「昭和」が終わって三十数年。あなた自身が「昭和人間」の場合も、身近な「昭和人間」についても、取り扱い方にはちょっとしたコツが必要です。有効で安全なやり取りをするために考えた書籍 『昭和人間のトリセツ』 。「昭和人間」ならではの持ち味や真価を存分に発揮したりさせたり、インストールされているOSの弱点をカバーしたりするだけで、世代を超えた有意義な時間やコミュニケーションが生まれるかもしれません。今回は、それぞれの「昭和人間度」について。
社会の至る所に生息し、それぞれの場で活躍している「昭和人間」。一定の年齢以上のあなたは、自分自身が「昭和人間」でもあります。
昭和と令和とでは、世の中の常識も人々の考え方も大きく変わりました。もちろん、人生の年輪を重ねている「昭和人間」には、若者にはない長所や底力があります。いっぽうで、今の時代とややズレがある常識や感覚が、周囲のヒンシュクを買っているケースも少なくありません。昭和人間自身が、ズレに戸惑う場面もよくあります。
この連載では、さまざまな角度から「昭和人間」の習性や考え方にスポットを当てつつ、そのトリセツをあぶり出してみる所存です。
まずは、自分の「昭和人間」度を知るために、チェックテストに挑んでみましょう。年齢は、この際関係ありません。20代でも30代でも「心は昭和人間」という人は、きっといます。
次の10の項目のうち、自分に当てはまるものや同意できるものはいくつありますか。半端に世の中の空気を読んだりせず、ありのままを本音でお答えください。
「YES」の数で「昭和人間度」を判定します。もし可能なら、あなたの周りにいる「昭和人間」っぽい人にも、このチェックテストをやってもらいましょう。
- その1「若い後輩や知人から『それって昭和ですね』『うわー、昭和っぽい』と言われたことがある」
- その2「昭和40年代後半デビューした人気男性歌手の『新御三家』の名前を全員言える」
- その3「立ち上がるときに『よっこいしょういち』と言ったことがある」
- その4「大きな声では言えないが、子どもは3歳になるまで母親の手で育てるのが理想だと思っている」
- その5「小さな声でも言えないが、この頃は『セクハラ』や『パワハラ』に厳しすぎて逆に弊害があると思っている」
- その6「大事なお詫びの言葉はメールではなく対面か、せめて電話で伝えるべきだ」
- その7「もはやほとんど必要性はなくても、自宅の固定電話を解約する気にはなれない」
- その8「アジア諸国から留学していると聞くと、反射的に『豊かな先進国に来た苦学生』という枠組みで見てしまう」
- その9「音楽ユニット『YOASOBI』のメンバーの人数や男女比を知らない」
- その10「もちろん自分は昭和人間だし昭和人間で何が悪い、という気持ちだ」
さて、「YES」はいくつありましたか?
8~10個のあなた……昭和人間度100%
押しも押されもせぬ昭和人間です。きっと周囲とぶつかったりヒンシュクを買ったりすることも多いはず。今のままでよしとするか変わる努力をするか、それはあなた次第です。
5~7個のあなた……昭和人間度70%
まあまあ筋金入りの昭和人間です。若い人との感覚のズレを感じることもままあるでしょう。ズレが亀裂に発展するかプラスの結果を招くかは、ちょっとした心がけ次第です。
2~4個のあなた……昭和人間度30%
マイルドで薄めの昭和人間です。かといって油断は禁物。心の奥に眠っている昭和人間要素が、いつどんな形で顔を出すか分かりません。常に警戒を怠らないようにしましょう。
0~1個のあなた……昭和人間度5%
見事な平成(or令和)人間です。それはそれでいいんですが、昭和的な価値観を知っておくと、幅広い世代と有意義な付き合いができるでしょう。
何を言っているのかチンプンカンプン(←最近あまり見ない昭和ワードのひとつ)な設問もあるかと思うので、少し補足します。
その2の「新御三家」は郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎の3人。ちなみに元祖「御三家」は、昭和30年代後半にデビューした橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦の3人。その3の「よっこいしょういち」は、昭和47年にグアム島で発見された元日本兵の横井庄一さんの名前と「よっこいしょ」を掛け合わせたダジャレのこと。その4の「3歳児神話」は、昭和の頃には広まっていましたが、平成の初めごろには完全に否定されました。
