。例を挙げると、絵本の読み聞かせ、日々の会話、おうち遊びなど。そうした積み重ねが、子どもの健やかな発達を支え、小学校入学後の「後伸び」につながることを、私も含めた国内外の研究を基に説明しました。
読むうちに「なぜ今まで知らなかったのか」と思われるかもしれませんが、それは無理もありません。社会情動的スキルや実行機能の重要性が科学的に注目されるようになったのは、ここ数十年のことです。日本の一般の親御さんにはまだほとんど届いていない情報でもあります。知らなかったことはあなたのせいではありません。今この本を手に取ったことが、大きな一歩になるかもしれないのです。
本書は特に、子どもの「学力」の土台をしっかりつくってあげたいと思っている方、習い事や受験準備の前にもっと大切なことがある気がしている方、そして子どもが自分で考えて行動できるようになってほしいと願っている方など、すべての親御さんに向けて書きました。
子どもの将来の学力や社会性は、必ずしも生まれ持った才能だけで決まるのではありません。幼児期から学童期の日々のかかわりの中に、その鍵は隠されています。本書を読み終えたとき、あなたの目に映る「子どもとの毎日」が、これまでとは少し違って見えるのではないでしょうか。
では、一緒に始めましょう。
【目次】







