クリアに考えて正しい判断をするには、正確な情報、専門性の高い情報を専門家から集めることが重要だ。ところが、世の中には専門家のふりをした「専門家もどき」がたくさんいる。知ったかぶりをするような人たちだ。専門家と専門家もどきを見分ける方法について、米国のベストセラー『 CLEAR THINKING(クリア・シンキング) 』から一部抜粋して紹介する。
(前回「交渉人キッシンジャー流、手抜き部下の仕事が変わる問い」から読む)
専門性の高い情報を得るためには、本物の専門家に協力してもらう必要がある。だが自称(あるいは他称)専門家のなかには、実際にはそうではないケースが多い。
ウォーレン・バフェットの話題を持ち出す資産運用マネジャーは本当に多い。その物言いはバフェット的だが、彼らにはバフェットのように投資するノウハウはない。つまり専門家もどきだ。チャーリー・マンガーがかつてこうコメントしている。「優れた運用マネジャーと単に口の立つ人間の違いを見抜くのは本当に難しい」
だがあなた自身が専門家ではなければ、どうすればいいのか。専門家ともどきをどうすれば見分けられるだろうか。
専門家はたいてい自分の専門分野に情熱を抱いている。だからこそ秀でているのだ。休み時間さえも知識やスキルを学び、磨きをかけるのに費やす。そうした姿勢は見ていればわかる。専門家もどきは秀でることより、秀でて見えることにこだわる。それゆえに自尊心に振り回されやすい。
見きわめるのに役立つポイントをいくつか挙げよう。

相手がわからないと喜ぶ専門家、イライラする専門家もどき
●専門家もどきは突っ込んだ問いに答えられない
具体的な知識は覚えるものではなく、経験を通じて獲得するものだ。だから専門家もどきは自分が語っている概念を完全には理解していない。彼らの知識は浅い。その結果、細部について、あるいは第一原則や特異なケースについて尋ねると、まともな答えを持ち合わせていない。
●専門家もどきは語彙(ごい)を調整できない
自分が習った語彙でしか説明できないので、たいていは難解な専門用語だらけになる。語彙の背後にある概念を完全に理解していないため聞き手にわかるように説明方法を変えることができない。
●専門家もどきは相手に「わからない」と言われるとイライラする
イライラするのは「専門家らしく見えること」に過度にこだわるからだ。細部まで説明することができなければ、専門家らしさを維持するのは難しい。本物の専門家は努力して知識を獲得しているため、自分の知識を伝えることを楽しむ。相手が理解できなくてもイライラしない。むしろ自分にとって大切なことに相手も心から興味を持っているとうれしくなる。
●専門家は自分が犯したさまざまな失敗を堂々と語る
専門家は失敗が学習プロセスの一部であることを理解し、受け入れている。だが専門家もどきは自らの失敗を認めたがらない。自分が生み出そうとしているイメージが損なわれるのではないかと不安だからだ。
●専門家もどきは自分の知識の限界を知らない
専門家は自分が何を知っているかだけでなく、何を知らないかもわかっている。自分の理解には限界があることをわかっていて、自らの能力の限界に近付いているときには他者にそれを言うことができる。専門家もどきにそれはできない。自分が理解の限界を超え、理解の及ばない領域に足を踏み入れていることがわからない。
原典に当たる人、当たらない人の違い
専門家と専門家もどきを見分けるコツについて、最後に一つ追加しよう。私たちは新しいテーマを学ぶとき、たいてい大元となった研究論文を読んだり、何時間も専門家に話を聞いたりはしない。多くの人に伝わりやすいように書かれた文章を読む。学術論文を読むのと、その論文に関する新聞記事を読むことの違いをイメージしてほしい。
情報の伝達に携わる人々は素人よりはよくわかっているが専門家ではない。概念をクリアに、そして記憶に残るようなかたちで伝える能力が優れている。だから情報伝達者は専門家に間違えられることが多い。あなたが市場で専門家を探すときには、それを頭に入れておいてほしい。本物の専門知識を持っている人はたいてい、そのテーマを広めた人ではない。
(土方奈美=訳)
シェーン・パリッシュ著/土方奈美訳/日経BP/2200円(税込み)
