「指示された通りにやったはずなのに、なぜか残念な顔をされた」ことはありませんか? 実は多くの人が、指示を表面的に捉え、損をしているとITコンサルタントの江村出氏は指摘します。どうしたら、相手の期待を超えるアウトプットを出せるのか、そのコツを新刊『仕事を上手に圧縮する方法 仕事時間を1/5にして圧倒的な成果を上げたITコンサル流 仕事の基本』(日経BP)から紹介します。3回目は、重要なのに意外と知られていない「指示の読み解き方」について。
「目の前のゴール」は本当に、「正しいゴール」なのか?
前回 も述べたように、上司の指示から「本当のゴール」を見抜くのは難しいものです。
以下に、上司の指示から読む「目先のゴール」と「本当のゴール」の対応表を掲載します。あなたは普段、上司の指示に対して「本当のゴール」をどれくらい意識することができているでしょうか?
「本当のゴール」にたどり着けなければ、どんなに仕事を頑張っても、「あと一歩なんだよね」などと言われ、成果を認めてもらうことができません。
いかがでしょうか。「本当のゴール」と「目先のゴール」にはここまでギャップがあるものなのです。
例えば資料作成の指示を受けたときに、ただ上司から言われた情報を盛り込んで文字通りつくるだけでは、アウトプットとしては中途半端です。
資料はただ読んでもらって終わりというものではありません。相手を納得させて、次のアクションを起こしてもらうためのものです。このように考えれば、相手が、
「なるほど、わかった、やってみるよ」
と言ってくれるような資料ができて初めて「ゴールに達している」といえることにも、納得していただけるのではないでしょうか。
あるいは、会議のリードを依頼された場合も、淡々とアジェンダ通りに進めるだけでは形だけのファシリテーターにすぎません。誰かが反対意見を述べたときに議論を収束させたり、会議で出た結論に対して次のアクションを決めたりすることが必要です。
どのケースにおいても共通して大事なことは、指示された文字通りのことをするだけではなく、「次にどうするべきか?」という、未来のアクションにつなげることです。
デキるといわれる人はみな、先のことまで考えて動いているのです。
「進捗確認依頼」―求められているゴールは何か?
それでは、例えば上司から、
「担当者に進捗を確認してきてくれる?」
と依頼されたとして考えてみましょう。情報を集めた結果、
・予定より2日程度遅延している
・遅延の原因は担当者の体調不良
ということがわかったとします。
このとき、
「進捗は2日の遅延です。遅れの原因は担当者の体調不良とのことです」
と報告したならば、期待されているゴールにたどり着いたといえるでしょうか?
定量的な情報(2日)を盛り込み、理由(体調不良)まで報告できているので、十分だと感じる方もいるかもしれません。
しかし、この報告では上司の期待に応えているとはいえないでしょう。なぜなら、「次にどうするのか」という未来のアクションが含まれておらず、言葉尻で対応しただけのものだからです。おそらく上司からは、
「2日遅れたら全体としてはどうなるの? 影響は?」
などと聞かれることになり、
「確認します」
とあなたは奔走することになるでしょう。
それでは、このケースではどうすれば求められている「本当のゴール」に到達することができるでしょうか?
次のアクションを「3つ」考える
本当のゴールに到達するためには、「次に自分が何をしたらよいのか」を3つ考えてみるといいでしょう。
当たり前ですが、仕事は「遅れてしまっても仕方ない」というものではありません。遅れた分は取り戻さなければなりません。ですからこのケースにおいては、これから先のタスクのうち、どのように2日分を前倒しできるのかを検討しましょう(=1つめのアクション)。
次に、一つひとつのタスクが完全に独立しているということはほぼないもので、この進捗の遅れが別のタスクに影響を与えている可能性があります。その影響の有無を確認しましょう(=2つめのアクション)。
さらに、もし影響があるのなら、どうすればそれを軽減できるのかを考えてみましょう(=3つめのアクション)。
このように3つのアクションを考えて手を打つことができれば、遅延の影響を最小限に留め、全体としてスムーズに進められる状態になるはずです。
上司からの指示は「進捗の確認」だけでした。しかし、それに留まらず 「本当にやらなければならないこと」を導き出して、タスクを前に進めることができる人は、いちいち指示がなくても自走できて、高速で成果を出せる人なのです。
常に最適解を求めて思考する
「上司からの指示に従う」というのは、簡単なように見えて、実はとてもレベルの高いことです。
例えば「この資料のXをYに直しておいて」というような指示であっても、「すべてのXをYに直す(機械的に漏れなく一律に対応する)=A」ことを求められている場合もあれば、「すべてのXをZに直す(より適切な表現に修正して反映する)=B」ことを求められている場合もあります。
もとの表現が明らかに間違いだった場合はすべて指示通りに直すAが妥当であり、今の表現に違和感があってあくまで例として「Y」と言っていた場合にはより適切な表現を考えて反映するBが正解となるでしょう。
あるいは、文脈によってニュアンスが変わる場合には、「Xを、YとZに直す(文脈によって適切な表現に修正する)=C」ことが求められることもありえます。
要するに、指示を受けたからといって、何も考えずに実行してはいけません。まずは一度立ち止まって何が最適かをあなたなりに思考するということです。
今までこのように思考することがあまりなかった方は、もしかしたら最初はその精度が低く、次のアクションが的外れになってしまうかもしれません。それでも、「次」を考える習慣は、確実にあなたの成長につながるはずです。
思考が苦手な人への「趣味」のすすめ
本項目の最後に、深く考えることが苦手な人のための思考力アップ法をご紹介します。
私はこれまで何人も「次」を思考することが苦手な部下を持ったことがありますが、その人たちが思考力をつけるのは、簡単なことではありませんでした。思考というのは、数年かけて地道に努力して自然と定着する習慣のようなものだからです。
そのため、ここでご紹介する方法も、職務時間だけでできることではありません。仕事だからと考えるのではなく、日頃から考える習慣をつけるために、できるものから実践してみてください。
【「次」への思考力を磨く①】音楽かスポーツに打ち込む
音楽やスポーツに熱心に取り組んだことがある人ほど、「次」を考えるのが得意です。楽器であれば、「どうすればどんな音が出るか」などを常に予測しているから。そしてスポーツ、例えばテニスであれば、「どこにボールを打つと相手が取りにくいだろうか」などを常に予測しているからです。いずれも、一瞬先の未来を読む力が育まれているといえるでしょう。
ですから、過去に楽器やスポーツをやっていた経験のある方は、もう一度真剣に取り組んでみてはいかがでしょうか。上達するにつれて、仕事における思考力も伸びていくはずです。
【「次」への思考力を磨く②】未来を予測してみる
自分が興味を持っていることについて、「この先どうなるだろう?」「こうしたらどうなるだろう?」と想像力を働かせてみることもまた、思考トレーニングの一種です。ドラマや漫画でも構いませんので、少し先取りして考えてみましょう。
ⅤR技術がさらに発達すると、長距離移動はなくなるのだろうかなどと、普段の生活の中で未来のことを考えてみると、想像力を高めることができ、先読みできるようになります。おのずと仕事においても、上司や顧客の求める本当のゴールを読み解けるようになるはずです。ぜひ試してみてください。
江村出著/日経BP/1870円(税込み)


