曖昧すぎる指示、短すぎる期限、すぐにぶれる方針…仕事で「むちゃぶり」をされた経験はありませんか? そのような上司の下で結果を出すためには、ちょっとしたコツが必要です。孫正義氏の下で、東日本大震災の復興支援や新型コロナウイルスのスクリーニング形式のPCR検査センターの設立など様々な難題を爆速で実行に移してきた池田昌人氏の新刊『 仕事は1枚の表にまとめなさい。 』(日経BP)から、大きな仕事をなし遂げるための小さな習慣を紹介します。3回目は、表を使った上手な報告の仕方についてです。

(前回「採用、企画、取引先…選択に迷ったら『効果分析表』で定量評価を」から読む)

「ホウレンソウがない」と悩む上司 vs.「自分はしている」と言う部下

 私は日頃、多くのビジネスパーソンの方々に研修を行っています。一般社員向け、管理職向けなど、対象は様々です。その中で感じているのが、「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」についての、する側・される側のギャップです。

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 管理職の側からよく聞こえてくるのが、
「部下がきちんとホウレンソウをしてくれない」、
 一方、部下である一般社員から聞こえてくるのが、
「自分はちゃんとホウレンソウをしています」
 という言葉なのです。なぜ、ちぐはぐなのでしょうか。

 そもそも、ビジネスにおいてホウレンソウが重要だ、という話は、みなさん、よくご存じだと思います。「ホウレンソウ」の目的は、トラブルやミスを回避し、問題を早期解決することで業務を効率的に行うこと。組織の一員として仕事をする以上、やはり欠かすことはできません。

 しかし、ホウレンソウについて、5W1H(=いつ、誰に、何を、どこで、なぜ、どのようにホウレンソウを行うべきか)をきちんと把握している人はほとんどいないのではないでしょうか。

 私自身を振り返ってみても、誰かからホウレンソウとは何で、どうやるべきなのかを教わった記憶はありません。
 結果として、部下は自分の都合のよいタイミングでホウレンソウをしがちになり、上司はそれでは足りないと不機嫌になるのです。部下としては一生懸命仕事をして上司にホウレンソウをしたのに上司が不機嫌になるというのは、なんともモチベーションが下がる事態でしょう。

 タイミングを失しただけで、急に物事が残念なスパイラルに入ってしまうことになります。

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ホウレンソウを行うべきタイミング

 では、いつホウレンソウを行えば、こうした残念なスパイラルに陥らずに済むのでしょう。
 ここでは、私が知る限りもっともせっかちな人(=私)が納得するホウレンソウの仕方をお伝えしておきます。

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 まず①、話を聞いた際に、5W1Hを中心に口頭で復唱します。例えば口頭で「新商品体験会の企画」に関する業務指示を受けたら、それに対して、
「体験会の企画の件、○月○日○時までに、企画書にまとめて提出ですね」
 と返すなど。ポイントは、期日などのキーワードを押さえることです。

 そして②。その日、もしくは翌日に、
「昨日、依頼された件ですが、こうでした。こうなりそうです」
 という初動、つまり出だしの報告をします。
「今回の体験会について、販売部とマーケティング部から過去の知見を聞かせてもらえることになりました」
 などの形でしょうか。

 ③が中間報告です。この際、ざっくりとした数字なども添えられるといいですね。
「今回の体験会の目的を考えますと、3時間のイベントを全国数カ所で実施するのがいいのではないかと検討しています。ただ、最終的には……」
 など。この時点では、簡単なものでかまいませんので、紙やデータで資料を用意しておくといいでしょう。

 そして最後に、④最終的な報告です。これが基本のホウレンソウです。

 もちろん、不測の事態や迷ったときは、それ以外のタイミングでもホウレンソウが必要ですが、スムーズに進んでいる案件でも、この程度のホウレンソウをして初めて、「十分にホウレンソウを行っている」といえます。

 なぜ、ここまで複数回にわたって、ホウレンソウが必要かというとそれは、任せた側に見通しを持ってもらうためです。上司としては、任せた以上、極力部下にやってほしいと思う一方、部下が正しく意図を理解しているか、トラブルなどで行き詰まっていないかなどを気にせずにはいられません。

 特に重要なのが初動です。締め切りギリギリまで動かないようなことがないか、案件を理解して、必要なメンバーを巻き込んで動いているのかなど、大きな仕事であればあるほど、気になるはずです。そうした心理をくみ取って、
「現場がすぐに動いてくれそうです」
「来週には先方と会えそうです」
「明日、緊急ミーティングを開きます」
 といったような報告を初動でできるだけで、上司は安心でき、ますます、
「その方向で任せるから、よろしくね」
 という心構えになるでしょう。

