「読書離れ(活字離れ)」という言葉を聞いたことがありますか? 『科学的根拠(エビデンス)が教える 子どもの「すごい読書」』の著者で、読書研究の専門家である猪原敬介さんによると、実はコロナ禍を経た今、子どもたちの間で急激な「読書離れ」「活字離れ」が進んでいるといいます。どの程度、どのように起こっているのでしょうか。そして、このAI時代に、子どもたちはどのように読書と向き合うべきなのでしょうか。全4回の連載を通して考えます。1回目は、「読書離れの実態」です。

成人の6割超は「1か月に1冊も『(本を)読まない』」

 文化庁が毎年行う「国語に関する世論調査」には、5年に1度の間隔で、次のような質問項目が含められます。

  • 「あなたは現在、1か月に大体何冊くらい本を読んでいますか。電子書籍を含みますが、雑誌や漫画は除きます。」

 令和5(2023)年度調査(文化庁, 2024)には、全国の16歳以上の約3500人が回答しました。その結果、62.6%の人が「読まない」と回答しているのです。
 このような、「読まない」や「0冊」と回答した人の割合を「不読率」といいますが、この調査の結果が公表されると「不読率がついに6割を超えた」として、ニュース等で話題となりました。

 ちなみに、不読率には年代差はそれほどありませんでした(図1)。

【図1】
成人の6割超は「1か月に1冊も『読まない』」<br>出所:令和5(2023)年度「国語に関する世論調査」(文化庁, 2024)より
成人の6割超は「1か月に1冊も『読まない』」
出所:令和5(2023)年度「国語に関する世論調査」(文化庁, 2024)より
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 年代別不読率はそれぞれ、16~19歳(66.3%)、20~29歳(65.1%)、30~39歳(65.0%)、40~49歳(61.5%)、50~59歳(62.7%)、60~69歳(60.1%)、70歳以上(63.0%)となっています。
 最も「読まない」割合が低い(つまり、本を読む)60~69歳と、最も「読まない」割合が高い(つまり、本を読まない)16~19歳で、その差は6.2%に過ぎません。

 現在の日本の成人の6割以上は読書習慣を持てていないことがわかります。

小学生・中学生・高校生、一番本を読んでいるのは誰?

 では、小学生、中学生、高校生たちはどうでしょうか。

 大人が読んでいないのだから、子どももどんどん読書離れしているのかな……と思われるかもしれません。これは、正解でもあり、不正解でもあります

 まずは「不正解」のほうから説明しましょう。「小・中・高の若者に読書離れは存在しない」という主張は以前からなされており、これには一定の説得力があります。

 図2に、2025年調査まで含めた第70回学校読書調査の結果(全国学校図書館協議会, 2025)を示しました。

 この調査では、2025年6月の第1・2週に、全国の小学生(4~6年生)、中学生、高校生のそれぞれ3000~4500人に対して調査を行っています。
 質問項目として「5月1か月間に読んだ本の冊数」が含まれており、その質問に「0冊」と回答した人の割合、すなわち不読率を、1995~2025年の過去31年分にわたって折れ線グラフで示してあります。

 横軸が調査実施年、縦軸が不読率です。折れ線グラフが高い位置にあるほど「読まない人」の割合が多く、低い位置にあるほど「読む人」の割合が多いわけです。

【図2】
1か月に1冊も本を読まない人の割合の推移<br>出所:第70回学校読書調査「過去31年分の不読者(0冊回答者)の推移」を、著者が改変<br>*第66回調査(2021年)以前は全国学校図書館協議会・毎日新聞社が調査者であり、第67回(2022年)以降は全国学校図書館協議会が調査者
1か月に1冊も本を読まない人の割合の推移
出所:第70回学校読書調査「過去31年分の不読者(0冊回答者)の推移」を、著者が改変
*第66回調査(2021年)以前は全国学校図書館協議会・毎日新聞社が調査者であり、第67回(2022年)以降は全国学校図書館協議会が調査者
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 3本の折れ線グラフがあります。一番下が小学生(4~6年生)、真ん中が中学生、一番上が高校生です。つまり、0冊回答者の割合は高校生が一番高く、高校生が一番本を読んでいないということです。反対に、0冊回答者の割合は小学生が一番低く、小学生が一番本を読んでいることがわかります。

