産業・組織心理学の研究者である池田浩さんの新刊『 消耗しないためのマルチタスク考 産業・組織心理学から解き明かす「忙しさ」の正体と解決策 』について、日本におけるウェルビーイング、幸福学研究の第一人者である前野隆司さんは「本書を読んで驚いた。目から鱗である」と言います。自身も研究者、教育者として活躍する一方、講演や執筆にもマルチに取り組む前野さんが、本書の魅力を語ります。

 私はマルチタスクが好きである。いろいろなことを同時に行う。生成AI時代になって、それがさらに加速した。本を何冊も書きながら、授業の準備をしながら、講演の準備もしながら、学部長会議に出ている。だから、マルチタスクには効率面でも精神面でも課題があるとは思っていなかった。

 本書を読んで驚いた。目から鱗である。

 池田先生は心理学にも産業・経営学にも詳しい。だから、心理学をひもときながらマルチタスクの課題を次々と明確に説明していく。

 そして読み終えてわかった。私は仕事が好きだから大丈夫なのだと。ワークエンゲイジメントである。

 仕事に主体的に没入できるなら、マルチタスクにも没入できる。しかし、ワーカホリックの状態、すなわち「やらねばならない」の状態で働いていると、マルチタスクは苦痛がマルチになる。消耗する。

 確かに。これまで私は「マルチタスクはいいよ。一つに行き詰まったら他をやればいいんだから。いい状態がずっと続くからおすすめだよ」と学生や友人に言ってきたが、間違いだった。そう言ってもいい人と言ってはいけない人がいるのだった。

 なぜ? 本書に書いてあります。忙しさの正体と解決策。池田先生らしく、丁寧にわかりやすく書いてあります。必読です!