新年度の季節がやって来ましたね。今回は、新社会人が夏までに読んでおきたいビジネス書を5冊紹介します。

 若い世代の皆さんの中には、「やりたい仕事ができなければ、3年ぐらいで転職しよう」と考える人がいるかもしれません。もちろん、それもいいと思います。ただ僕は、いい会社に入ったなら、やり切ったという自信が持てるまで頑張ったほうがいいと思っています。

 ここで言う「いい会社」とは「魅力的な人がいる会社」のこと。会社に入ると、これまで出会わなかったようないろいろな人と出会います。世代や立場、価値観もさまざま。多様な人と一緒に働くと、うまくいかないことも多々あると思いますが、その多様さを経験することに大きな価値があります。その経験を余すところなく生かして将来のキャリアをより良いものにするために、新社会人の皆さんはまず、周囲の人に信用してもらうことから始めるのがいいと思います。

 何だかんだ言っても、人脈の力というのは強いものです。この先、自分が部署を異動したり会社を辞めたりすることがあっても、味方になってくれる関係を周囲の人と築けていたら、その後の自分のキャリアで何かあったときに心強いサポーターになってくれるはずです。では、どうしたらそんな関係が築けるのか。今回紹介するのは、そのヒントになる5冊です。

画像のクリックで拡大表示

入社前に読むべき 心得を網羅した1冊

1. 『入社1年目の教科書』岩瀬大輔著、ダイヤモンド社

 入社まで待たず、内定が出た時点で読んでおいてもいいくらい、新社会人になるときに押さえておきたい心得が詰まった1冊です。

 新入社員が仕事をする上で大事な「3つの原則」と具体的な50の行動を紹介したロングセラー。入社してすぐはとにかく「信用を失わない」ことが大事。「頼まれたことは必ずやり切る」「何があっても遅刻はするな」「メールは24時間以内に返信せよ」など、「働く基本姿勢」について教えてくれます。

 この本では、「50点で構わないから早く(アウトプットを)出せ」とも書かれています。真面目な人ほど「完璧に仕上げてから出さなくては」と思いがちですが、キャリアが浅い時期は上司と自分の認識にズレが生じやすいですし、早めにフィードバックをもらったほうがいい。上司と頻繁にコミュニケーションを取って相手の懐に飛び込むくらい、積極的な姿勢を示すのがいいのです。

 同じ新入社員ならやはり、「元気があってチャンスに食らいついてくる人」のほうが引き立ててもらえるものです。著者の岩瀬大輔さんは東大在学中に司法試験に合格し、ボストン コンサルティング グループを経て、ハーバード大学経営大学院に留学したという優秀な人ですが、そんな岩瀬さんが、入社1年目に大切なこととして「朝のあいさつはハキハキと」というのは、説得力がありますよね。

 入社1年目から組織の中で賢くキャリアを重ねていくことを前提にした、ビジネスパーソンの基本を網羅したビジネス書です。

組織の一員としての意識が変わる

2. 『社員心得帖』松下幸之助著、PHP文庫

 この本を読んでおくかどうかで、その後の働きぶりが変わってくると思うほど、社会に出るタイミングで読んでおくことをおすすめしたくなる1冊です。

 松下幸之助の「心得帖」シリーズには、『商売心得帖』『人生心得帖』などもありますが、この『社員心得帖』では、企業に身を置き、一社員として働くことの意義を説いています。

 まず大切なこととして書かれているのは、「自分がこの会社に入社したのは、一つの運命であるという覚悟を持つこと」。「自分がこの会社に入ったのは一つの運命」って、すごい言葉ですよね。でも、人はそれくらいの覚悟を決めないと頑張れないのだと思います。

 「会社を信頼すること」も大事だと説きます。入ったからにはその会社を信頼する。そうしないと本気で頑張るのがバカらしくなり、実力を発揮することができなくなるからです。また、「間違いなく部長にはなれる秘訣」として具体的に書かれているのが、入社当日の行動。例えば両親に「どんな会社だったか」と聞かれたら「いい会社だと思う。大いに仕事をしてみたい」と力強く答えることから始まるというのです。

 入社直後から会社の悪い面ばかりに目を向けていては、同じ職場のメンバーも、あまりいい思いはしないでしょう。あくまでも自分は会社を構成する一員。会社をより良い場所にしようとする意識や会社がやってくれていることへの感謝は、会社で働く上でとても大切だと説いています。

 つまり、言霊という言葉があるように、自分が働く環境をポジティブに捉え、努力すると、道が開けてくるということです。他にも「自分の会社を褒めると心がけている人はどこの会社でも注目される」「非常識ともいえるような先輩のもとで修業した人の中からは、名人といわれる人が出る場合が多い」など、組織で働く時間を自分にとって有益なものにできるような、示唆に富んだ言葉がいくつも紹介されています。