「読書離れはウソ」だといわれた理由

 さて問題は、過去31年間で不読率がどう変化したかです。

 図2でAと書いてある枠を見てください。1995~2001年のあいだ、本稿執筆時点である2025年からいえば25~30年ほど前は、不読率が高水準にあることがわかります。小学生でも10%以上の不読率があり、1997年には中学生では55.3%、高校生にいたっては69.8%となり、ほぼ7割が「不読」という状況でした。
 しかしこのあと、不読率は急激に下がり、Bの枠である2004~2019年ころまで、不読率は横ばいとなっています。特に小学生と中学生の不読率の減少が著しく、小学生は3.8~8.1%、中学生は12.5~24.6%で推移するようになっています。

 このデータから「小・中・高の若者に読書離れは存在しない、むしろその逆だ」と主張したのが『「若者の読書離れ」というウソ 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか』(飯田一史, 平凡社)という書籍です。
 同書によれば、AからBへの急激な不読率の減少には、

  • 全国の学校図書館が整備されていったこと
  • 2000年から始まった国際学力調査で、日本の15歳児童の「読解力」が危機的状況にあることが大きく報じられた(「PISAショック」)ため、読書推進の機運が高まったこと
  • すでに広まりつつあった「朝の読書」が、これらの時世を受け、さらに全国へ浸透したこと

 という要因があります。

 AからBへの不読率の減少を見れば、「最近の小学生、中学生、高校生は、25~30年前に比べて本を読むようになった」というのは事実であり、「子どももどんどん読書離れしているのかな」という直感は「不正解」といえるのです。

コロナ禍以降の読書事情 再びの読書離れへ

 では次に「子どももどんどん読書離れしているのかな」という直感が「正解」でもあるのはなぜか、ということを3つのデータから説明します。

 まずは引き続き学校読書調査のデータです。
 図2のうち、今度はCの枠を見てください。ずっと横ばいだったBの期間が終わり、コロナ禍で調査が中止された2020年を挟んだ2021~2024年まで、小学生と中学生では、不読率が上昇に転じているのがわかります。

 特に最新の2025年調査の不読率は衝撃的で、小学生の不読率9.6%は2002年以降の24年間で最高値であり、4年連続の増加です。中学生の不読率24.2%も2006年以降の20年間で最高値です。
 驚いたのは高校生で、2024年調査の48.3%から7.4ポイントも増加し、55.7%となっています。2023年には43.5%まで不読率が下がっていましたが、その減少分を帳消しにしてしまう増加で、2018~2019年調査の水準まで再び高まってしまいました。

 つまり、このCの期間である5年間についていえば、小学生と中学生では明らかに「読書離れが急速に進んでいる」という状況なのです。

 とはいえ、高校生には明確な不読率の上昇傾向にありませんし、たった5年間のデータなので、たまたまそうなっただけかもしれません。
 近年の急速な不読率の上昇は、果たして一過性のものなのでしょうか。次回は、この不読率上昇の背景について見ていきます。

(写真:Maria/stock.adobe.com)
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(図版制作=髙井愛)

本を味方にすると、子どもの人生は豊かになる!!

本が好きな子にも、ちょっと苦手な子にも。本を読めば、将来、直面する「壁」や「迷い」を乗り越えやすくなる。本の効果は、「頭がよくなる」だけではありません。探究心・知的好奇心・思いやり・友達や周囲の大人とのコミュニケーション力…読書の効果を無理なくいいとこ取りするための、科学的根拠が教える読書法!!

猪原敬介著/日経BP/1980円(税込み)