「簡単な確認なのに、やり取りが何往復にもなって話がなかなか終わらない」ことはありませんか? 実は多くの人が、話し方の順序が悪いせいで損をしているとITコンサルタントの江村出氏は指摘します。どうしたら、必要事項を過不足なく伝え、スピーディに意思決定することができるのか、そのコツを新刊『仕事を上手に圧縮する方法 仕事時間を1/5にして圧倒的な成果を上げたITコンサル流 仕事の基本』(日経BP)から紹介します。4回目は、一発で伝わってやり取りの往復を減らす“話し方のフレームワーク“について。
会話のやり取りが多いと仕事は進まない
会話は、仕事をスピーディに進めるためには必須です。しかし一方で、サッと終わらせるつもりだったのに、予定外に長くなって、会話だけで時間を取られてしまった、という経験のある方も多いのではないでしょうか。
「5分だけ時間をください」と話を始めたはずなのに、結局1時間かかってしまうようなケースです。
なぜ、予定外に時間がかかってしまうのでしょうか。その原因は、「会話の着地点を決めずに話し始めてしまうこと」 にあります。
たった数秒の「報告の仕方」を見れば仕事の能力がすぐわかる
例えば、顧客がある製品の性能に懸念を示していたとして、それを上司に報告するとしましょう。このとき、
「お客さんが製品Aの性能に懸念を示していました」
とだけ話してはいけません。懸念の具体的な内容がなく、次のアクションも示せていないので、多くの質問を受けることになるからです。
ただし、そうはいっても、顧客から聞いた話をくどくど話すのも得策とはいえません。何を伝えたいのかがわかりにくくなるばかりでなく、聞いているほうは細かいところが気になってしまって、横道にそれやすくなるでしょう。
仕事がデキる人の場合はこのように伝えます。
「お客さんが製品Aの性能が3秒であることに懸念を示しているので、製品Bを提案しようと思います」。
これに対して上司は、
「そうだね、OK」
と答えて、やり取りは終了です。
さて、なぜこのような報告がいいのでしょうか。一発で伝わる言い方について考えていきましょう。
「結論だけをズバッと」でいい
先ほどの会話はなぜ少ないやり取りで、素早く相手に伝えることができたのでしょうか。その理由の1つは、シンプルに「あなたの考える結論だけ」を伝えていることにあります。
会話の目的は、意見を伝え、それに対して相手が良しあしをコメントし、合意することです。 つまり、意見のない発言こそがやり取りを長引かせる一番の原因なのです。
多くの人はつい、経緯をたくさん語ったり、事実ばかりを述べたり、誰かの言葉をそのまま伝えたりしがちです。しかし、それだけでは、相手は何をコメントしたらいいのかがわかりません。それで方向性を見いだすために多くの質問をされることになるのです。そうならないためにも、ズバッと自分の意見を伝えましょう。
ところで、なかには「話すときは、背景→考え→結論の順番で」などと指導されてきた人もいるかもしれません。この話し方は一見ロジカルなのですが、やっていることは「聞き手が、話し手と同じ目線で順番に案を考える」ことになってしまいます。
結果として、新たな「相手の意見」を生み出してしまうことになったり、細かいところに注目されて質問されたりして、話がまとまらなくなってしまいます。
こうした傾向は、あなたと相手との情報の格差が大きい場合や、相手の職位がかなり高い場合に特に起こりがちです。「状況を把握していないはずだから、丁寧に説明しよう」と心がけることで、かえって場の混乱を招くことになるのです。
そうならないためにも 「あなたの意見」をダイレクトに伝えるようにしましょう。
背景と理由は相手の反応を見て補足する
結論からズバッと伝えると、やり取りは次のようになります。
上司「お客さんとの商談どうだった?」
あなた「えっと、製品Bを提案しようと思います」
一瞬、かみ合っていないように見えるかもしれませんが、まったく問題ありません。顧客が製品Aの性能に対する不満があるということを上司がすでに把握している場合には、前述のように、
「そうだね、OK」
となり、会話は収束に向かうでしょう。
一方、
「え、そうなの?」
という反応になったときは、上司は情報を持っていないということです。理由をつけ加えて、相手の理解を促しましょう。
背景や理由といった情報は、相手の反応を見ながら、補足するかしないかを決めることが得策です。
相手の持つ情報量を読み解けば、やり取りは一瞬になる
背景や理由といった情報を伝える際にカギとなるのは、「相手の持つ情報量」 です。ここに意識を向けると、相手とのやり取りを最小限に、必要な情報を伝えることができます。
もし相手の持つ情報量に対して説明が少なすぎる場合には、多くの質問を受けることになるでしょう。反対に説明が多すぎれば、話が発散してしまいます。
このちょうどよいバランスは、画一的なフレームワークで語れるものではありません。相手とのやり取りを開始する前に、次のチェックポイントを意識して、相手の持つ情報量を見極めましょう。
私自身、重要な案件については、事前に周りの人に「相手の持つ情報量」の探りを入れて説明の程度を決めることもあるくらいです。やり取りを開始する前の準備をきちんとしておくことが、やり取り自体を最短で終わらせ、最速で結論に到達するための秘訣なのです。
自信を持てるまで考えたか?
このスタイルのやり取りの基本は、あなたが自分の意見に自信を持ち、相手に伝えることにあります。責任を持って取り組み、考えきって出した結論ならば、「ちょっと強引かな」と思うくらいの伝え方でも問題ありません。
反対に、考えが少しでも甘くて「どうしようかな」という余地が残っていると、相手も心配になり、より詳しい情報を得ようとしたりアドバイスし始めてしまったりして、どんどん結論までの距離が開いてしまいます。
また、ビジネスにおいては「これが絶対に正解」ということはまずありません。そのため、自分の意見に対して不利になる情報を自分自身が持っていて、自信が持てないということもあるでしょう。
しかし、その場合にもリスクやデメリットをすべて丁寧に説明することはおすすめしません。どんな仕事にもリスクやデメリットは絶対にあるものだからこそ、致命的なもの以外はあえて言わずに進めることも、ときには必要なことなのです。
江村出著/日経BP/1870円(税込み)





