話題の不正会計問題や会計のつまずきがちなポイントなどを分かりやすく解説する、「公認会計士YouTuberくろい」こと、白井敬祐さん。「会計が分からない人」に寄り添った解説の裏には、自身も会計の勉強で苦労した経験がある。そんなくろいさんに全ての社会人に向けて、会計の基本を一から学ぶための本をセレクトしてもらった。

「簿記」から始めるから挫折する

 会計の勉強をして得するのは、経理人材や公認会計士などの専門家だけではありません。会計を知るということは、ビジネスの共通言語を知り、「もうけ」の仕組みを知るということ。営業、マーケティング、事務、クリエーティブ職…あらゆる仕事で、社会人としての大きな強みになります。自分の仕事が決算書のどの部分に反映されるのかを知っていると、その発言には説得力が生まれますし、仕事のやりがいや手応えも違ってくるでしょう。

「公認会計士YouTuberくろい」こと、白井敬祐さん。業務改善コンサルや大手公認会計士資格スクールの実務家講師も務める
「公認会計士YouTuberくろい」こと、白井敬祐さん。業務改善コンサルや大手公認会計士資格スクールの実務家講師も務める
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 一方でみなさんの中には、ビジネスパーソンとして会計を勉強したいと思いつつ何度か挫折した…という人がそれなりにいるかもしれません。「会計を勉強しよう」と決めたとき、多くの人が最初に思い浮かべるのが「簿記」の勉強ではないでしょうか。実は、これこそが挫折の原因。勉強する順番として間違っているんです。

 「ビジネス(企業の活動)」を数字に変換して記録したものが「決算書」ですよね。簿記というのは、その過程である「決算書を作る」という作業のルールを学習することがメインで仕訳など緻密な作業が必要になるため、挫折しやすいポイントがたくさんある。

 一から会計を勉強したいのであれば、まず「決算書とは何か」を理解することから始めてください。P/L(損益計算書)・B/S(貸借対照表)・C/S(キャッシュ・フロー計算書)の財務3表が何のために存在するのかをしっかり理解して、それらの読み方を学び、それから簿記のテキストを見ると「ここに結びつくのか」とふに落ちると思います。

 学ぶ順番はピラミッド状のイメージ。まず①「決算書とは何か」を知り → その後に②「簿記」を学び → ③「財務会計(株主や投資家に向けた会計)」・「税金」への知識を深め → ④「管理会計(経営者が意思決定のために活用する会計)」 → ⑤「ファイナンス」を理解する。

くろいさんへの取材を基に編集部作成
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 上に行くほど高度になりますし、その知識があれば得られる年収も高くなります。ただ、経理人材など会計を専門とする職業でなければ、②までの知識があるだけでもアドバンテージを発揮できます。ちなみにそういった人は、簿記は3級までで十分。2級以上は③~⑤の内容が含まれて、かなり専門的になります。

「面白すぎて悔しい」2冊

 最初に読んでもらいたい本は、「そもそも会計って何なのか」という前提や成り立ちを学べる 『会計の世界史』 (田中靖浩著、日本経済新聞出版)です。

『会計の世界史』(田中靖浩著、日本経済新聞出版)/画像クリックでAmazonページへ
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 こちらは会計というより、歴史の本。レオナルド・ダ・ヴィンチやレンブラントなど皆が知る歴史上の人物も登場し、そもそも会計がなぜ始まったのか、「減価償却費」など簿記のルールがなぜ現在のような形になったのかなどを知ることができます。

 歴史のストーリーを楽しみながらすらすら読めてしまうので、「会計を勉強している」という感覚は全くありません。会計の本なのに、数字が苦手な人でも読み物として楽しめます。

 次に読むのは、ピラミッドの土台部分、「決算書とは何か」を学べる 『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』 (大手町のランダムウォーカー著、わかるイラスト、KADOKAWA)がおすすめ。

『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』(大手町のランダムウォーカー著、わかるイラスト、KADOKAWA)/画像クリックでAmazonページへ
『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』(大手町のランダムウォーカー著、わかるイラスト、KADOKAWA)/画像クリックでAmazonページへ

 この本は、例えば「ブックオフグループホールディングス」「セブン-イレブン・ジャパン」「キャンドゥ」の小売3社の決算書を名前は伏せたまま見せて、「どれがキャンドゥの決算書か」といったクイズ形式で会計を学んでいく本。解くうちに、いつの間にか財務3表の本質が学べる一冊です。

 面白いのが、ビジネスモデルと結びつけて会計を“攻略”できるところ。「こういうビジネスモデルだから、こういう決算書になるのか」と納得できて、ビジネスと決算書の結びつきがよく理解できます。全てのビジネスパーソンの必読書ですね。

 これら2冊を読んだ後に、 第1回 で詳しく紹介した 『会計が面白いほどわかるミステリ 決算書に隠された7つの罪』 (白井敬祐著、三ツ矢彰作画、KADOKAWA)を読むと、よりスムーズに理解できるはずです。会計のミステリ漫画 → ストーリーにまつわる会計のクイズ → 解説という繰り返しで決算書を学べる形にしています。本書では、「決算書とは何か」「簿記」「財務会計」の基本を広く扱っています。

 この本は、前述の『会計の世界史』や『会計クイズ』にかなり影響を受けています。正直なところ、この2冊は面白過ぎて、こんな本を書けたのがうらやましい。というか、悔しい。それくらい太鼓判を押せる本なので、ためらわずぜひ手に取ってみてください。

 次回はピラミッドの中段、上段部分の本を紹介します。

くろいさんへの取材を基に編集部作成
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取材・文/三浦香代子 構成/大松佳代(日経BOOKプラス編集) 写真/小野さやか