内容紹介
刊行にあたって日本の最近の世情を眺めると司馬遼太郎の「坂の上の雲」の主人公がひたすらに少年のような希望をもって国の近代化に取り組む姿、楽天家たちはそのような時代人としての体質で、前のみを見つめながら歩く姿が見える。のぼっていく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて坂をのぼっていくであろう。まさにこの小さき国がニューエネルギーの開花期をむかえようとしている。
2011年3月11日14時46分に、マグニチュード9.0の日本において観測史上最大の東北地方太平洋沖地震によって大規模な津波が発生した。津波によって福島第一原子力発電所事故が発生し、これに伴う放射性物質漏れが起き、原子力発電所の再稼働問題および電力危機などが発生している。この事故は日本だけでなく世界をも凍りつかせている。
一方、環境関連では2009年9月に世界90カ国以上の指導者が出席した国連気候変動首脳会合で当時の鳩山由紀夫首相が温室効果ガス削減の中期目標について、主要国の参加による「意欲的な目標の合意」を前提に「1990年比で2020年までに25%削減を目指す」と表明した。
わが国は2030年、総人口1億1,000万人を切り、労働人口は現在の6,500万人から5,400万人まで減少すると予想されている。他国を大幅に上回る早い速度で高齢化し、急速に人口が減少しており、確実に国力は減少している。
日本は原子力発電所事故、環境問題および総人口減少による国力低下等に直面しているが、これら難題の解決は十分に可能であると思われる。明治維新により一挙に近代化を果たし、さらには第二次世界大戦で荒廃した国土を短期間で先進国に築き上げた実績がある。
この国難を乗り越える推進力の要はエネルギーの変革である。そのためにはまず、既存のエネルギーを認識し、効率化を図る必要があり、次にニューエネルギーの供給量、時期、経済性、利便性を正確に見極めて、今後のエネルギーを構築する必要がある。
本書はこれらの観点からニューエネルギーについてまとめた。日本の最年長の現役発電技師で平成17年資源エネルギー庁長官賞を高原一郎省エネルギー・新エネルギー部長(現資源エネルギー長官)から受賞した実父幾島貞一の経験と知恵をもらいながら共同にて執筆した。
2012年7月
幾島賢治
講評
昨年の原発事故以降,再生可能エネルギーを中心とした新エネルギーへの期待が熱く論じられている。しかし,国民生活を維持する上で不可欠なエネルギーに最低限求められる資質は何か。エネルギーの専門家はその実態をわかりやすく説明している。
石油連盟 総務部長 浜林郁郎
推薦します。
幼少の頃から自然に囲まれて育ち,さらに十数年,オーストラリアで過ごしたナチュラルな生活経験があったからこそ,自然に対しての深い愛と,環境の大切さを身を持って体感できたのでは無いかと思います。私がつくる音楽には,自然の囁きがサウンド,メッセージとして,大きく影響しています。表現方法は異なりますが,幾島様は環境の素晴らしさ,環境の大切さを絶えず発信・発表しており,昨年の原発事故以来,日本のエネルギー問題を遭えて本書を執筆されております。幾島様の力強いメッセージと私の歌で,日本の自然の素晴らしさを発信できれば最高です。
シンガーソングライター 斉藤花
応援歌
日本のエネルギー自給率は2008年で18%にまで低下したが,2011年大震災後の原発全期停止で以降は更に下がるだろう。その対策には,技術立国日本の原点に立ち克服していくしかないが,技術とエネルギーの両方に詳しい幾島先生の本書に,今後の日本のあるべきエネルギーの姿を学ばせて頂きたい。
垣見油化株式会社 代表取締役(専務) 垣見裕司
日本実業出版「よくわかる石油業界」著者
推薦文
福島原発事故以来ニューエネルギーが注目されているが,その範囲は非常に広く,これを技術と市場の両面から取り上げることは非常に困難である。本書がこれをなし遂げているのは,著者らの多彩な経歴・経験および人脈によるものであろう。
JX日鉱日石リサーチ株式会社 エネルギー技術調査部 マネージャー 財部明郎
推薦文
平成23年3月の福島沖大震災後,日本のエネルギー政策として掲げられてきた従来のベストミックスの構造が大きく変わろうとしています。本書は今後の日本のエネルギーの指針として,既存エネルギーである石油,石炭,天然ガスおよび原子力を見直し,再生可能エネルギーを大胆に組合わせた新ベストミックスを提案したものです。将来のエネルギーを考えるうえでも一読をお薦めします。
東京工業大学 前副学長 名誉教授 大倉一郎
著者一覧
幾島賢治 一般財団法人 国際石油交流センター参事;愛媛大学大学院 客員教授
幾島貞一 環境省環境モニター、愛媛県政モニター、新居浜市モニター
幾島嘉浩 IHテクノロジー株式会社 代表取締役社長
幾島將貴 IHテクノロジー株式会社 代表取締役専務