『 きみの人生に作戦名を。 』『 「言葉にできる」は武器になる。 』の著者である梅田悟司さんのトーク&ワークセミナーが2023年3月9日、八重洲ブックセンター本店のフィナーレイベントとして開催されました(同店は2023年3月31日をもって閉店)。当日はモニターが参加し、『きみの人生に作戦名を。』で紹介されている「9マスシート思考法」を使って、梅田さんがモニターに「作戦名」を付けるワークを実施しました。
不安の時代でも、人生は続く
梅田悟司さんの本業はコピーライター。「自分の中にある考えに言葉を付けていく」ということが大事だと言います。
「2016年に発行した『「言葉にできる」は武器になる。』では、“思いの丈を言葉にする”ことが大きなテーマでした。『きみの人生に作戦名を。』はその兄弟本にあたります。こちらは“言葉によって行動を起こそう”というのがテーマで、前作と今作の間にはコロナの時代があります。これまでは思いの丈を言葉にすればなんとかなっていましたが、今の時代はそうではありません。止まった時計の針をどう進めるかを考えなければなりません。もう一度動き出すにはパワーが必要です。そこで言葉を利用しましょう」(梅田さん)。

1979年生まれ。上智大学大学院理工学研究科修了。電通にて国内外の広告賞・マーケティング賞、グッドデザイン賞や観光庁長官表彰などを受ける。CM総合研究所が選出するコピーライタートップ10に2014~18年の5年連続で選出。主な仕事に、ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」。TVドラマのコミュニケーション・ディレクターや、ベンチャー企業のコミュニケーション戦略立案なども行う
9マス思考法で見えない一貫性を見いだす
「名前が持つ力はとても強く、かつ重要。例えば、たくさん売られているイルカのぬいぐるみの中から1つを買って名前を付けると、そのぬいぐるみは他のものとは一線を画すものになります」(梅田さん)。このように、自分の人生を振り返り、未来を指し示す名前、すなわち「作戦名」を付け、本当の自分を見つけることこそ、梅田さんがこの本に託したテーマです。
「本当の自分を見つけるために役立つのが、『9マス思考法』です。具体的には、A4のコピー用紙を3つに折り、中央の段の左側に行動を、右側にその時に自分がどう思ったか、どう感じていたかなどを書き出します。大きな出来事だけでなく、小さなエピソードやふと思い出すようなさりげない体験などもできるだけたくさん書き出します。ビッグイベントを書き出した後に小さなエピソードを思い出すかもしれません。そこにも光を当てていきます。さりげない体験にこそ、自分らしいネタがあるかもしれません。そして下段にどんなきっかけで行動したのか、上段にその体験から学んだことを振り返って書きます。きっかけと学びは付箋を使うと入れ替えが簡単なので便利です。それらを3つ選び、過去・現在・未来の順につなげ、まとめることによって、やってきたことはバラバラでも、そこから“見えない一貫性”を見いだすことができるというわけです」(梅田さん)。
作戦名は自分の納得感がすべて
「9マス思考法が完成していれば、9割の作業は終わっています。名前を付けるのは残りの1割。まずは、9マス思考法で書き出した内容を口頭で説明します。最初から書き言葉にしようとすると構えてしまうので、口頭での説明を録音するほうが気楽です。3分間話したことをスマホに録音し、機械翻訳を利用して文字起こしをして清書します。そこから自分のキーワードになる言葉を見つけます。さらに類語辞典で、しっくりくる単語を探しましょう。その単語を使って、自分自身の『作戦名』を考えるのです。表現方法は『単語型』『台詞型』『書籍型』の3つがありますが、自分に最もマッチした表現を選びましょう。作戦名は、人の評価で決めるのではなく、自分の納得感がすべてです」(梅田さん)。

仕事と子育ての両立から導き出したもの
ここからはモニターによるワークとフィードバックを紹介します。あらかじめ本を読んでもらって9マス思考法のシートを準備してもらい、それを発表して梅田さんに作戦名を付けてもらいます。
トップバッターは銀行員で1児のママでもある井上愛さん。ワークをやっての感想は「自分の人生の棚卸しはすごく大変で10時間以上かかりました。でも言語化できるのはうれしいと思って楽しんでやりました」(井上さん)。

資産コンサルティングを10年以上担当、法人・個人営業の課長を経て、今は本部にて経営リスクマネジメントの研修中。CFP・FP1級・簿記2級・宅建保有者。FP×ママとして、金融教育やジーナ式を日本に広めるのが目標で、「経済と育児が分かるようになるnote」を執筆中。 夫、4歳の娘と3人暮らし。好きなものは、ピアノ・マラソン・登山・ロードバイク・7時間睡眠・娘の笑顔・夫の作った肉じゃが。
キーワードは「多面性>多様性」
「過去の行動としては、産休・育休から復帰後マネージャーに昇格したことから、マネジメントと育児に共通点があることを知りました。現在は、日経xwomanのアンバサダーになって育児の見える化についてブログを執筆しています。仕事と育児の両立は大変だし共通点も多いのですが、あまり言語化されていないことに気付きました。そして未来は仕事と育児の両立や時間の使い方の大切さについての本を出版したいと考えています。自分はたまたま仕事と育児の両立ですが、人によっては仕事と介護の両立だったり仕事と趣味の両立だったりします。こういった多様性がより理解される必要があり、さまざまな人たちが生きやすい世の中になればいいなと感じています」(井上さん)
このような井上さんの9マス思考法シートから梅田さんが見いだしたキーワードが「多面性>多様性」。
「育児をしている自分、仕事をしている自分、井上さんにはいろんな面があります。それを作戦名に落とし込んだのがこれです」(梅田さん)。
「わたしの多面性を、せかいの多様性に。」
「ワークを20枚以上書いて一貫性軸を探そうとしても見つからなかった。一貫性の呪縛にとらわれていたのかもしれません。この言葉は私の中でとてもしっくりきました。ありがとうございます!」(井上さん)

<後編に続く>
構成・文/内藤由美 写真/稲垣純也
不安の時代でも、人生は続く。どう生きるかは自分で決めていいのだ! あなたの中に眠る言葉を紡ぎ“作戦名”に昇華させたとき、人生の新しいステージが始まる。超ロングセラー『「言葉にできる」は武器になる。』の著者が放つ、今を懸命に生きる人へのメッセージ!
梅田悟司著/日本経済新聞出版/1650円(税込み)
「人に伝える・動かす」は、多くの人がさまざまな場面で直面し、悩むテーマ。いかに言葉を磨き上げるか? 誰にでもできる方法論を具体的に解説する。ビジネスコミュニケーションや企画のプレゼンなどの仕事シーンはもちろん、私生活でのアピール、就職・転職活動にも役立つ考え方が満載。
梅田悟司著/日本経済新聞出版/1650円(税込み)