親が子どもだったころの自分の親との関係を見つめ直す必要性を説き、世界200万部のベストセラーとなった『子どもとの関係が変わる自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー著/高山真由美訳/日本経済新聞出版)は、現代の新しい育児書として、世界中の親たちの共感を呼んでいます。今回の著者インタビューでは、親が自分の子ども時代を振り返ることが大切な理由、他の育児書との違い、この本を書いたきっかけなどに迫ります。
親が自分の過去を見つめる
この本を書く決心をしたのはいつ、そして、なぜですか?
この本を書くことはかなり若いころから頭にあり、私の人生全般がそこへ向かって進んできたとも言えますが、直接のきっかけとなったのは心理療法士としての仕事でした。
クライアントのなかに、過酷で有害な育てられ方をしてきた人はほとんどいません。みんな善意ある親に育てられました。ただ、そういう親であっても、彼ら自身の親や、文化、社会から干渉を受け、知らず知らずのうちに子どもにとって最善の選択ができなくなっているのです。こうした子育ての問題を直視しなければ、同じものを無条件に次の世代に手渡してしまいます。
例えば、親が子どもに常に幸せでいてもらいたいと思うのは、不自然なことではありませんが、非現実的です。私たちを幸せにするものには、私たちを悲しませる力もあるからです。
時々、幸せでいてもらいたいと願うあまり、子どもが悲しむところを見たがらなかったり、怒りに適切に対処する方法を教えなかったりする親がいます。子どものネガティブな感情を完全に否定したいのです。
しかし、逆説的に聞こえるかもしれませんが、子どもがどんな感情を持とうと――喜びだけでなく、不安、怒り、悲しみを覚えようと――親がサポートしてこそ、幸せになるための能力が育つのです。
読者は、本書に何を期待できるでしょうか?
私の本は、子ども自身に注目するだけでなく、親であるあなたにも焦点を合わせているところが他の育児書と異なります。この本を読むとセラピーを受けているような気分になる、とよく言われます。読者自身に自分の過去を見つめてもらい、考えてもらうことが多いからです。過去が自分の現在にどう作用しているか、そしてこれが一番重要ですが、過去が子どもとの関係にどう影響を及ぼしているかを、より強く意識するのです。
本書の力点は、あなたと子どもとの関係について考えることにあります。もし子どもに問題があると思うなら、子どもを観察するだけでなく、あなたが子どもとどう関わっているかを見つめる必要があるからです。親子の関係のなかにこそ、最善の解決法が見つかるのです。子どもだけにスポットライトを当てても見つかりません。
これはあなたの親子関係を最適化する方法について書いた本です。
子どもにとってあなたとの安全な関係は――なんでも話せる、なんでも見せられるという関係は――何よりも必要なものです。
親自身の子ども時代が子育てのスタイルに影響するとあなたは言いますが、子どもが目の前にいるのに、なぜ、自分の子ども時代を振り返ることが重要なのでしょう?
自分が赤ちゃんだったころ、学童だったころ、10代だったころを、想像してみてほしいと思います。
親子関係においては親のほうにより強い力があること、その力を乱用すべきではないことを、私たちは肝に銘じる必要があります。子どものころ、思春期のころがどんなふうだったか思い出せば、強制より協調の道を模索すること、ただ対処するだけでなく心を寄せることができるでしょう。
例えば、昨日はテーマパークに行って、親子で楽しい1日を過ごしたはずなのに、今日になって子どもがぶらぶらしながら「うちってどこにも遊びに行かないよね」と言ったとします。思わず「昨日出かけたばっかりじゃないの!」と言いたくなるところです。
しかし、そんなふうにパッと反応する前に、どう答えるかよく考えてみてください。子どもの言葉だけを聞くのではなく、気持ちに耳を傾け、気持ちに答えるといいのです。
「どこにも遊びに行かないよね」に対しては、言葉に反発するのではなく、気持ちをくみとりましょう。「退屈でうんざりしているみたいね。何がしたいの?」。またテーマパークに行きたい、というような言葉が返ってくるでしょうから、それならこう答えればいいのです。「そうだね、あれは楽しかったね」。これで衝突することなく、気持ちを通じあわせることができます。
子どもに最大の影響を与えるのは親
子どもから「弱い親」と見なされてしまうことは避けたほうがいいのでしょうか?
