内容紹介

1970年、パリデビュー。世界に衝撃を与えた日本人デザイナー初の自伝。華麗に過激に、夢を追い続けた男の栄光と挫折が赤裸々に。

おすすめポイント

世界で成功を収めた日本人デザイナーとして、ファッションに興味がない人でも名前と洋服が思い浮かぶのは以下の人たちだろう。高田賢三、三宅一生、川久保玲、山本耀司……。中でも70年代からパリのプレタポルテでひとり、いちはやく頭角を現し、存在感を発揮したのが著者である。
時代の寵児となった著者の華麗で、時にスキャンダラスな半生は、エネルギッシュで読む者のページをくる手を止めさせない、波瀾万丈という言葉がぴったりの物語になっている。

姫路で生まれ、宝塚歌劇と中原淳一に夢中になった少年時代。文化服装学院が「男子の洋裁学校生」を初募集した時に入学、同級生にはニコルの松田光弘、ピンクハウスの金子功がいた。初めてパリで店を出したのはカウンターカルチャーが隆盛し、モードの重心が高級注文服から既製服にシフトした時代。文化服装学院の恩師がパリで机を並べていたために、雲の上の存在だったイブ・サンローラン、カール・ラガーフェルドらと生涯の親交を結ぶ――出遭いがどれひとつ欠けても「KENZO」はこの世に生まれなかった。ローリングストーンズのミック・ジャガー、アンディ・ウォーホルなども登場し、時代の風俗史としても十分に楽しめる内容になっている。

長年連れ添った人生の伴侶との同性愛を通してLGBTカルチャーについてもふれられ、往時のディスコやナイトクラブをはじめとする選ばれた人たちの社交場は、著者と著者を取り巻く人たちの仕事にはとりわけ重要な意味を持つ。「KENZO」ブランド買収劇に至る悲劇にも、著者を取り巻く人たちの愛憎関係が色濃く影を落としており、クリエイターの回想録・自伝という意味では年齢・性別を超えて普遍性を持っていると言えるだろう。

文化服装学院の同級生にして永遠の好敵手・盟友のコシノ・ジュンコ氏との対談、山本耀司氏が著者について語るインタビューなども収録する。