大の読書家として知られる俳優の庄司浩平さん。多忙な毎日を過ごす中でも、時間を見つけては読書や長年続けている英会話を楽しんでいます。第1回は庄司さんが幼少期から今まで、どのように読書に親しみ、本を選んできたのか読書遍歴を伺いました。

庄司 浩平 しょうじ・こうへい
俳優・モデル
1999年生まれ、東京都出身。趣味は読書、バスケットボール、英会話。学生時代は年間100冊以上を読み、現在も月に4~5冊を併読する読書家で知られる。また、独学で身に付けた英語力を活用してBリーグの英語インタビューなどにも挑戦。『魔進戦隊キラメイジャー』でデビューし、『仮面ライダーガヴ』や『40までにしたい10のこと』、NHKのEテレ『高校講座 数学A』『NHK俳句』にレギュラー出演中。2025年10月には自身初の小説「なつのさくら」を発表

 僕は、両親とも読書家で、物心ついたころから本を読む習慣が身に付いていたように思います。幼少期はいつも絵本を読み聞かせしてもらっていましたし、それ以降ずっと本が好きですね。今でも、時間があればふらっと書店に足を運びますし、図書館通いも続けています。

 このインタビューもそうですが、よく「人生の転機となった本は?」といった質問を受けることがあります。でも僕自身は、ご飯を食べるような感覚で本を読んできたので、本との出合いや読書が、人生におけるゲームチェンジャーになったことはありません。「この一冊に救われた」とか「この作品とともに一生生きていくぞ」みたいな経験はしてこなかったんですよね。

 とにかく読んで、消費していく

 アニメやドラマを見るとか、お酒を飲むとか、スポーツをするとか、他の娯楽と同じような位置づけで、「本は消費していくもの」としてとらえています。じっくり読むというよりは、大量に何冊も並行して読んでいくスタイルなので、「流れてくるショート動画を見ているうちに5分前に見たものを忘れてしまう」ような感覚とも近いかもしれません。

「読書は消費するもの。食べるように本を読んでいます」
「読書は消費するもの。食べるように本を読んでいます」
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 図書館に行って本を選ぶときは、「ジャケ買い」ならぬ「ジャケ借り」です。図書館って、棚にずらっと背表紙が並んでいますよね。館内をぶらぶらと歩きながら、決め手になるのは本のタイトルや装丁。どちらかというと、文庫本よりもハードカバーを重点的に選びます。手に取って、ぱらぱらとページをめくって、直感的に「読んでみよう」と思ったものを5冊ほど借りるのがいつものパターンかな。

 宮部みゆきさん、恩田陸さん、村上春樹さん、辻村深月さん、有川浩さん…好きな作家さんはたくさんいても、「この人の作品だけは出たらすべて読む」という推しの作家さんも、実はいない。逆を返すと、食わず嫌いがないということかもしれません。

 理解できなくても読む。食わず嫌いはしない

 もちろん、ジャンルやテーマによっては、読みやすい、読みづらいがありますね。「戯曲」などは難しいので、勉強だと思って手に取っています。今では大ファンになっていますが、村上春樹さんの作品『 アフターダーク 』(講談社)を最初に読んだとき、全然理解できなかったんですよ。村上さんの作品は独特の空気感がありますよね。僕が中学生の時に同級生が『1Q84』の読書感想文を書いていたけれど、今でも「あれ読めたんだ!?」と驚きでした。僕自身は、スムーズに読めないところがあったので(笑)。

「村上春樹さんの作品は、子どもには難しい表現もありますよね」
「村上春樹さんの作品は、子どもには難しい表現もありますよね」
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 ただ、村上さんの作品って、多少理解できなくても読み手にページをめくらせる力があるんですよね。「うーん、わかんね~」と思いつつ400ページを読ませてしまうのは、作家としての手腕だと実感します。村上さんの作品は長編が多いですが、『 パン屋を襲う 』(新潮社)というイラスト付きの短編は50ページほど。短いけれど内容がとても充実していて読み応えもあってお薦めしたい1冊です。

 読書好きの自分をつくった『かいけつゾロリ』シリーズ

 小さい頃から今までずっと、本が好きでいられたのは、やっぱり成長の節目で「本って面白い」と思い続けられたからだと思います。

 最初に親から与えられた『ぐりとぐら』や『ねずみくんのチョッキ』などの絵本に始まり、その後、「本が面白い!」とハマっていく過程で、特に『かいけつゾロリ』シリーズの存在は、大きかったですね。1987年に刊行され、今も子どもたちに愛されている読み物シリーズです。一冊ずつ読んでいく楽しみがあるんですよね。

 シリーズで読むことで芋づる式に読書の幅が広がる楽しさを教えてくれた『かいけつゾロリ』を経て、小学校の図書館には必ずある『デルトラ・クエスト』『マジック・ツリーハウス』などの児童文学シリーズもひと通り読みました。字が比較的大きめで、挿絵も入っている作品はそのままアニメにできるような魅力があり、読み続ける中で自然と読書が好きになる路線ができあがったように思います。そして、『ソードアート・オンライン』のようなライトノベルにもハマりました。

 小説を読み始めた中学生の頃は、山田悠介さんの『リアル鬼ごっこ』が流行っていて、僕も例に漏れずサイコスリラーにハマっていきました。それまであまり縁がなかったホラーというジャンルに触れるきっかけとなったのは『十角館の殺人』などで有名な綾辻行人さんの『Another』ですね。自分の転機と呼べる作品はほぼないとはいえ、小説を読み始めたころに読んだこの本は、とても思い出深い作品です。

 そこから、同じく人気のあった湊かなえさんの『告白』を読んだら当時の自分にはとても重く感じて…。湊さんの作品は、幼い子どもが語り手になる作品もあり、性悪説に触れたような気持ちになって中学生の僕は怖くなったんでしょうね。その反動で、ほんわかした瀬尾まいこさんの作品に性善説を求めました(笑)。

「湊さんの作品は、今読むと、違った見方ができると思います」
「湊さんの作品は、今読むと、違った見方ができると思います」
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 そんな感じで、いろいろなジャンル・作家さんの小説を手に取り、味わい、「毎日いろんなジャンルの料理を食べるような読書スタイル」の現在に至ります。

取材・文/真貝友香 構成/長野洋子(日経BOOKプラス編集)写真/洞澤佐智子