自分の間違いを認めるのは危険ではないかと、以前、ある親に聞かれたことがあります。親も間違えることがあるとわかったら、子どもが不安になるのではないか、というのです。まさか! 何かがおかしければ子どもにはわかります。だから、間違えたらそれを認め、謝りましょう。
自分は正しいと親が言い張ると、子どもの直感力が阻害され、知性を鈍らせてしまう危険があります。自分が親に望むような対応を、自分で実践しましょう。人はみな過ちを犯しますし、時には間違いを口にすることもありますが、それを認めないと、不必要な恥の上塗りをすることになります。
私は、誤解したときや何かを間違えたとき、責めるべきでないときに責めてしまったときには、子どもに「ごめんね」と必ず言うようにしていました。これには隠れたボーナスがありました。
4歳ごろのある日、娘が自分からこう言ってきたのです。「ママ、車のなかではイライラしててごめんね、おなかがすいていただけなの。もう大丈夫だから」。娘は恥ずかしいと思わずに謝ることができるようになっていたのです。自分もそういう扱いを受けてきたからです。子どもは親の例に倣います。私たちは、柔軟性の欠如や頑固さの例を示さないほうがいいのです。
子どもの心の健康については、親に責任があるのでしょうか?
私に言えるのは、子どもの性格や心の健康に最大の影響を与えるのは親である、ということだけです。親は学校や友達や社会よりもはるかに大きな影響を与えます。人生の最初の、子どもの感受性が最も強い時期を一緒に過ごすからです。この時期に私たちが優しさや思いやりを示し、ただ対処しなければならないものとして扱うのではなく、共感を持って関われば、子どもにも親にも十分な見返りがあります。
虐待された子どもが必ず自分も虐待するようになるわけではありませんが、そういうことはよく起こります。親によるケアがどうしても必要な時期に、親が子どもに対してほぼ全面的な影響力を持つのはもちろんですが、成長した後でさえ、親の自慢になることや親に褒められることは子どもにとって大きな意味があり、子どもの自己評価に影響を与えます。
最後に、子育て中の親に何かアドバイスはありますか?
一言ですませるにはあまりにも重大なテーマです。だからこそ、私は本を1冊書かなければなりませんでした。型通りのアイデアや、絶対確実な「メソッド」などは捨ててください。子どもも赤ちゃんも人間なのです。ちょっとしたコツやヒントで片づくような「もの」ではありません。心を開き、誠実に関係を築くに値する相手です。
子どもは自分がされたことをするようになります。だからもし、あなたが子どもを操ろうとしたり、言いくるめようとしたりすれば、子どももあなたやほかの人々を操り、言いくるめることを覚えます。
子どもに必要なのは、親との安全な関係です。忘れないでください、親子関係のうち半分を占めるのはあなたです。子ども自身に興味を持つのと同じくらい、親子関係に何を持ちこむかについても気にかける必要があります。
「心を揺さぶられた」「涙なしで読めない」「子育て全般が変わった」……。世界中から共感の声、続々! 自分の親との関係を見つめ直し、感情を受け止めれば見えてくる子どもが幸せになるための心がけ。
フィリッパ・ペリー著/高山真由美訳/日本経済新聞出版/2420円(税込み)
![フィリッパ・ペリー氏と著書『子どもとの関係が変わる自分の親に読んでほしかった本』(Image credit:[C]Justine Stoddart)](https://cdn-bookplus.nikkei.com/atcl/column/101100306/101100001/top_s.jpg?__scale=w:600,h:450&_sh=0ae02a0530)
