内容紹介
1961年、ガガーリンの乗ったボストーク1号に人類初の有人宇宙飛行で先を越されたアメリカは、ケネディ大統領の決断により、1960年代のうちに人類を月に送る「アポロ計画」を立てる。そのための予算は250億ドル。この膨大な金額を国民に納得させるために、史上最大のマーケティング作戦が始まった。新聞、雑誌、ディズニーのテレビ番組、映画『2001年宇宙の旅』などを通じて、NASAは月面開発を売り込んだ。日本人も驚いたアポロ11号の月着陸テレビ中継や、大阪万博アメリカ館の「月の石」は、こうしたマーケティングの一環だったのだ。
冷戦時代の宇宙開発競争にアメリカが勝利することができたのは、ソビエト連邦にはなかった「マーケティングの力」を最大限に活用したからである。そして、宇宙開発によって新しい技術が次々と誕生したのと同様に、現代のマーケティング手法についてもアポロ計画が発端になっているものが多い。
「人類がまだ火星に到達していないのは、つまるところ、火星探索事業のマーケティングが失敗に終わったからだろう」(本文より)
マーケティング・PRの専門家であり、宇宙ファンの著者が、これまで語られることがなかった「史上最大のマーケティング作戦」としてのアポロ計画の姿を描きだす。
デイヴィッド・ミーアマン・スコット(David Meerman Scott)
マーケティング・ストラテジスト、プロの講演者。アポロ計画グッズの収集家でもあり、自宅リビングに月着陸船の降下用エンジンの推力室を飾っている世界でただ一人の人物と目されている。主な著書に『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』『リアルタイム・マーケティング』(いずれも日経BP社刊)など。
リチャード・ジュレック(Richard Jurek)
マーケティング・広報の専門家として金融、保険、投資、不動産分野において豊富な経験を持つ。シカゴ近郊を拠点とするインランド・マーケティング&コミュニケーション社の社長。長年の宇宙ファンで、宇宙グッズの収集家でもあり、宇宙へ行った2ドル札を世界で最も多く所有している。
関根光宏(せきね・みつひろ)
翻訳家。慶應義塾大学卒。立教大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。主な訳書に『世界しあわせ紀行』(早川書房)、『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』(エクスナレッジ)、『インド 第三の性を生きる--素顔のモナ・アハメド』(青土社)がある。
波多野理彩子(はたの・りさこ)
翻訳家。一橋大学社会学部卒。繊維・化学メーカーで広報業務に携わったあと、翻訳業に入る。国際ニュース誌『クーリエ・ジャポン』の翻訳なども手がける。訳書に『ライス回顧録』(集英社、共訳)、『最良の管理職とは何か』(PHP研究所)などがある。