その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」をご紹介します。今日は小林弘幸さんの『 心地よい自分が見つかる101の質問 (日経ビジネス人文庫) 』です。
【はじめに】
自分に問いかけ、意識することで自律神経は驚くほど整う
本書のテーマは「質問」。
こちらから何かを一方的にお伝えするのではなく、まずあなたに問いかけ、考えたり、想像したり、思いを巡らしたりしてもらいながら、その後で私なりの考えや知見をお伝えしていく。そんなキャッチボールをする本です。
このような本を書くにあたって、私は考えたことがあります。
近年、よく「正解のない時代」になったといわれます。たしかに従来の常識や生き方、働き方、人との関わり、情報の扱い方などさまざまな面が多様化し、確固たる正解はなくなりました。
いつでもどこでもインターネットにアクセスできて、必要な情報は簡単に手に入るけれど、それが正解かどうかわからない。私たちはそんな時代を生きています。
正解のない時代。じつにもっともな表現かもしれません。
しかし、私は医師としてこの表現に「100%しっくりきている」とはいえず、どこかに小さな違和感を覚えていました。
私は仕事柄、人の最期に立ち会うことが少なくありません。2024年の年末には実の父を亡くし、家族の最期を看取る経験もしました。
そうしたさまざまな瞬間に私が抱くのは「正解がない」というより「すべてが正解だったんだ」という思い。
どんな人の一生にも「いいこと」「悪いこと」があり、もしかしたら後悔や無念さのなかで最期を迎えた人もいるかもしれません。
でも、それが常識的な意味で「正しかったか」「間違っていたのか」ということは、それほど重要ではありません。
そうやって生きてきたこと自体すべてが正解だった。医師としての長い経験のなかで、私はそう強く感じるようになりました。
日々朝を迎え、目が覚める。
その生活は決して当たり前ではありませんし、そんなふうに生きていること自体、それだけで正解なのだと私は考えています。
さて、本書には101の質問があります。
そこに正解はありません。というより、あなたが想像し、考えることすべてが正解です。
もちろん本書には私が医師として、自律神経の研究者として、お伝えしたいことがたくさん書かれていますが、じつは一番伝えたいのは「あなたが普段なんとなく忘れてしまっていること」を思い出し、意識してほしいということです。たとえば、
今、あなたが「手放すもの」は何ですか?
今いるコミュニティで我慢を続けてはいませんか?
感謝を形にしていますか?
「会いたい人」に会っていますか?
こんな問いかけをされたら、あなたは何を感じ、何を考えるでしょうか。きっと何か大切なことを思い出すのではないでしょうか。
「あなたにとって大切なもの」を思い出し、あらためて「大切にしよう」と意識するための本。それが本書です。
自分が大切にすべきものを認識し、ていねいに生きる。
それは自律神経を整えることに大きな効果をもたらしますし、あなたの生活を豊かにしてくれます。
心身の健康も、自律神経を整えコンディションよく生きるにも、まず大事なのは意識です。ぜひ本書をきっかけにして、あなたの生活や考え方、心のなかにある思いを振り返り、意識してみてください。
本書は一般的な本と同じように最初から順番に読み進めても構いませんし、その日の気分で好きなページをめくり、ランダムに読んでも構いません。
それは「日めくりカレンダー」のようでもあり、「おみくじ」のようなものとも表現できるかもしれません。
あるいは、目次を見ながら、その日の気分にフィットする質問を選び、その日なりのテーマを持つのもいいでしょう。1日のはじまりにひとつ読むのもいいですし、夜寝る前に読むのもおすすめです。
いずれにしても「あなたの生活に溶け込む本」であってほしいと心から願っています。本書の質問に触れ、考えたり、想像したりするだけでゆったりとした気分になり、自律神経は整ってきます。
そして私もみなさんと同じように、折に触れてこれらの質問に向き合い「自分が大切にしたいもの」を思い出し、意識したいと思っています。
あなたが本当に大切にしたいものは何ですか。
さあ、旅のはじまりです。
2025年9月
小林弘幸
【目次】








