5人のお子さんを育てるお笑い芸人、タレントのエハラマサヒロさん。長女・美羽さん、次女・風羽さんの中学受験を経験するなかで大切にしてきたのは、「絶対に合格させる」ことではなく、挑戦そのものを子どもの成長につなげることでした。性格の違う姉妹への関わり方、夫婦の役割分担、そして「親の受験にしない」という思い。エハラ家の中学受験から、家族で受験に向き合うヒントをうかがいました。日経ムック『中学受験を考えたらまず読む本 2027年版』の記事から一部を抜粋してお届けします。

親子で挑んだ中学受験

 僕自身、小学校受験を経験し、高校まで内部進学でした。長女の美羽には、「中学受験をして中高一貫校に進めば、高校受験をしなくてすむぶん、先々少し余裕ができるよ」と、1つの選択肢として伝えていました。

 また親としても、受験は良い経験になると思いました。中学受験という同じハードルを乗り越えた友だちに囲まれることで、学校生活でもたくさんの刺激を受けられるでしょうし、のびのびと安心して過ごせる環境にもつながると考えていました。

 決して「良い学校に行って、将来良い会社に入ってほしい」という思いから受験を望んでいるわけではありませんでした。結果だけではなく、自分で立てた目標に向かって一生懸命取り組むこと自体が、かけがえのない経験になると思ったんです。合格できれば、もちろんうれしいけれど、失敗しても頑張った経験になると思い、美羽に提案しました。

 ちょうど中学受験を考えていたときに、テレビ番組から密着のオファーをいただきました。美羽には、密着がプレッシャーになるなら断ってもいいし、受験そのものをやめてもいいと伝え、本人としっかり話し合いました。そのうえで、美羽なら密着をいいプレッシャーに変えられると考え、挑戦することに。結果、第2志望の学校に合格することができました。

エハラマサヒロ
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エハラマサヒロ
お笑い芸人、タレント
1982年、大阪府生まれ。ものまねや歌、ダンスを生かした幅広い活動に加え、ミュージカルなど舞台にも多数出演。5児の父で、YouTube「エハラ家チャンネル」では家族との日常も発信している。(写真:竹田宗司)

受験するかは本人次第 子どもの意思を尊重する

 第1志望に落ちた悔しさと合格した喜びを経験した美羽の成長を見て、次女の風羽にも中学受験を経験してほしいとは思っていました。ただ、楽天的な美羽に対して、風羽は慎重でマイペース。そのため僕から受験を勧めることはせず、本人の意思を尊重しました。周囲から「風羽ちゃんは中学受験するの?」と聞かれても、本人のプレッシャーにならないように答えませんでした。

 そんななか、風羽から「お姉ちゃんと同じ中学校に通いたい」と言われたときは、素直にうれしかったですね。

 僕は、本人が望んで挑戦するのであれば、中学受験をして損をすることはないと思っています。たとえ不合格でも、そのまま公立中学校に進めますし、挑戦した経験や頑張った時間は残ります。だから、風羽の人生にとってもきっとプラスになると思ったんです。

 志望校は美羽が通っている学校1校に絞り、YouTubeでの密着はしませんでした。合格発表は撮影しましたが、「落ちたとしても大したことじゃない。一生懸命勉強してきたことがえらいんだから」と伝えながら見守りました。そして4回目の受験で見事合格。あれほど感情を爆発させて喜ぶ風羽を見たのは初めてでしたね。

YouTubeで公開した合格発表の場面。「動画は何百回も見ていますが、毎回目頭が熱くなります」と振り返ります(写真:エハラさん提供)
YouTubeで公開した合格発表の場面。「動画は何百回も見ていますが、毎回目頭が熱くなります」と振り返ります(写真:エハラさん提供)
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 三女の音羽は「友だちと一緒にいたいから」と、中学受験はせず公立中学校に進学する予定です。中学受験でも習い事でも、その子の性格を見て選択肢は提案しますが、こちらから無理強いすることはありません。興味のあることから得意なものを伸ばしてほしいと思っているので、子どもの判断を尊重しています。

姉妹でも支え方は別 それぞれに合う勉強法を

 美羽と風羽の中学受験では、勉強を教えるのは僕、環境とメンタルを整えるのは妻と役割分担をしていました。いちばん恐れていたのは、家族がイライラしてしまうことでした。中学受験に取り組む家庭では、保護者は「高い塾代を払っているのに…」、子どもは「勉強したくないのに…」と、お互いにストレスを抱えがちです。プレッシャーをかけすぎて、合格しても子どもが親を恨んでしまっては意味がありません。あと、仕事を理由に普段は関わらないのに、成績だけを見て口だけ出す親にもなりたくなかったですね。

 中学受験を通して親子の信頼関係が崩れてしまっては、本末転倒です。そこまでして中学受験をする必要はないと思っています。何よりも親子の信頼関係を大切にして挑むことが大事です。

 勉強を教える際は、いかに「楽しい!」に変換できるかを考えながら、子どもの性格によってアプローチを変えていました。

 長女の美羽は計算問題のケアレスミスが多かったので、普段の遊びのなかでクイズを出して、反復練習をしました。急に「4×9!」と出題し、すぐに正解できたら「よっしゃー!」、口ごもったら「はい、遅い~」なんて茶化して楽しんでいました。

