内容紹介
なぜ利益を生む相互依存がリスクに変わるのか?自由貿易はかつてないほど揺らいでいる。米中対立の激化やトランプ政権の誕生、ロシアのウクライナ侵攻は、日本をはじめ各国の経済の脆弱性を高める。また、半導体、エネルギー、食糧の輸出管理や金融制裁が国家間の争いに利用され、経済はますます武器化されるようになった。
重要物資の寸断といった事態に備え、国と企業は平時からレジリエンスの強化を求められているが、過度な保護主義に傾けば、市場が生み出す効率性を損なう。
どうすれば危機の時代でも自由貿易の利益を享受できるだろうか?
本書では市場が生む効率性を活かしながら、相互依存が生む脆弱性と威圧を制度的に管理し、危機時にも選択肢を失わない形へ設計し直すための分析の枠組みを提示する。
理論と政策運営に基づく初の体系的解説
本書は経済安全保障を、経済学の視点から科学的に解説する。自由貿易の利益は何か、なぜその前提が揺らいでいるのかといった問いからはじまり、保護関税政策が利益を生むのか、危険な結節点はどこにあるのか、中国の産業政策の巧拙、経済制裁・投資規制の効果などを実証研究に基づき体系的に解説する。
経済学者としての研究と、財務省・在米日本国大使館勤務などの政策実務の双方から、5つの評価軸を通じて経済安全保障を論じ、日本が採るべき戦略も示す。経済が戦場になる時代の知的作法を身につける。
元アジア開発銀行総裁・元財務官
中尾武彦氏 推薦
「筆者の該博な知識と鋭い分析は、関税の効果、産業政策、輸出管理と金融制裁、中国という脆弱性にまで及ぶ。地政学リスク時代に必読の1冊」
目次
第1章 自由貿易の利益と脆弱性1 自由貿易という基準性
2 自由貿易の分配条件
3 関税と帰着の経済学
4 相互依存のネットワーク化
5 経済安全保障政策をどう評価するか
第2章 経済安全保障の理論と政策思想
1 経済安全保障の理論的枠組み
2 市場の失敗と国家介入
3 新しい世界の輪郭
4 管理された相互依存
5 管理された相互依存の実装
第3章 中国という製造国家
1 巨大な製造国家の現在地
2 非効率を含んだ実装力
3 製造国家の対外展開
4 制約としての人口・分配・正当性
第4章 遮断の経済学
1 遮断とは何か
2 遮断はどう効き、どう摩耗するのか
3 対ロシア制裁
4 中国を対象とするアメリカでの議論
第5章 国家能力と経済安全保障
1 国家能力とは何か
2 能力を創出する
3 能力を支える
4 日本の戦略
終章 管理された相互依存
