「昭和」が終わって三十数年。あなた自身が「昭和人間」の場合も、身近な「昭和人間」についても、取り扱い方にはちょっとしたコツが必要です。「昭和人間」ならではの持ち味や真価を存分に発揮したりさせたり、インストールされているOSの弱点をカバーしたりするために、有効で安全なトリセツを考えてみましょう。

 昭和人間の一部は、ふとした拍子に「他人の結婚問題に関して暴言を吐く」という不具合が発生します。

「ねえ、○○さんは、どうして結婚しないの?」
「あそこの娘さん、40超えてるのに独身なんですって」「あらまあ、お気の毒」
「女の子なんだから、仕事はほどほどにして早くいい人見つけなきゃね」
「お前もそろそろ身を固めなきゃな。男はやっぱり結婚して一人前だよ」
「ずっと独身のヤツを見てると、男も女も性格にどっか難があるよね」

 大きなお世話だったり単なるイチャモンだったりで、どれも言われたら極めて不愉快なセリフです。しかし、言っている本人は何が問題なのか分かっていないので、言われた側がムッとして「ほっといてください!」と返したりすると、心の中で「そんな調子だから結婚できないんだ」などと暴言を重ねます。

不具合に反応しても面倒臭いことになる
不具合に反応しても面倒臭いことになる
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 この手の不具合が引き起こされるのは、多くの昭和人間の基本OSに「男も女も結婚して一人前」「結婚は人間が幸せになるための必須条件」「いつまでも結婚できないヤツは何か問題がある」という前提がインストールされているから。なぜそうなったのかを探るために、昭和と今の結婚事情を比べてみましょう。

 国勢調査に基づく内閣府の資料によると、男女の50歳時未婚率(お役所的には「生涯未婚率」とも呼ばれていますが、この言い方もどうかと……。50歳を超えて結婚する人は「想定外」扱いのようです)は年々増加していて、令和2(2020)年は男性が28.3%、女性は17.8%です。「結婚しない人生」は、もはやぜんぜん珍しくありません。

 この数字が勢いよく増加し始めたのは、平成に入ってからです。昭和真っただ中の昭和45(1970)年は男性1.7%、女性3.3%で、昭和55(1980)年も男性2.6%、女性4.5%と、結婚しない人は「ごく一部の例外」という世の中でした。国の制度も会社の制度も子どもに対する親の期待も子ども自身の将来像も、すべてが「誰もがいつかは結婚する」という前提の上に成り立っていたといえるでしょう。

 30~34歳の未婚率はどうか。令和2年は男性47.4%、女性35.2%で「結婚している人のほうがやや多い」ぐらいです。遡って昭和45年は、男性11.7%、女性7.2%で、30歳を超えて結婚していない人は「珍しい存在」でした。当時は25~29歳でも、男性の半分以上、女性の8割強が結婚しています。

 同じ昭和人間でも、昭和46年以降に生まれた「後期昭和人間」は、まだ令和の今との意識のギャップは小さめ。周囲の同年代に独身のまま50代になった人がゴロゴロいて、その人たちはけっして特別な傾向があるわけではなく、不幸な人生を送っているわけでもないことを肌で知っています。冒頭のようなセリフが時代錯誤であることも、それなりに分かっています。

 しかし、昭和45年以前に生まれた「前期昭和人間」は、男女を問わず、昭和では一般的だった「結婚至上主義」が色濃く染みついているケースが少なくありません。既婚者が既婚であることにひそかに優越感を覚えるのは勝手ですが、独身のまま年齢を重ねた前期昭和人間が「結婚至上主義の呪縛」から逃れられずに、「結婚していない自分」を否定したりコンプレックスを抱いたりというケースも多々あります。それはそれで、必要のないきしみを減らす調整が必要と言えるでしょう。

 昭和人間が結婚がらみの話題で不具合を起こさないためには、令和の今、結婚は決して「当たり前のこと」ではないと念入りに確認しておくことが大切。

 30代後半の未婚率と50歳未婚率を比べて、結婚した人の割合をざっと推測すると、現在30代で結婚していない人が、その後に結婚する可能性も半分以下です。「まだ結婚していないけど、いつかはする」という前提でのアドバイスは、まったく意味がありません。

 平成生まれの若者たちは、「結婚するのが一人前」「結婚するのが幸せへの道」という気持ちをまったく持っていないことも、十分に認識しておきましょう。「結婚適齢期」という言葉は、その概念も実態も完全に消滅しました。

 昨今、「結婚しているかどうか」を気軽に尋ねるのがタブーとされているのは、その質問の根底に「年ごろになったら結婚するのが当たり前」という過去の価値観の押し付けが感じられるから。聞かれた側の年齢によっては、聞いた側はそんなつもりはなくても、「ちゃんとした人間」か「何か問題がある人間」かをジャッジされているようにも感じます。

 それだけ根の深い問題をはらんでいるので、物分かりのいい大人のフリをしようとして「いやあ、最近は女性に結婚してるかどうかを聞いちゃいけないんだよね」「いやあ、独身のままの人生も、きっといいもんだよ」などと発言するのは、完全に逆効果。むしろ「ぜんぜん分かっていない」ことを強く印象づけることになります。

暴言を吐かれた場合の対処法

 周囲の昭和人間に暴言を吐かれた場合は、どう対処すればいいのか。

 結婚しない人が数パーセントしかいなかった時代に育った人が、「結婚するのが当たり前」という感覚を捨て切れないのは、まあ仕方ありません。「そういう人」だと思えば、感覚のズレに対して少しだけおおらかな気持ちになれるでしょう。「どうして結婚しないの」的なことを言われたら、「なるほど、結婚するっていう生き方もあるわけですね」と返すのがオススメ。話が通じないことを思い知らせれば、二度とこの手の話題を振ってこなくなります。

 気持ちと時間に余裕があれば「○○さんは、結婚してよかったと思ってますか?」と尋ねてみても楽しいかも。「うーん、まあ、よかったんじゃないかな」と遠慮がちに答える人もいれば、予想外の質問をされて考え込んでしまう人もいるでしょう。「いいとか悪いとかの問題じゃないんだよ!」なんて、いかにも「痛いところを突かれた感」にあふれた反応をしてくれたら、それはそれで一興です。調子が悪くなった家電製品をゆすって、どんな反応をするかを確かめてみるのと似ていますね。

 結婚観の変化が「いいこと」か「悪いこと」かは、今の時点では判断できません。昭和人間としては、少子化などとからめながら「昔のほうが望ましい状況だった」と言いたいところです。しかし、きっとよくない要素も多かったから時代とともに変化してきたのでしょう。

 変化の功罪のジャッジは歴史に任せるとして、現状を否定して過去を美化したがるのは、自らが「型落ち」であることの何よりの証明です。変化した現状に文句を付けることで、いいことを言っている気になるのも、昭和人間の困った特性の一つ。甘い誘惑に負けないように、くれぐれも気を付けたいものです。

昭和人間(自分を含む)との付き合い上の注意――今回のポイント
  • 結婚状況の変化を知ることは、暴言という不具合を防ぐ第一歩
  • 暴言をまともに受け止める必要はない。ゆすってみて楽しもう
  • 変化の功罪をジャッジしようとするのはずうずうしい上にうっとうしい

文/石原壮一郎 写真/PIXTA