フレームワーク思考とは、一つ上の視点から眺めることで新たな発想を生み出すメタ思考の一つ。自分の行動をフレームワークにマッピングすることで、自分の思考の癖を把握し、発言や行動を改めることができる。本稿では、会話に焦点を当て、フレームワークの実践例を解説する。新入社員からマネジャーまで、すべてのビジネスパーソンに役立つ内容を 『ビジネス思考力を鍛える クイズで特訓50問』(日経文庫) から一部を抜粋してお届けする。

自分の会話の特徴をチェック!

【問題】最近、皆さんがした友人や知人(相手は1人または複数)との会話をいくつか思い出して下さい。それぞれの会話の発言数や時間とその内容から以下の質問に答えてみて下さい。

【メンバー間の会話のバランスについて】
・あなたが発言していた回数、時間と、他の人が発言していた回数、時間はどちらが多かったですか?

【あなたの会話の内容について】
・過去の話、現在の話、未来(将来)の話のバランスはどうでしたか?
・ポジティブな話とネガティブな話とどちらでもない話のバランスはどうでしたか?

このような分析から、皆さんは自分自身の会話にどのような特徴があると思うでしょうか?
写真:Shutterstock
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「自分の話、相手の話の比率」を図示

【解説】この問題のポイントは、自分自身の会話の特徴を、誰でも経験する知人や友人との会話をもとに、どのように把握し、今後の人間関係や自らの成長にどうつなげていくかということです。

 また、自分自身の会話の特徴を把握するためのツールとしてフレームワークをどのように役立てられるのか、実はフレームワークの使い方が、この問題のような状況以外でも仕事全般に汎用的に使えることを示して、「なぜ」フレームワークで考える必要があるのかもお伝えしたいと思います。

 それでは先の質問への回答について、フレームワークを用いて表現してみましょう。まずは会話における「自分の話」と「相手の話」の比率です。当然会話では、それ以外の話題(芸能人の話とかYouTubeの話とか)もあるでしょうから、ここでは「箱」を3つ用意しています。

(出所)『ビジネス思考力を鍛える クイズで特訓50問』 (日経文庫)
(出所)『ビジネス思考力を鍛える クイズで特訓50問』 (日経文庫)
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 こうしてみると、「自分の話ばかりしてしまっている」左側のような場合もあれば、「うまく相手の話を聞いたり引き出したりすることができた」右側のような場合もあるでしょう。

 往々にして左図のように会話を独占する(自己中心的な)人は(よほど話が面白くない限り)あまり好かれないのに対して、右図のように相手の話をよく聞いている人は単に聞き上手と思われるばかりでなく、なぜか(ほとんど話しておらず、相づちを打っているだけなのに)「会話上手」とまで言われたりします。

 このような図で示されれば自分が会話を独占していることが明らかに可視化されるわけですが、「自分の話ばかりしてしまう人」たちの思考回路は自己中心的であるがゆえに、下図のように「自分が世界の中心である」という形になっていて、「自己中」であることに気づけないでいるのです。

(出所)『ビジネス思考力を鍛える クイズで特訓50問』 (日経文庫)
(出所)『ビジネス思考力を鍛える クイズで特訓50問』 (日経文庫)
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 このように、自分を客観視して自らの発言や行動、あるいは思考の偏りに気づくためにフレームワークは存在します。

「過去の成功談」が多くないか

 自分の行動をフレームワークにマッピングすることで自分の思考の癖を把握し、その後の行動につなげていく。これをさらに先の会話の例の他の質問で実践してみましょう。今度は自分の発言に絞って、その内容を分析してみることで自分の思考の癖を把握してみます。

 例えばポジティブな話とネガティブな話のどちらが多いのか、過去の話と現在の話と未来の話のどれが多いのか、などを下図のような形で整理してみれば、自分の話の意図せぬ偏りに気づけるでしょう。

(出所)『ビジネス思考力を鍛える クイズで特訓50問』 (日経文庫)
(出所)『ビジネス思考力を鍛える クイズで特訓50問』 (日経文庫)
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 例えば先の例の「自分の話ばかりになっていないか」という自省のように、ネガティブな話(愚痴や不満)ばかりになっていないか、「過去の成功談」(≒自慢)が多くなっていないか、といった客観的なチェックができるようになります。

 さらにこのようなフレームワークは、プレゼンテーションやスピーチ、あるいは就活の面接等の場においてどのように会話を設計するかにも用いることができるでしょう。単に思いつきで会話をつなげていくのは、よほど話術のうまい人でもない限り難しいと言えます。

 そこで事前にある程度の作戦=設計図を描いておけば、全体のバランスをうまく取るとともに、終わってから「あっ、○○の話をするのを忘れた!」といったミスを最小限に防ぐこともできるでしょう。

 例えば自己紹介を考える上でも思いつくままに項目を列挙するのに加えて、「過去 → 現在 → 未来」という流れを意識すれば、バランスが取れた自分像を改めて考えることができるでしょう。もちろんそこで「やはり現在(将来)のことを中心に話そう」という判断をするのはまったく問題ありません。ただし、思いつくままに列挙した結果、あまりに過去に偏ってしまったといったような意図しない思考の盲点を探すのには、間違いなくフレームワークを利用することが貢献するはずです。

 フレームワークとは、このような目的のために活用すべきものです。ぜひ様々な仕事の場面で活用してみて下さい。

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