『 投資家みたいに生きろ[増補版] 』(日経ビジネス人文庫)を上梓した藤野英人さん。社長を務めるレオス・キャピタルワークスの「ひふみ投信」シリーズは運用資産残高1兆円を突破した。投資家として36年のキャリアを持つ藤野さんが読み解く2026年の世界経済・金融。トランプ再選をかけた米中間選挙と民主主義の「反撃」、全資産高・楽観相場で富裕層が米国債を買い増す理由、そしてこの状況下で私たちが資産を増やすための長期分散投資の新ルールとは。
未来は読めない。それでも仕掛ける
2026年が明けました。
僕は1990年から投資の仕事を始め、今年で36年目になります。
これまでの年月を振り返ってみると、未来を予測できたことは一度もなかった。さらに「簡単な一年」も一度もなかったというのが正直なところです。
結果を見て、「すごく厳しい一年だった」「わりと順調だった」とはいえるけれども、常に未来は予測できなくて、手探りの状態。
簡単にもうかるアイデアが転がっているわけでもありません。
しかし、2025年に上梓した『投資家みたいに生きろ[増補版]』(日経ビジネス人文庫)の生き方を実践するならば、不確実な未来を所与のものとして、その未来に投資をする。未来に対して挑戦する。困難に直面しつつ、勝ったり負けたりしながら前進していくことが大事です。
ただ、あまりにも漠然としていてはどこに向かって進んで行けばいいのかわかりませんよね。そこで、2026年がどんな年になるかを考えたいと思います。
民主主義がマーケットに反撃
まず、世界的に一番大きなイベントといえば、米国の中間選挙です。ドナルド・トランプ大統領の政権運営が信任されるかどうかが大きなカギになります。
現在は共和党が上院、下院ともに多数派となっており、それがトランプ政権の圧倒的な基盤となっています。今回の中間選挙の結果しだいで、トランプ政権がますます強大化するのか、失速するのか……。
今は全世界的にインフレが続き、米国の株式市場も非常に好調です。
富の格差が開き、値札を見ないで何でも買えるような人がいる。マクロ経済的に見れば、プラスです。
しかし、一方でインフレによって物価が上がっているのに給料は上がらず、苦しい生活を強いられている人が増えています。そうした不満の影響が2025年後半から出始めました。
象徴的なニュースはニューヨーク市長にイスラム教徒初のゾーラン・マムダニ氏が当選したことでしょう。同時期に行われたバージニア州、ニュージャージー州の知事選では民主党の候補が当選しました。
選挙、民主主義というのはお金の総量ではなく、人の頭数の総量です。マクロ経済的にはうまくいっていても、民主主義としては不幸な人が増えているから、多くの人がマムダニ氏や民主党に投票した。
民主主義という面から見ると、トランプ政権はうまくいっていないのです。
2026年は資本主義に対して民主主義が反撃する一年になるのではないかと思います。
トランプが次に切る“禁断の一手”
トランプ自身もこうした状況に焦りを感じています。
中間選挙で大敗する可能性があるけれども、状況を覆すのが難しい。しかし、今の関税政策をやめるのは自分の政策を否定することになります。
金利を下げれば不動産価格や株は上がりますが、庶民を苦しめる。
「トランプ政策」を押し進めれば進めるほど、自分の首を絞めるというジレンマに陥っています。
こうした状況を打破するため、独裁者がよく使う手段は戦争を仕掛けることです。
ただ、トランプ自身はビジネスパーソンですから、損害を被る大国相手の戦争が好きではない。そのため2026年早々に、近隣のベネズエラに軍事攻撃を実施したわけです。今後はさらにメキシコ、南米諸国との間で軍事的・外交的な緊張を高めるような行動に出るかもしれません。
資本主義的には満点、投資家的には注意
こうした世界情勢の中、2026年の経済はどうなるのか。
各専門家の意見を聞くと、「資本主義的な観点からはまったく死角がない」一年となります。なぜなら、お金の流れが潤沢で、株が下がる要素がない。米国株も日本株も強気の予想が多いですね。
とはいえ、2026年に限らず、投資の基本は長期分散という基本動作を続けること。まずは投資をする。1分野に重きを置きすぎず、一部は現金にするなど流動性を持たせるのが大事です。
世界の富裕層が米国債を買い増す理由
今は株式、金などの全資産がほぼ上がっています。
これまでは株式が値上がりするときには金の値段が下がるなど、資産によって値動きは異なり、それらを組み合わせることで資産全体の価格のブレを抑える「分散効果」が効くといわれていました。
しかし今のようにさまざまな資産の価格が連動している状況では、分散効果は効きにくい。
この中で唯一、相対的に下がっているのが通貨です。ドルや円の価値が下がっているから金の価格が上がっているという側面があります。
分散効果から考えると現金も「価値が上下する資産」と捉える必要があるでしょう。
世界の富裕層には、先を読み、米国債への投資を増やしている人もいます。大きな暴落があると、株式などのリスクの高い資産が売られ、より安全と見なされる米国債のような資産が買われやすくなります。
また、そのような場面で「安全な通貨」へと資金が集まれば、為替が動き、これまで下がり続けてきた通貨の価値が上がるかもしれません。
多くの専門家が「楽観的な一年である」と予測する2026年ですが、民主主義によってマーケットに何らかの変化が起きるかもしれない。この重要な仮説は頭の片隅に入れておいたほうがいいでしょう。
また、何よりも「投資」という面では、自分にも投資をする。心と体の状態をよくする。相場が上がろうと下がろうと、一喜一憂しない。バランスのいい日々を送ることに勝るものはありません。
取材・文/三浦香代子 構成/第1編集部 酒井圭子 写真/鈴木愛子
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