内容紹介
AIはプロとアマチュアの格差を広げる。AI時代のマーケターの条件がここにある。
【経営学者 楠木建】
様々なAIツールを使い倒し、自社のマーケティング業務の改革を進める中で、筆者が導き出した、「AI時代に人間が生き残るために必要なたった1つのスキル」。それは「属人力」です。
今まで、どのマーケティング本、ビジネス本を開いても、属人力は"悪"とされてきました。属人的な仕事はノウハウ、判断やアイデアの出し方が特定の人に依存している状態であり、その担当者がいなくなると業務に支障を来すリスクがある、というのがその理由でした。しかし、この常識はAI時代に完全に逆転します。
標準化できる仕事は人間には勝てないスピードでAIが瞬時にこなせるため、標準化された仕事を人間が行っていては価値が出せないからです。「AI時代に人間に残された最強のスキルは属人力である」。これがAIを使い倒した末に、筆者がたどり着いた結論です。
●AIで生まれた「質の低いクリエイティブの量産」という問題
AI(人工知能)によって、デジタルを中心にマーケティングの世界が、圧倒的なスピードで拡張できるようになりました。しかし問題は「深く考えずに出稿する」というデジタルマーケティングのお手軽さまで、そのまま受け継いでしまっていることにあります。
以前は人間だけの力では100個の広告クリエイティブしかつくれなかったところ、AIを使えば1万個の広告クリエイティブを瞬時につくることも可能です。半面、低品質な広告クリエイティブを大量生成しているだけとも言えるのが現状です。これはむしろ非生産的ですらあります。
加えて、どのAIも過去のデータから最大公約数の「それらしいもの」をつくるため、皆がAIを使えば使うほど、生成される広告クリエイティブは似通ったものになっていきます。いわゆるコモディティー化という問題です。これは「AIの平均化の罠」として知られている現象で、広告配信の対象者から見れば、すべてが同じ広告に見えてしまいます。
差異がないために、自社の広告は埋没してしまい、消費者の興味・関心をかき立てることは困難となります。AIによって標準化されている領域は、もはや武器にも価値にもなりません。競争力を生み出すために人間がすべきは「意味の発明」です。
●差別化は「意味の発明」から生まれる
電気の発明により絶滅の危機にひんした「ろうそく」。ですが、現代のろうそくはアロマやインテリアとして用途が広がっています。
その昔、暗かった社会において、ろうそくは周囲を明るく照らすためのものとして使われてきました。ですが、LEDなどによって明る過ぎる社会になった現在は、逆に暗いムードを楽しむものとして重宝されるようになっています。つまり、「明るく照らすもの」から「暗いムードを楽しむもの」へと、ろうそくが持つ意味は大きく変わりました。これこそが「意味の発明」です。
自社が提供する商品・サービスに新しい役割、新しい独自性、新しい便益と言い換えることができます。その役割、独自性、便益にインパクトがあるほど競合に対してアドバンテージとなり、生活者から選ばれる可能性が高くなります。つまり、人々の脳内に新しいカテゴリーとして定着し、自社を優位かつ非連続な成長につなげることができます。
そして、また「意味の発明」はAIにはできない、人間にこそ宿るスキルです。本書では意味を発明するための3ステップを解説。共同購入アプリから「野菜がもらえるアプリ」へと意味を大きく変えたことで成功した、スマートフォン向けアプリ「カウシェ」の事例も、カウシェの代表取締役の門奈剣平氏との対談で深掘りします。
●ファミリーマート CMO 足立光氏とAI時代の生存戦略を徹底議論
「使っている人間の限界がAIの限界になる」
P&Gジャパン、日本マクドナルド、ファミリーマートで様々なヒット企画を生み出してきた足立光氏はこう指摘します。AIで大量のアウトプットを生み出せる時代では、人間側がAIに負けないくらいの知見や切り口を持っていないと、AIの出力を適切に評価できません。
では、その知見や切り口はどのように身を付ければいいのでしょうか。AI時代のマーケター生存戦略を徹底議論。足立氏がAIには生み出せないアイデアのヒントを見つけるために日々心掛けていること、判断能力を養うために取り組んでいることなどを明かします。
・マーケティング業務はすべてAIに代替されるのか
・自社専用「最強マーケAI」のつくり方
・筆者が贈る「AI活用の10カ条」
・AI×マーケティングで実現する最速のPDCA
・人間にしかできない「意味の発明」の実践法
・AIには不可能な「ラストワンマイル」の領域
・売れるマーケター必須のスキル「営業の4P」とは
●ポーラ代表取締役社長・小林氏も推薦!
マーケティングは、長い間「広告」や「集客」の話に閉じられてきていたように感じます。顧客にとっての価値を創出し、結果として利益を生み出すプロセス全般。本来、マーケティングとは事業経営そのものと言って過言はなかったはずです。
一方、誰もがAIを使い、誰もが一定の正解にたどり着けるようになった瞬間、正解そのものは競争優位ではなくなります。
標準化できるものはAIへ。その先に残る、問い、意思決定、熱狂、違和感、そして属人性をどう競争力に変えるべきか。
本書は、単なるAI時代のマーケティング論に留まらずマーケティングと経営の境界線を引き直す一冊です。そして読み終えた時、その境界線自体が必要なのかを考えさせられます。それは筆者の田部正樹氏がこれまで発信してきた考えと終始一貫し、且つ凝縮されています。
【ポーラ 代表取締役社長 小林 琢磨】
【目次】
はじめに
第1章 マーケティングの誤解――企業が求めるのは「作品」ではなく「利益」
第2章 確率の管理――「博打」を「科学」に変える
第3章 AI時代は「速い」が正しい――最速で「正解」へ
第4章 AI時代のマーケティング新常識――「認知」「想起」の再評価
第5章 「顧客に選ばれる」を指標化――指名検索でAIを超える
第6章 AIには不可能な領域――「意味の発明」を実行せよ
特別対談 「意味の発明」最新事例:野菜がもらえる買い物アプリ「カウシェ」の場合
第7章 「属人的」を愛そう――効率の向こう側にある熱狂
第8章 マーケティングに「営業力」を取り戻せ――AIの"外れ値"こそ価値
第9章 組織と実装――「AIを設計できる人」になれ
第10章 未来への提言――変わる勇気を持て
特別対談 足立光 × 田部正樹――AI時代のマーケター生存戦略
おわりに
特別特典 筆者直伝「価値創造フレームワーク」
