投資家みたいに生きろ[増補版] 』(日経ビジネス人文庫)を上梓した藤野英人さん。社長を務めるレオス・キャピタルワークスの「ひふみ投信」シリーズは運用資産残高1兆円を突破した。その仕事術にも定評のある藤野さんが読み解く、2026年に向けて私たちがすべき「自己投資」とは。先読みで体調管理できる意外なアイテム、「歩くブラック企業」だった過去、自分を過大評価も過小評価もしない目標設定術──人生が変わる「自分を数値化」の実践法を語る。

買って人生が変わったもの

 「投資」イコールお金、と考える人も多いでしょうが、「自己投資」も大事な投資。2026年はぜひ「自己投資」にも積極的に向き合ってほしいと思います。

 僕が直近で一番投資してよかったもの──それは「スマートリング」です。
 装着すると心拍数や夜間の血中酸素、呼吸数などをモニタリングしてくれ、体調管理ができる指輪形のアイテムです。

 「それならスマートウオッチでもいいのでは?」と思うかもしれませんが、多くのスマートウオッチは「就寝前に外して充電」という使い方が一般的です。
 そのため、体調管理にもっとも重要な睡眠中のデータが取れないのです。
 スマートリングはつけたまま寝られるので、僕はじゃまにならない小指につけています。

「このスマートリングで健康を数値化しています」
「このスマートリングで健康を数値化しています」
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投資家は体調管理も先読みする

 睡眠は健康のための最重要課題なのに、意外と数値化するのが難しい。
 でも、僕が使っているスマートリングの場合、最低・最高脈拍数、体温の変化、眠りの深さなどを計測し、数値化してくれます。

 そして、計測結果で数値のよくない状態が続くと、体調を崩すこともわかりました。
 そのため「ここのところ数値が低いから、睡眠時間を増やそう」「ちょっと仕事のペースを落とそう」と先回りできるようになりました。

 「投資家みたいに生きる」ためにまず必要なのは心と体の状態をどう保つか。アクティブに生き、活動し続けるためには体調管理が欠かせません。

 僕は20年前から人間ドックは年に2回行き、脳と心臓の検査や大腸と胃の内視鏡検査は年1回受けています。さらに1回の血液検査で腫瘍マーカーや肝機能の数値をチェックしています。

 これだけやっても病気になるときはなると思いますが、比較的初期の段階で重大な病気を発見し、対処できるはずです。

僕は「歩くブラック企業」だった

 僕が昔からこれほど健康に投資していたかというと、そんなことはありません。

 投資顧問会社に勤めていた30代の頃は「歩くブラック企業」で、「月曜日と木曜日は寝ない日」と決めていました。そうすると夜10時から朝6時までの8時間×2日間で2営業日分の時間を捻出できたんです。

 朝6時にサウナに行き、1時間半だけ仮眠して会社に行く、という生活を3年間ぐらい続けていました。

 僕の仕事時間が長いわけですから、サポートをしてくれているアシスタントにも当然、負荷がかかります。みんな夜10時ごろになると、ぐったりしている。
 それを見て、当時の僕は「どうして、自分の部下になる人は、みんな体が弱いんだろう」「どうして、あと一歩のところを頑張れないのか」と不思議でした。

ぜんそくになって気づいた限界

 ところが、33歳で自分がぜんそくになってしまった。そのとき初めて、「人にはキャパシティーがある」と気づきました。

 みんな体が弱いのではなく、自分がたまたま丈夫なだけだったんだ、と。

 一線を超えれば壊れてしまうから、それぞれのキャパシティーに合わせて人生を楽しまなくてはいけない、という価値観に変わりました。

 自分の体も壊れてしまうとわかり、それから人間ドックに行くようになりました。
 今もぜんそくは治っておらず、治療薬を飲むために月1回の血液検査を受けています。ぜんそくのおかげで病院に行くようになったのだから、一病息災ですね。

自分を数値化できる人が強い

 投資家としては自分のことも数値化して捉えるのは重要な考え方です。

 数値化して捉えられれば自分を見くびることもないし、過大評価することもありませんから。
 多くの人は自分のことを過小評価するか、過大評価するかのどちらか。でも、これはどちらも前進をさまたげてしまいます。

 生きる上で大事なのは数値化して、目標を立てること。
 実は「頑張る」という言葉にはまったく意味がありません。

 たとえば、「今年は健康で楽しく過ごせるように頑張る」「資産運用を頑張る」といった目標で結果が出ることは、まずありません。

 なぜかと言うと「頑張る」だけでは「行動」につながらないから。
 何を頑張るのか、その日の行動に落とし込んでいかないと、知らず知らずのうちに成功するなんてことは起きません。

目標は「半年決算」で見直す

 「健康で楽しく過ごせるように頑張る」には何かスポーツを始める。テニスであれば「ラリーが10回続けられるようになる」、ゴルフなら「スコア100を切ってコースを回りたい」と目標を立てる。

 そうするとスコア100を切るには「自分はパターが安定していない」と課題が見えてきます。
 ほかにも、たとえば「健康に過ごすよう頑張る」のであれば、そのために必要な行動として「良い睡眠」「良い人間関係」「良い食事」などと分解できます。

 僕はこうした目標を新年に書き、毎月達成度を確認し、半年に1度は達成度がどのぐらいかもチェックしています。

 ダイエットでも成功率が高いのは、食事制限や運動ではなく、毎日体重計にのることだといわれます。

 計測はおっくうだし、現実を見たくないかもしれない。でも、目標達成のために数値化と計測を取り入れてみてください。

「『頑張る』という言葉だけでは行動につながりません」
「『頑張る』という言葉だけでは行動につながりません」
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取材・文/三浦香代子 構成/第1編集部 酒井圭子 写真/鈴木愛子

日経ビジネス人文庫『 投資家みたいに生きろ[増補版]

ベストセラー、大幅加筆で待望の文庫化

「インフレ×AI時代」の不安を打ち破る人生戦略の決定版。「目に見えない資産」を増やす、「可処分時間」を見える化する、「浪費か投資か」を自問する、旅に出て「体験」する、属性をズラして人づき合いする……著名投資家が実践する思考と習慣を大公開!

藤野英人著/日本経済新聞出版/990円(税込み)