あなたは、よくも悪くも思いつきで行動する猪突(ちょとつ)猛進型か、常に大きな全体像を意識して冷静かつ客観的な視点を失わない客観重視型か。たった1問のクイズで、あなたの思考パターンが分かる。新入社員からマネジャーまで、すべてのビジネスパーソンに役立つ内容を 『ビジネス思考力を鍛える クイズで特訓50問』(日経文庫) から一部を抜粋してお届けする。

他人にアドバイスする際に、重要なこと

【問題】他人にアドバイスをするときに、最も重要だと思われる項目を3つ挙げて下さい。その3つをどのように示せば説得力が上がりますか。
冷静かつ客観的に仕事ができる人は、どのようなアドバイスをするのか? (写真:shutterstock)
冷静かつ客観的に仕事ができる人は、どのようなアドバイスをするのか? (写真:shutterstock)
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アイデアの「出し方」で分かること

 この問題で取り上げたいのは、実際に出された項目の良しあしではなく、その「アイデアの出し方」と「見せ方(解答の仕方)」です。問題に答える際に、どのように考えたか、以下の2つのチェック項目に答えてみて下さい。

①(A)最初に頭に浮かんだ3つを答えた
 (B)4つ以上、できれば10程度の候補を挙げてから絞り込むというプロセスを踏んだ

②(A)単なる箇条書き的にリストアップした
 (B)何らかの「大分類」(例えば5W1H、「心技体」等)を併用して考えた

 このAかBかの思考回路は、普段の生活や仕事の場でも常に繰り返される各人の思考の癖と言えます。

 Aは直感&主観型とでも言えるでしょうか。よくも悪くも思いつきで行動する「猪突猛進型」です。突破力があるというメリットと、視野が狭く他人の視点や外部環境お構いなしというデメリットを併せ持つタイプです。

 対するBは論理&客観重視型です。常に大きな全体像を意識して冷静かつ客観的な視点を失わないタイプです(逆にデメリットは突破力が弱いことですが、本問の趣旨からそこはひとまず置いておきます)。

 Bの視点(フレームワークを用いて考えるような視点)の強化がこの記事の目的ですので、ここではAと比べたBの視点のメリットを見るために、Bの視点でこの問題にどう答えるのかを示しておきましょう。

フレームワークの利点は3つ

①自らの思考の盲点や濃淡を知ることができる

 人はみな、自らの経験や立場による認知のゆがみ(バイアス)を持っています。これ自体は不可避ですが、問題はそれを意識しているか否かです。意識している人は、自分の考えがよくも悪くも「偏っている」ことを認識しているために、必ず一度客観的な視点からその偏りを確認します。そのための格好のツールがフレームワークです。

 例えば上の例で、Aの回答例はアドバイスの重要性を考えるポイントが、Why(理由や目的)やWhat(内容)に偏っています。アドバイスに関して、When(タイミング)、Where(場所)、Who(誰がするか)、How(手段など)といった視点が欠けています。これは例えば若手の「理に勝った」コンサルタントに散見される思考回路です。

 アドバイスに必要なのは、「求められている状況であること(本人が困っていること)」と事情をよく理解している信頼できる人から言われることが重要なケースが多いのですが、なかなかアドバイスをする人が自ら気づくことは難しいのです。

 その偏りに気づいていないために弊害をもたらすことが多いのです。SNS上でよくある「求められていない状況下での見ず知らずの他人からの正論」という「アドバイス」もこのような思考の偏りを意識していないことから生まれるのではないでしょうか。

②聞き手との間で「共通の白地図」を共有できる

 論理的に説明することに必須の項目として、ロジックツリーを代表とする「共通の白地図」を用いることが挙げられます。「単なる箇条書き」というのは、バイアスを引きずったものであり、多くの場合、話し手には自明のように見えることが聞き手と共有できていない独りよがりのものになりがちです。

 このような場合に、大きな外枠としての白地図を共有することが重要です(例えば土地勘がない人にお店の場所を説明するときに、いきなり「右に曲がって、左に曲がって……」という話をしても、聞いているほうは何を言っているのかさっぱり分からないでしょう)。

③上記①・②の結果として、複数の関係者の間での議論や優先順位付けがやりやすくなる

 フレームワークやロジックツリーのような共通の地図上で議論をしないで、箇条書きベースでのアイデアのぶつけ合いは、お互いの主張を言い合っているだけで、建設的な優先順位付けの議論になりにくく、結局「声の大きいほうが勝つ」という、その後の関係者間で納得感がない結論になりがちです。

 そんな場合にフレームワークやロジックツリーを使った議論が役に立つのです。

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