「この働き方をずっと続けられるだろうか?」、ふとそう感じたことはありませんか? 『70%で働く』の著者の佐野創太さんは、介護離職とこれまで1500人以上のキャリア相談を担当した経験から、「仕事と生活、どっちをとるか!?」の2択ではなく、どちらも大切にしながら心地よく働く選択肢を見いだしました。今回は、70%で働く意義について、本書から一部抜粋し、お届けします。

あの名企業は、普段から工場を7割稼働にしている

(写真:paru/stock.adobe.com)
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 突然ですが、コロナ禍で品薄になったもの、覚えていますか?
 マスク、消毒液、トイレットペーパー……あっという間に店頭から消え、ネットでは高額転売が問題になりました。

 そんな状況で、とくに注目された企業があります。

 アイリスオーヤマです。

 アイリスオーヤマは、東北地方を拠点に置き、家電や収納用品、寝具、園芸、ペット用品などを幅広く手がける生活用品メーカーで、従業員は6000人を超えます。

 2020年春、誰もが不安と混乱の中にいたとき、同社は他社に先駆けてマスクの増産を決断。すぐに全国のドラッグストアやホームセンターにマスクを届け、「マスクがこんなに早く手に入るなんて」と驚きの声が上がりました。

 なぜそんなことが可能だったのか。
 その理由は、普段から工場を「7割稼働」に抑えていたからです。

 なぜ7割に抑えているのでしょうか。
 フル稼働したほうが売り上げも最大化できそうです。

 アイリスオーヤマは言います。

市場は泡風呂のように、あちらで勃興したり、そしてしばらくすると市場が突然消えたりする。泡が見えてから、一から準備しても遅いのです。─『いかなる時代環境でも利益を生み出す仕組み』p118

 つまり、常に3割の余力を残すことで、非常事態やチャンスにすぐ対応できる状態をつくっていたのです。
 「必要なときに全力を出せるように準備しておく」、戦略的な70%稼働です。

「常に100%」=「常に非常事態」

(写真:おでんじん/stock.adobe.com)
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 ここで思い出したのは、キャリア相談者のBさんのやりとりでした。

 「転職したい会社があったんです。でも、そのとき忙しすぎて書類すら出せなくて。
 ピンチに陥ったとき、“もうこれ以上どうにもならん”ってなって、動けなかった」

 どちらも悩みの根っこは同じです。

 「常に100%」だと、チャンスもピンチもつかめません。
 能力や意欲があっても、余力がないと、次の一歩を踏み出せなくなるからです。
 ただそれだけで、見送ってしまうチャンス、こじらせてしまうピンチが、私たちには山ほどあります。

 毎日全力を出しきって、ギリギリで働いていると、常に「非常事態」状態です。
 非常事態が常態化すると、チャンスやピンチに気づけず、動けなくなることも。
 だからこそ、働き方も「戦略的に70%」にすることが大切です。

 「常に100%」ではなく、いつチャンスやピンチが来ても対応できる余力を残す。
 これが、未来のピンチやチャンスへの準備であり、長く続けられる働き方です。

 全力で走るのは、短期的に頑張る働き方。すぐに疲れて、長くは続きません。
 一方、戦略的70%は、長期的にチャンスをつかみ、安心して続けられる働き方。

 「今日の全力」をここぞという時に使えるようにするために、戦略的に「余力を残す」という考え方です。

(写真:Nii Koo Nyan/stock.adobe.com)
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本書が提案する「70%で働く」とは、手抜きではありません。いざというときのために、100%にギアを上げる余力は残して、でも普段は、無理なく、自分のリズムで働けるような、持続可能な働き方を再設計することです。「頑張ること」が当たり前になっている人こそ、「70%で働く」をキーワードに、「働かされる」が「働いている」に変わるような、楽しい働き方を見つけにいきましょう。

佐野創太著/日経BP/1870円(税込み)