 一方、次女の風羽は焦るとミスが増えて、間違えたらかなりヘコんでしまうタイプ。「それ正解したんだ!」「すごいやん!」と、とにかくできたことをほめ、やさしい問題から正解を積み重ねて自信につながるように心がけました。また、根詰めて勉強するとパンクしてしまうと思い、夏休みには家族で沖縄旅行に行きました。周囲からは「大丈夫なの?」と心配されましたが、僕としては息抜きするのも大切だし、息抜きする時間まで削って勉強させて、親子関係がぎくしゃくしてしまうのは避けたかったんです。

美羽さんや風羽さんが勉強するときは、下の子たちを公園へ連れ出すことも。家族みんなで、受験生が勉強に集中できる環境をつくっていたそう(写真:エハラさん提供)
美羽さんや風羽さんが勉強するときは、下の子たちを公園へ連れ出すことも。家族みんなで、受験生が勉強に集中できる環境をつくっていたそう(写真:エハラさん提供)
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 塾選びも、その子の性格に合うかどうかが大切だと思います。1対1でじっくり教えてもらうほうが向いている子もいれば、友だちと競争することでやる気が出る子もいます。

 風羽は美羽のテレビ密着のときに紹介してもらった個別指導塾に通い、僕も塾の先生に学習の進み具合や苦手なところを聞きながら、「こういうミスが多いけれど、どう教えたらいいか」と自宅学習について相談しましたね。

志望校選びは、子どものやりたいことを軸に

 長女の美羽の志望校選びは、「将来したいこと」と「学びたいこと」を軸に考えました。英語を学びたいという気持ちがあったので、留学や交換留学など、海外とのつながりが深い学校を中心に候補を探しました。妻は情報収集が得意なので、インターネットや本で調べながら、いくつかの学校に絞ってくれました。

 僕たち夫婦が意識したのは、最初から「この学校に行きなさい」と決めるのではなく、子どもに選択肢を見せることです。子どもは学校についてすべてを知っているわけではないので、「この学校はここが良いけれど、少し遠いから通学が大変になるよ」など、それぞれの良い点と気になる点を整理して伝えました。そのうえで、学校説明会や文化祭にも足を運び、在校生の雰囲気や校風も見ながら、親子で話し合いました。

 美羽にとっては第1志望から第3志望まで、どこも同じくらい魅力的でした。その中で、「せっかく受験するなら、いちばん高い目標に挑戦してみよう」と、偏差値が最も高い学校を第1志望にしました。親が答えを決めるのではなく、必要な情報を渡したうえで、最後は本人も納得して選べるようにすることを大切にしました。

(出所)日経ムック『中学受験を考えたらまず読む本 2027年版』
(出所)日経ムック『中学受験を考えたらまず読む本 2027年版』
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合格したらラッキー! プレッシャーをかけすぎないで

 現在、美羽と風羽は、めちゃくちゃ楽しそうに学校生活を過ごしています。学校の友だちとも仲が良く、毎日が充実しているようです。美羽は高校生になり、「高校受験がなくて、超楽だった!」「推し活できるの最高!」と言っています(笑)。小学生のときに頑張っておいて良かったなと思います。

 中学受験は、親としても珍しい経験でした。自分の頑張りがそのまま反映されるわけではないので、会社の上司になった気分というか。子どものメンタルを支えながら、この子がより良くなるにはどうすればいいかを考えて、親としてもひと回り成長できたと思います。家族みんなで受験を支え、合格したときに一緒に喜べたことも大きかったですね。

 親が「合格してほしい」と思うあまり、無理やり塾に行かせたり、勉強させたりするのは、僕は違うと思います。合格しても、子どもが「やっと解放された」と感じているなら、それは本当の喜びではありません。「親のための受験」ではなく、子ども自身が本気で喜べる「子どものための受験」にする。その道筋をつくるのが親の役割だと思います。

 親が中学受験で人生が決まるというようなプレッシャーをかけると、落ちたときに子どもは大きなダメージを受け、「やらなきゃ良かった受験」になってしまいます。「合格したらゼロ、失敗したらマイナス」ではなく、「落ちても大丈夫、合格したらラッキー!」くらいの気持ちで、ゼロかプラスの挑戦にしてほしいですね。

家族で過ごす時間を大切にしているエハラ家。受験も家族全員で支え合って乗り越えました(写真:エハラさん提供)
家族で過ごす時間を大切にしているエハラ家。受験も家族全員で支え合って乗り越えました(写真:エハラさん提供)
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 僕は、子どもが何でも話せる親でいたいと思っています。友だちには悩みを話せても親には話せないのは、最初から「ダメ」と否定されると思っているから。まずは子どもの考えや行動を受け止め、そのうえでダメなことは伝える。そういうやりとりを積み重ねれば、困ったときにも話してくれると思います。

 そして何より大事なのは、夫婦が仲良くいることですね。僕が子どもに注意するときは、妻に「今から注意するから、あとでフォローしてあげて」と伝え、子どもの逃げ道をつくるようにしています。夫婦でコミュニケーションをしっかりとり、チームワークを発揮して受験を乗り越えることが大切だと思います。

取材・文/山岡理帆

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