あなたは投資をしていますか? それとも、気になっているけれどまだでしょうか。2024年に新NISAも始まり、投資が身近なものになってきていると感じている人も多いでしょう。「若い世代と上の年代では、投資に対するイメージが違う」と、X(旧Twitter)フォロワー63万人を誇る元日経新聞記者の後藤達也さんは言います。長く続いたマイナスイメージが払拭され、若い世代が投資を始める環境が整ってきた今、「iPhone値上げ」から見通す投資の意義とは? 知っておきたい「守り」の観点とは? 新刊『 転換の時代を生き抜く投資の教科書 』から抜粋して紹介します。
日本株のイメージが変わった
最初に私の個人的な話をさせてください。
大学を卒業して、日本経済新聞社に入ったのが2004年でした。次の日経平均株価の図をごらんください。就職活動中の2003年には日経平均が当時のバブル後最安値をつけ、日本経済は閉塞感が強まっていました。
バブルが崩壊したのは私が小学生の時。つまり、ニュースに関心を持つようになってから社会人になるまで、経済も株価も停滞が続いていました。この時代は、世の中で株といえば、「手を出したら損をするもの」「どうせ今後も大きくは上がらない」といったイメージを持つ人が多かった時です。これだけ株価が下がり続けていたら仕方ありません。
では、これから社会人になる20歳前後の人はどうでしょうか。この世代は、10歳前後でアベノミクス相場が始まりました。その後は振れがありつつも、右肩上がりです。「株は下がるもの」というイメージは薄れました。私が20歳の頃に見ていた風景は、今の若い世代には伝わらないはずです。
株式投資が国民に普及するために最も必要なのは、株価上昇といわれます。この10年余りで、その環境が整ってきました。証券会社では20〜30代の口座開設が増えています。
そして2023年には日経平均は3万3000円台に上昇し、1989年末につけた史上最高値(3万8915円)も視野に入っています。株価が上昇した理由は次の表のとおりです。強引に一言でまとめると、「停滞してきた日本経済が変わりそうだ」という期待から株を買う勢いが強まっています。
おりしも、2024年からは投資の税制優遇制度、NISAが拡充されました。証券業界では、国民の資産形成への意識変化はこの数年で過去にないうねりが起こっているという声が掛け値なしに聞こえてきます。
この記事を読んでくださっている方はそんな雰囲気を少なからず感じていると思います。『転換の時代を生き抜く投資の教科書』では、むやみに株高をあおったり、極端な投資を推奨したりするつもりはありません。まずは、投資に少し関心を持った方が、気軽に、健全に、楽しく投資の世界に入っていけるようご案内します。
iPhoneが揺さぶる国民の意識
先ほど書いた日本株の上昇も大きな変化ですが、「iPhone値上げ」というもっと身近な出来事が国民の投資への意識を揺さぶっています。私はしばしば大学や高校を訪れ、おカネの話をしています。そこで最も興味を持たれるのがiPhone値上げの話です。
2022年秋に発売されたiPhone14。1年前のiPhone13発売時に比べ、日本での販売価格が大きく引き上げられました。実はアメリカではiPhone13と14は似たスペックで、値段は据え置きでした。日本で値上げとなったのは「円安・ドル高」が直撃したからです。
2021年末に110円台だったドル円相場は一時150円台を突破。1000ドルのものを買うのに必要な円は11万円から15万円になったのです。こうしてスマホは10万円以上が当たり前になり、20万円台も珍しくなくなりました。
銀行に10万円の預金があっても、1年後には今10万円で買えるものが買えなくなっているかもしれない。そんな時代へ移ろうとしています。
1万円札10枚という物理的なおカネは変わらなくても、「10万円でなにを買えるのか」という実質的な価値は下がってしまいます。値上げがめったにないなら、資産の大半は銀行預金でもよかったのですが、今はそうではありません。「Cash is King(現金は王様)」といわれることがありますが、インフレ下では現金は王様ではありません。
値上げはiPhoneだけでないことはご存じのとおりです。日清食品のカップヌードルやカルビーのポテトチップス、キユーピーのマヨネーズなど、メジャーな商品が続々と値上げしました。マクドナルドは1年のうちに何度も値上げしました。
特に値上げが目立つのは電気代などのエネルギーや食品です。いずれも海外からの輸入に頼る度合いが高く、円安によって輸入にかかる費用が急激に高まりました。そして、厄介なことにエネルギーも食品も生活必需品です。「高いなら買わない」という選択肢がとりづらくなっているわけです。
食品といってもコストは食材だけではありません。包装材も輸入に頼っている度合いが高いですし、配送にかかるガソリン代や営業や製造における電気代も円安の影響を受けます。
生活必需品は円安値上げのリスクにさらされているという構図は長く続きそうです。投資はこうした円安インフレのショックを和らげる備えとなります。株価はインフレ時に上がりやすく、外貨資産を持っていれば、円安への備えになります。資産価値が増えます。
逆に言えば、円資産を銀行預金一点張りにしてしまうのは、リスクを抱えることになります。これまで見てきたように、預金は円安やインフレには弱いことを意識することが大切です。
外国株などに投資している場合、円安になれば円換算の評価額が増えます。外貨や株式で運用していれば、円安やインフレが起こった時の保険のような役割を果たしてくれる可能性があります。投資は資産を増やすためだけでなく、減らさないためにも有効な手段になります。
「別に大もうけしたくないから……」と投資を敬遠してきた人もいるでしょう。ただ、もうけるためではなく、将来の生活を守るためにも投資は検討に値します。「攻め」ではなく「守り」の観点で投資の意義を考え直すと、投資への見方も変わるでしょう。
もちろん株も為替も予期せぬ方向に動き、損することはあります。しかし、株や外国資産をまったく持っていないと、「円安」「値上げ」への抵抗力が弱まります。資産の一部を株や外国資産に移しておくことの重要性を意識する国民が増え始めています。
(次回に続く)
後藤達也著、日経BP、1760円(税込み)