その5は、そんなふうに当時を懐かしんでしまうぐらい、昭和の時代は「ハラスメント」が日常的な光景でした(残念ながら)。その6の「お詫び」に関しては、平成人間は「電話は相手の時間を奪うので、お詫びこそメールで」と考えているのかも。その8のように、昭和人間は「日本は先進国でアジア諸国から憧れの目で見られている」という意識をなかなか変えることができません。
その9の「YOASOBI」は、男女の2人組。活動開始は2019年で、『夜に駆ける』『アイドル』など多くのヒット曲があります。ま、知っている人には必要ない説明だし、知らなかった人は今後もたぶん縁がないので同じぐらい必要ない説明ですね。
昭和人間を二つのグループに分けてみる
「昭和人間」を語る上で気を付けなければならないのが、ひとくちに「昭和人間」と言っても、大きな幅があるということ。なんせ昭和時代は1926年から1989年まで足かけ64年もありました。
トリセツを考えるにあたって、全部をひとくくりにするわけにはいきません。細かく分けるとキリがありませんが、現時点での社会における存在感や立ち位置を考慮して、ひとまず「前期昭和人間」と「後期昭和人間」の二つのグループに分けてみましょう。
もちろんグラデーションはあるにせよ、大阪万博が開催されるなど高度経済成長の絶頂期だった昭和45年を境にして、それ以前に生まれた人(令和5年時点で53歳以上)を「前期昭和人間」、昭和46年以降に生まれた人(同52歳以下)を「後期昭和人間」に分類することにします。「自分を前期に入れるな!」とご立腹の方もいらっしゃるかもしれませんが、これもあくまで便宜上ですので、なにとぞご海容ください。
「前期昭和人間」と「後期昭和人間」、その違いを探る
生まれ育った時代の違いは、人生観や仕事観、ジェンダー観などに大きな影響を与えているはず。昭和前期と後期で「取り扱い上の注意点」に違いがある場合は、今後のトリセツの中でただし書きを加えることにします。必要に応じて、昭和25年以前に生まれた人(同73歳以上)を「いにしえの昭和人間」とさせてもらうこともあるかもしれません。
「前期昭和人間」と「後期昭和人間」では、どういう違いがあるのか。思いつくままにいくつか挙げてみましょう。
- 「後期」は物心ついたときからカラーテレビが当たり前だったが、「前期」はテレビの原体験が白黒テレビだったり、家にテレビが来た日を覚えていたりする
- 「後期」は中高生になっても漫画やアニメが好きだと公言できたが、「前期」が中高生の頃は漫画やアニメ(テレビ漫画or漫画映画)は「子どもが見るもの」とされていた
- 「後期」は昭和62~63年ごろにピークを迎えたバブル景気の実感や記憶はぼんやりとしかない、あるいはほとんどないが、「前期」はその渦中を経験していたり横目で眺めていたりする
- 「後期」は「経済は横ばいに推移していくもの」と思っていて、「前期」は「経済は右肩上がりに成長していくもの」というイメージを捨て去ることができない
- 「後期」は子どもの頃から「男女平等」という概念が広がり始めたが、「前期」が子どもの頃は結婚にせよ社会の仕組みにせよ「男尊女卑」がベースになっていた
- 「後期」が社会人になった頃は「女性の社会進出」が注目され始めていたが、「前期」が社会人になった頃は「女性は働くのは腰かけで家庭に入るのが幸せ」とされていた
- 「後期」が思春期の頃はそうでもなくなっていたが、「前期」が思春期の頃は「婚前交渉」「傷もの」「女の子のいちばん大切なもの」といった言葉に重みがあった
私たちは、生まれ育った時代の影響から逃れることはできません。上に挙げた違いはほんの一例ですが、昭和人間について考える際には「前期」と「後期」の違いが問題になってくるケースが少なくないかも。「だから後期のヤツは」「やっぱりほら、あの人は前期だから」などと、相手に舌打ちしたくなる場面もありそうです。
目の前の面倒臭い上司は、あるいは自分自身は、どのぐらい濃い「昭和人間」なのか、どのぐらい如実に「前期」「後期」の特徴を備えているのか。具体的なトリセツを考える際には、そんなことも意識していきましょう。
- どのぐらい濃い「昭和人間」なのか、まずはチェックしてみる
- 「前期昭和人間」と「後期昭和人間」は別の人たちだと認識する
- 「昭和人間」を否定する必要はない。上手に付き合うことが大切
文/石原壮一郎
なぜ10年前の出来事を最近のことのように語ってしまうのか? LINEが無意味に長文になる理由は? ――仕事観やジェンダー観など多様な切り口から「昭和生まれの人間」の不可解な生態に肉薄し、その恥部をも詳らかにする日本初の書籍。「【注】知っておかなくても構わない昭和・平成用語集」も収録。
石原壮一郎著/日本経済新聞出版/990円(税込み)

