内容紹介
漆の木の栽培から作品製作まで一貫した独自の工房スタイルを確立、国内はもとより海外でも高い評価を受ける異色の漆工芸家、本間幸夫氏のはじめての作品・論考集。本間氏の代名詞ともいえる木皮を使った作品群のほか、木地を使った作品、幻の漆ともいわれる「金漆」を使った作品などを紹介し、自らそれら作品への思い、技法などについても解説する。さらに自身の作家としての体験を踏まえ、漆、そして工芸への思い、漆芸家としてのあるべき姿勢、これからの漆芸のあり方などについても論考している。【うつろい UTSUROI 】
日本人には、この「うつろい」を西洋よりも大切にする感覚があるように思います。全てのものは時間とともにゆっくりと変化するという概念です。この感覚は、自然素材を使った木工、陶器、漆器、染色、織物、絵画、建築などで顕著です。「うつろい」は私の仕事にとって重要で、基本的な考えです。木皮や漆塗りの肌を持つ作品が仕上がったときから、ゆっくりと変化を続け、その折々で豊かな表情を見せてくれることを願っています。
第1章:ものを造り出す仕事の魅力
・木皮作品
・木地からの作品
・作品への思いと制作について
・金漆
・幻の塗料《 金漆 》
・作品・実際の使われ方
第2章:漆という不思議な樹液
・漆液の産地と掻き方
第3章:漆工芸は終焉するのか
・日本産漆の現状
第4章:漆のこれからに向けて
天地和同万物生
我々が作るものの素材は、
全てお日様と大地や水など
天と地の恵みで生育する物の
恩恵によって得られる
手心応得百工就
技術だけが優れていても、
心豊かでなければ
人の心を打つ作品は
生まれない
ーー「きゅう飾録」