話題の不正会計問題や会計のつまずきがちなポイントなどを分かりやすく解説する、「公認会計士YouTuberくろい」こと、白井敬祐さん。「会計が分からない人」に寄り添った解説の裏には、自身も会計の勉強で苦労した経験がある。そんなくろいさんが上梓したのは、ミステリ仕立ての会計入門書。そのわけは、「会計は面白くないから」だという。
架空だけど限りなくリアルな粉飾決算から学ぶ
みなさんの中には「会計」という言葉に苦手意識がある人もいるのではないでしょうか。ビジネスパーソンとして会計の知識はあったほうがいいと分かっているけれども、「減価償却費」「税引前当期純利益」「貸倒引当金」「棚卸資産回転期間」…こんなふうに漢字だらけの会計用語を聞くと、うんざりしてしまう。
かくいう私も、「会計」が苦手でした。大学時代に会計のゼミに入り、そこで教授から「この世の中には勉強と仕事が直結する仕事が3つある。医者と、弁護士と、会計士だ」と聞き、努力が実を結ぶ仕事なら…と会計士を目指しました。公認会計士試験に合格するまで掛かった時間は、3年半。別に長くはないですが、周囲に聞くと2年ぐらいで合格している人が多いようなので、決して要領よく勉強できたとは言えないと思います。
なぜ会計の勉強に苦労したかというと、活字が苦手だったから、そして、会計そのものが面白くなかったからです。文章を読んでもパッとすぐに理解できないので、「これはどういう意味なのか」とかみ砕き、できる限り図解しながら考えることを何度も繰り返しました。当時の自分が苦労したおかげで、今は公認会計士資格スクールの講師として会計初心者に分かりやすく教えられるようになりました。
2026年1月に上梓した 『会計が面白いほどわかるミステリ 決算書に隠された7つの罪』 (白井敬祐著、三ツ矢彰作画、KADOKAWA)は、「真面目な本は読みたくない」という私自身の経験から生まれたものです。知識がまっさらな状態の会計初心者でも無理なく読み進められて、読み終わったときには会計の知識の土台ができているような本を作りたかったのです。
あまたある会計入門書と違うのは、「ミステリ漫画」形式にしたこと。ワンマン経営者の下で過去最高益から一転、巨額赤字へ転落した架空の企業「帝国重工」が舞台です。本の最初から最後まで、漫画家の三ツ矢彰さんに一連の漫画を描いてもらいました。そのストーリーの合間で帝国重工の決算書に隠された謎の真相解明のため、会計の基本知識を解説していきます。
もちろん、昔の私のように「会計が面白くない」と感じる人の心理的なハードルを下げるためにこのような形式にしたのですが、ストーリーを考えるのが本当に大変で。担当編集者と一緒に、生成AIの力を借りながら、ああでもないこうでもないと半年間、膨大な時間を掛けてストーリーや構成を練りました。三ツ矢さんが経理や簿記に詳しいので、ストーリーをうまくアレンジしてもらえて助かりました。本書の冒頭には、4ページにわたる「帝国重工の決算書」という手の込んだものまで掲載しています(笑)。見たときに「ウッ」と抵抗してしまうような会計の数字が、知識を付けるうちに読み解けるようになる体験をしてもらえると思います。
公認会計士、YouTuber、講師… AIなしではかなわない複業
私は今、会計分野での生成AIを活用した業務改善コンサルティングも行っていますが、まだまだ現場に生成AIの活用が普及していないのが現状です。そして「生成AI」×「会計」については詳しい人がそれほどおらず、いまだにブルーオーシャンの領域だと思います。
そこで、 『生成AI×経理・会計 実務入門』 (白井敬祐著、日本実業出版社)を書きました。会計の日次・月次・年次業務をはじめ、議事録作成、業務の引き継ぎなどでも生成AIを活用する方法を紹介しています。全プロンプトをダウンロードできるようにしたので、実際に手を動かしながら学んでみてほしいです。
私も自分の仕事にClaude Codeなどを活用するようになって、業務スピードが格段に上がりました。YouTubeの動画を編集したり、字幕を付けたりするのも生成AI。企業の報告書も生成AIで要約してから読みます。不正があった企業の第三者委員会報告書などはいきなり細部の説明から始まることがあるので、AIの要約で大枠をつかんでから読むと、全体像を把握しやすくなりますよ。
公認会計士として業務改善コンサルをしながら、講師業務をして、YouTubeに動画投稿し、書籍も執筆して…生成AIのフル活用なしでは、1人でこれをやりくりするのは、到底不可能です。逆に言えば、活用できる人とできない人で大きく差が開いていると思います。
取材・文/三浦香代子 構成/大松佳代(日経BOOKプラス編集) 写真/小野さやか


