内容紹介
「1票の格差」違憲訴訟で少数意見を書き続けた元最高裁判事によるニッポン民主主義批判。アメリカで黒人初のオバマ大統領が誕生したのは、建国以来、人種、性別、住所などによる投票価値の不平等を、訴訟と裁判所による判決の積み重ねによって是正してきたからである。三権分立がしっかり機能している一流の民主主義国の証明だ。
一方、日本はといえば、そもそも住所によって票の平等が大きく損なわれている状態が長く続いている。違憲訴訟は、すべて憲法判断を独占する最高裁によって退けられてきた。そこに、著者は最高裁の「不作為」の罪を見る。
たとえば2007年の参議院選挙では、選挙区選挙の最低得票当選者は高知選挙区の16万6000票。他の選挙区でそれより多く得票しながら落選した人は44人。その得票合計は1372万票に上る。2005年衆院選挙では、小選挙区選挙の最小得票での当選者は福井1区の5万1000票。それより多くの得票を得ながら他の選挙区から出て落選した人は294人。その得票総数は2560万票。実際に投票にいく有権者の約2割の投票は「カウントされない仕組み」になっている、と著者は訴える。
世界の民主主義国で例を見ない世襲政治家の多さは、すべて「1票の格差」を放置している「不作為」から生まれている。10年間、最高裁判事として多数説の合憲論に抗して、少数派として違憲判断を書き続けた著者の執念の記録。