内容紹介
「僕がここを出てからまたいくつか重大事件が起こっていたようだ。たとえば老中がオールコックに対し、日本人は今やもう外国人居留地を防護できないので、外国人はまさかの襲撃に対し自分で防護できるよう覚悟しておくようにと伝えたそうだ。」(1864年5月19日)「奉行の菊池伊予守が浅野伊賀守を連れて、一二時にゲベール銃見本を見に来訪した。そこでまずヨーロッパ政府の場合よくあるように、幕府への貸付金四〇〇万から五〇〇万ドルを用意するというオファーを出してみた。菊池はこの件を老中に報告し勘定奉行と話してみるという。」
(1866年10月11日)
カスパー・ブレンワルドは、横浜を拠点にして幕末から生糸貿易などで活躍した「シイベル・ブレンワルド商会」の共同創業者。同社の系譜は、合併などを経て、現在のスイスの大手商社DKSHに継承されている。DKSHは関東大震災や第二次世界大戦の期間も日本国内に留まり、150年間日本で活動してきた最古の外資系企業だ。
本書は、幕末に来日したブレンワルドの残した16年間に及ぶ膨大な日記を横浜開港資料館の研究会が解読・分析した成果をまとめたもの。
構成は第1部がエピソードで構成し、第2部は日記の抄訳。通商条約を締結をめざしたスイス使節団からの幕府への贈り物、生麦事件など外国人襲撃が相次ぐ中での幕府との条約交渉、横浜居留地の人間模様、外資系商社の活動ぶり、慶応の大火、富士山登山の様子など知られざる史実をまとめた。日本最古の外資系商社の記録として産業史、経済史的に貴重な記録となっている。
横浜開港資料館とDKSH所蔵の貴重な写真・資料が口絵16ページ分に収録されている。