開始時の設定のまま、投資をし続ける方法は「ほったらかし投資」と呼ばれます。他方、投資割合をこまめに確認して調整するのが「リバランス」。資産運用の教科書的にはリバランスが推奨されるのですが、そのメリットとデメリットとは? 新刊『日経マネーと正直FPが教える 一生迷わないお金の選択』(菱田雅生・大口克人著、日経BP)から抜粋して紹介します。第1回は「リバランスをする際の注意点」について「正直FP」こと、菱田雅生さんが解説します。
「崩れた投資割合の調整」は効果的?
そもそも「リバランス」とは、株価などのマーケットの変動によって崩れたバランス(投資割合)を、「当初決めた元のバランスに戻す」ことを言います。教科書的には、「リバランスは資産運用の重要な戦略の1つ」で、資産形成の長期目標の達成のためには、必ずやった方がいいと言われることが多いです。
一方、「ほったらかし投資」はその名の通り、最初に決めた割合(バランス)で投資をしたら、マーケットの変動でバランスが崩れても、一切リバランスはせずに「ほったらかし」にする投資法です。
では、「こまめにリバランス」がいいか、「ほったらかし投資」がいいか。
私(菱田)なりの結論を一言で言うなら、「リスクは高くなるだろうけど、『ほったらかし投資』の方がお得になる可能性は高い」です。なぜそう言えるのか、まずは「リバランス」の仕組みから簡単に説明しましょう。
ここでは、リバランスの効果を分かりやすくするために、リーマン・ショック前後の2007年度から2009年度の代表的な4資産(国内債券、国内株式、外国債券、外国株式)のデータを使って説明します。
まず、07年度末に4資産にそれぞれ25万円ずつ均等に投資したとします。資産合計は100万円、4資産の投資割合は25%ずつです。その後、08年度のマーケットは、国内債券だけ値上がりし、その他の3資産は値下がりしました。その結果、08年度末の資産合計は約79万円まで減り、投資割合も「国内債32%、国内株21%、外国債29%、外国株18%」に崩れました。
そこで、崩れた割合を元に戻す「リバランス」を実行します。具体的には、「国内債32%→25%、国内株21%→ 25%、外国債29%→25%、外国株18%→25%」となるように、割合が増えた資産の一部を売却して、割合が減った資産を買い増すのです。こうすることで、資産合計は約79万円のままですが、投資割合は元の25%ずつに戻すことができます。これが「リバランス」です。
そして09年度のマーケットは、国内債+2.04%、国内株+28.47%、外国債+0.18%、外国株+46.75%と、4資産全てが値上がりしましたので、資産合計は約94万円まで戻ることになります。仮に、リバランスをせずに「ほったらかし」にしていたとすると、資産合計は約91万円でしたので、リバランスの効果は約3万円だったことが分かります。
結果だけを見ると、「3万円も得をするなら、リバランスはした方がいい」と思うかもしれませんが、これはリーマン・ショック前後という大きな値動きがあったタイミングだったからです。リバランスで常にこのような効果が得られるとは限りません。
実際に、平成バブルのピーク時からの33年分(1989~2022年度)のデータで、100万円を4資産に均等に投資した場合を計算してみました。33年間、一切リバランスはせず「ほったらかし投資」をした場合は、100万円が556万円になっていました。
一方、33年間、毎年度末に「こまめにリバランス」をした場合は、100万円が506万円になっていました。つまり、結果として「ほったらかし投資」の方が50万円増えていたわけです。
調整はリスクとコストを考えて
実は、これがまさに、「リバランス」のメリットとデメリットを示しているのです。こまめなリバランスは、常に当初決めた投資割合をキープしようとするので、1つの資産の割合が増えすぎて資産全体のリスクが高くなってしまうことを未然に防げます。資産形成の長期目標に向けて着実に運用していくことができるでしょう。また、リバランスのルール(定期的、または一定以上の割合の変化など)を決めることで、市場の変動や感情に左右されずに実行できます。
しかし一方で、取引コストの増加やタイミングの難しさ、そして、長期に株価が上昇していく時のパフォーマンスの低下などのデメリットがあるのです。
私の考えとしては「こまめなリバランス」は、リバランス時にコストがかかるなら絶対にNG。コストが全くかからないなら、やってもいいと思いますが、「こまめなリバランス」によって運用成績が想定以上に良くなる可能性は低くなります。
やはり自分に合った資産配分を決めたら、基本的には「ほったらかし投資」でいいでしょう。もし金融ショックによる株価の下落時に、タイミングを見て買い増しをしたいと思うなら、「コア・サテライト戦略」を使って全体の2割程度を表す「サテライト(衛星)」の部分で一括投資をするのがいいでしょう。「コア(核)」の8割程度の部分は「ほったらかし」が基本でいいと思います。
菱田雅生・大口克人著、日経BP、1870円(税込み)