人に好かれたら、チャンスが巡ってくる

3.『人に好かれる法』近藤信緒著、山見博康編、ダイヤモンド社

『人に好かれる法』近藤信緒著、山見博康編、ダイヤモンド社
本書は品切れ・重版未定です。古書店、インターネット書店などで入手することができます

 この本は1949年に発行され、2007年に復刊されたベストセラー。著者の近藤信緒さんは池田書店の創業者です。現在は中古でしか入手ができないようですが、手に取る機会があればぜひ読んでみてください。

 まだ仕事のスキルがない新社会人は、周囲から仕事を教えてもらい、チャンスをもらう立場です。そのために「人に好かれる」ことは大前提。この本には、具体的にどうすれば人に好かれるのかが書かれています。

 社会に出てからの「人に好かれる」ということは、学生時代の仲間同士で好かれることとは異なります。最近はSNSなどで好きな人とだけつながっていればいいという風潮ですが、それでは仕事で必要な大きなネットワークをつくることはできません。知識を得て、理解できないことも理解できるようになるためには、もっとスケールの大きな「好かれる」人になる必要があります。広くどんな人にも好かれるためには「好き嫌い」ではなく、「人への興味」も持たなくてはいけません。

 「初対面のときだけはお互いに白紙の状態でいたい(先入観を持たない)」「自分の長所が相手を裁く尺度となると人に好かれない(『君は営業が苦手だよね』などと言ってしまう)」など、優れた人ほど陥りやすいわなについても言及しています。

 新社会人だけでなく、中堅もベテランもマネジャーも考えさせられる内容です。文中では「人を生かすリスト」がずらりと紹介されていて、一見の価値ありです。

若いうちに習得すべき、話し方の「型」

4. 『1分で話せ』伊藤羊一著、SBクリエイティブ

 この本は、新社会人がまずマスターしておきたい「話し方の教科書」です。著者の伊藤羊一さんは、ソフトバンクの孫正義社長からプレゼンを認められたという人物。本書では、簡潔に分かりやすく話すために「結論」「根拠」「たとえば」という3ステップの型を教えてくれます。さすが伊藤さん、本の中の説明も上手で、具体例も多く紹介されているのですぐ実践しやすい。とても参考になりますよ。

 新社会人にとって「報告」は大事な仕事です。でも、簡潔に的を射た報告ができないと、忙しい上司には嫌な顔をされてしまう。言いたいことが伝わらないと、自分も報告がおっくうになる。そうすると上司からフィードバックがもらえず、成長する機会を失ってしまいます。

 伊藤さんは「1分で話せないような話はどんなに長くても伝わらない」と言い、簡潔に話すための「型」を教えてくれます。単なる表面的なスキルではなく、ゴールは相手を動かすこと。相手にとって役立つ情報と伝え方など、コミュニケーションの本質を突いた貴重な本です。

 報告、会議、プレゼンなどシチュエーション別の伝え方はもちろん、「こういう話し方では伝わらない」という実例も豊富なので、自分の話し方と比べられるのがいいんですよね。

メモは自分の仕事を広げてくれる

5. 『メモの魔力』前田裕二著、幻冬舎

 ライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」代表の前田裕二さんによるメモ術の本。発売当時も話題になりましたが、新社会人の方にいつもおすすめしている1冊です。

 前田さんが、日常生活の中でメモを取ることで情報からどうアイデアを見つけて形にしてきたかが詳しく書かれています。読むと、大事なのはメモを取るだけでなく、メモを取った後に「なぜこれが大事なのか」を、ふに落ちる、つまり自分のものにできるまで考えることだと分かります。

 漫然とメモを取るのではなく、メモの内容を実際に生かす方法について具体的に書かれています。そのための方法は、意外にシンプル。まず「ファクト」をメモし、それを抽象化し、転用するという3ステップです。

 前田さんが立ち上げたSHOWROOMを例に挙げると、「路上ライブではカバー曲を歌うと、オリジナル曲よりもお客さんが立ち止まってくれる。さらにその人のリクエストに応えると、より多くのお金がもらえる」がファクト。それはどういうことかと抽象化すると「双方向のやり取りが大事だ」ということが分かる。そして「人は絆にお金を払う」と気づいた前田さんは、SHOWROOMを立ち上げるのです。

 自分が書いたメモのストックが増えると、中堅以上になったときも、アイデアを基に社内事業を展開したり、起業したり…という選択肢が増えるでしょう。新社会人のうちから野心的にメモを取る習慣を身に付けておくと、その後の仕事に大きな差が生まれると思います。

文/三浦香代子 構成/長野洋子(日経BOOKプラス編集) 編集協力/山崎綾

この記事を読んだ人におすすめ