内容紹介

●ファミリービジネスは21世紀経営学の最もホットな研究対象
 経営学の中で経営戦略や経営組織といった分野の研究者がファミリービジネスに関心を向けるようになったのは、比較的最近のこと。それまでは、現代企業ではその株式は分散所有され、支配は専門経営者の手に移る、いわゆる所有と経営の分離が進むという考えが支配的だったため、創業家が株式の大半を掌握し、経営も担っているファミリービジネスは遅れた経営形態で、所有と経営が分離した経営形態にとってかわられるであろうと認識されていました。
 だが他方、ファミリーが所有し経営をするあるいは専門経営者がオーナーであるファミリーの意向を強く意識するので経営者が企業価値最大化を考えて行動する、存続を第一に考えるので、長期志向、継続性といった特徴があります。これらの特徴は、経営成果にプラスの影響を及ぼすと考えられます。実際、今日でも、ファミリー企業は世界中にあまねく存在し、経済活動において大きな比率を占めています。西欧諸国でも、ファミリー企業は主流。アジアや南米においては、ファミリー企業の比率は北米以上です。
●オリジナルの実証分析に基づいて原理を解明
 本書は、ファミリー企業の行動・戦略の特徴を実証的に明らかにするもの。長寿、不況に強い、保守的、継続性といった特徴を整合的に説明する原理とそれがどのようなファミリー企業にとってどのような優位性、課題をもたらすかを明らかにします。ファミリー企業の戦略原理が、一般の企業(日本的経営)に対してどのようなインプリケーションを持つかも議論します。本書は、この20年間に蓄積されてきた先行研究とロピア、シャトレーゼ、ハウス食品、英國屋などの実証分析に基づいてファミリービジネスの原理を明らかにします。
 従来のファミリービジネス研究は、経営史的なエピソード中心のものが多く、強さと弱さを論理的に解明するものは少なかった。本書は理論と実証のバランスがとれた内容となります。