高卒バイトから24歳で社員に登用され、𠮷野家ホールディングス(HD)のトップに上り詰めた河村泰貴氏。子会社のうどんチェーンはなまる時代を含め、18年間社長を務め、その間、自らの生き方や仕事術、人生哲学をつづった560通のメッセージを従業員に送り続けた。無気力で何の取りえもない若者が、どのようにして変貌を遂げたのか。そのエッセンスをまとめた新刊『自分以外のすべてがわが師』から、抜粋してお届けする。その第7回。
「昇格したくない」という人が増えているそうです。
実はわたしも、店長時代はそう思っていました。エリアマネジャーになることにほとんど関心はありませんでした。それよりも、「〇〇店の店長をやりたい!」という想いや、「自分の目指す理想の店舗を実現したい」という想いのほうが強かったです。そして何よりも、自分は店長として未熟だという自覚もありました。

1カ月の学びが4年半を上回る
実際、エリアマネジャーへの昇格の内示を受けたときも、反射的に「嫌です」と言ってしまいました。結局、渋々ながら社命に従いましたが、実際にエリアマネジャーになってみると、毎日が新しく学べることの連続で、必死に食らいついているうち、あっという間に時間が過ぎていきました。
そのとき、思い出したのは、新入社員の頃のことです。
わたしはアルバイト経験を経て入社したので、店舗の業務はマネジメントも含めてほぼすべて「知っていた」のですが、それでもやはり、毎日が新しい学びの連続で、「店長になってからの1カ月で学んだことは、それまでのアルバイト時代の4年半を上回る」と痛感したのです。
エリアマネジャーを任せていただいたときも同じです。エリアマネジャーの1カ月は店長の3~4年分に匹敵するくらいの新鮮な刺激と学びがあり、自分自身が日々成長していることを実感できました。自分の成長を自覚、実感できているとき、仕事はどんどん面白くなります。もちろん始めのうちはなかなか成果を出せませんが、成長を実感できている喜びで、毎日が本当に充実していました。
エリアマネジャーとなって1カ月もすると、「なりたくない」と言っていた自分が、いかに狭い視野でモノを見ていたかを思い知らされました。
上位職を経験後、現在の仕事に戻るのも悪くない
「店長としてもっと極めたい」「今の仕事でもっと成果を出したい」そう思って頑張ることはとても素晴らしいことです。しかし、あえて言うと、上位職の仕事を一度でも経験してから、もう一度、現在の仕事を経験するのも悪くありません。仮に、それが降格人事の結果だったとしても、以前とは全く違うレベルに成長している自分に気づき、かつては難しいと思っていた業務がより高いレベルでこなせている自分に、かつてとは違った喜びや面白さを感じられるかもしれません。
「店長としてもまだ自信がないのに、エリアマネジャーなんてとても……」
そう思っている人も大丈夫です。
確かに、店長として未熟な点があるかもしれませんが、エリアマネジャーを経験することで、「飛び級」のような成長曲線を描けます。何の心配もいりません。
「この店が好きなんです」
「店長という仕事が好きなんです」
そう思ってもらえるのも、経営者としてはとてもうれしいです。でも、あなたが店長で居続けることが、後輩たちの成長を止めてしまう原因になってしまうかもしれませんよ。
一度やってみて、やっぱりだめだったでもいいから
今も昔も、「管理職になりたくない」という方は一定程度います。一般職の8割近くが「管理職になりたくない」と答えた調査結果がある一方で、実際に管理職になった人の7割近くが「管理職を続けたい」と回答した調査もあります。その理由として挙げられているのは、「自分の成長につながった」「チームマネジメントが面白い」「大きな仕事にやりがいを感じる」などです。
かつてのわたしがそうだったように、今は「店長がいいです!」で構いません。でも、もしあなたの目の前に、エリアマネジャーに挑戦するチャンス、上位職に挑戦するチャンス、今とは違う部門の仕事に挑戦するチャンスが現れたら、「積極的に飛び込め!」とまでは言いませんが、せめて断ることはしないでほしいですね。一度やってみて、「やっぱりだめだった」でも構わないので。
河村泰貴 著/日経BP/1980円(税込み)
