内容紹介
2016年1月から運用開始となるマイナンバー(社会保障と税の共通番号)制度は、日本社会にとてつもなく大きなインパクトを与える。しかし、そのことを国民の大半は理解していない。本書は「なぜマイナンバーを導入するのか」「どんな影響を持つのか」「新しいビジネスは生まれるのか」を第一人者が解説した。民主党政権下で当時の菅直人首相が「消費税増税、給付付き税額控除、マイナンバー」の3点セットを実行しようと考えたとき、マイナンバーが政策課題として急浮上した。その後、政権を奪い返した第二次安倍政権下の2013年、自民、公明、民主などの賛成で法案が成立した。当面は税と社会保障と災害の3分野に利用が限られるが、徐々に利用範囲は拡大していくと見られる。
先進国では唯一番号制度がなかった我が国でグリーン・カード(小額貯蓄優遇制度)など激しく対立した過去の番号制度導入と異なり、マイナンバーが実現した背景には、迫りくる超高齢化に伴う社会保障費の膨張という難問があった。
負担が重くなる側は「誰が本当に困っていて、給付を受けるべきなのか」を明確にしてほしい。そのためには、所得や資産の把握は不可欠。なんらかの番号制度が必要であることは与野党問わず認めるところだった。
住民登録された外国人を含む1億2000万人以上に配布される12ケタの番号がマイナンバーだ。2015年10月から通知カード、申請者にはICカードの個人番号カードが無料で配布される。この番号制度導入によって日本は大きく変貌する。
その一例。市区町村役場や税務署などで従来は長蛇の列が当たり前だった窓口業務が消える。住民が手続き・届出をネットでできるようになるからだ。その結果、官と民の間をつないで来た行政書士や社会保険労務士といった仕事は大きく変容する。企業の総務部や経理部も大幅に縮小されるはずだ。
他方、個人が特定できるメールを使った電子私書箱やマイナ・ポータルといった個人ポータルサイトが実現すると、民間で新しいビジネスが生まれるだろう。
法案担当者は「2020年の東京オリンピックが終わった頃に、世界最先端のIT大国になっている」と豪語する。そうした大きなトレンドを概観したのが本書。