「あの件どうなった?」はホウレンソウ不足のサイン

 ちなみに、ここで提示したのは、「もっともせっかちな人(=私)」でも安心できるホウレンソウのタイミングです。
 上司の性格や、あなたの職種・業種によっては、
「こんなにホウレンソウをされたら、かえって煩わしい」
 ということもあるでしょう。その場合は、②か③(あるいは両方)を適宜、減らすといいですね。減らし方については、
「そんなに細かく報告してくれなくていいよ」
 や、
「次はこの時点で報告してください」
 などの形で、上司から働きかけがあるはずです。

 反対に、上司から
「あの件どうなった?」
 という言葉が出たらそれは、ホウレンソウ不足です。急いでホウレンソウを行うだけでなく、その上司に対するホウレンソウの頻度を見直す必要があるでしょう。
 さらにホウレンソウが不足して、上司から、
「今までなんの相談も報告もなくてなんだ!」
 などと言われるようであれば、心証としては最悪です。その後の報告内容や提出した書類がどれほど優れていたとしても、相手の気持ちとしては、受け取った時点でマイナスです。

 こうしたマイナスの感情が、仕事の内容そのものにどの程度影響を及ぼすかは案件次第、相手の性格次第ではありますが、評価と無関係というわけにはいかないでしょう。

ホウレンソウの質を上げるための「表」の活用法

 多くの管理職が「ホウレンソウが足りない」と嘆く背景には、頻度やタイミング以外にも大きな要素がもう1つあります。それは、ホウレンソウした内容が、十分に伝わっていないということです。

 例えばメールでのホウレンソウを考えてみましょう。メールは、じっくり見直してから送付することができ、また相手も自分の都合に合わせて読むことができる便利なものです。

 しかしこのメールも書き方次第で、理解に大きな差が生まれます。報告者としては、
「メールで報告しました」
 と思っていることでも、受け取り側からすると、
「そんなの聞いていない」
 となってしまうことさえあるのです。これはどういうことでしょうか。

 ここでは、ホウレンソウとして好ましいメールから考えてみましょう。まずホウレンソウとして好ましいのは、「結論と論点が明確であること」です。
 メールであれば件名を見ただけでこれらがわかるのが理想です。
 あるいはそのメールを送る段階では結論が出ていない事柄であっても、論点だけは明記すること。時に相談なのか報告なのか、あるいは確認なのかもわからない、
「例の件」
 などの件名でメールを受け取ることがありますが、これはもってのほかです。

 何が書いてあるかわからないメールは後回しにされがちですし、また後々見直そうと思っても、うまく検索にかからない恐れがあります。

 メールでホウレンソウを行う場合には、送付する前の準備が肝心です。伝わるホウレンソウを行うためにも、次のように表(これを私は「メッセージノート」と呼んでいます)にしてみるといいでしょう。

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 一番右の列は、実際にその内容を書いていきます。
 例えば、私が2020年に実行した、日本で初めてのスクリーニング形式での民間企業によるPCR検査センターは、ある程度の役割を終えた時点での縮小・あるいは閉鎖も検討していました。しかし2022年の春には、まだ感染者の増減の見通しが不明確でした。

 そうした前提を踏まえ、PCR検査センターの機能とサービス提供の維持について、私がソフトバンクグループの幹部にメールを送る際には、

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 というメッセージノートをまず作り、論点を整理してから実際のメールをしたためました。

 ポイントは、件名です。ここでは、「検査センターの池田です。PCRサービスの継続提供について」としています。
 私はCSR部門をはじめ、いくつかの組織に籍を置いていますので、「池田です PCRの件で」などと書くだけでは、どの立場からの話なのかが即座には伝わりません。
 そこで「検査センターの池田です」と所属を書き、どの立場からの報告なのかを伝え、さらに内容も「PCRサービスの継続提供について」と詳しく記載しているのです。
 このように件名でどんなスタンスから、なんの話をするのかを伝えるようにすれば、結論や詳細が簡潔でも、用件は十分に伝わります。
 中には、添付ファイルなどを多用してメールを送る方もいますが、私は、メールは基本的にテキスト中心がいいと考えています。

 プレゼン資料を送る際も、結論をスクリーンショットにして張り付け、メールを開けばすぐに全容が把握できるようにしています。
 添付ファイルだらけのメールは、ファイルを開くひと手間が相手の負担になります。また、添付は検索しづらいという大きなデメリットがあります。やはり、メール本文ですべてを理解できるように書くことが大切です。

 また、このメッセージノートは、自分用のメモとしても有用です。
 上司など、忙しい人に連絡をした場合、いつリアクションが来るかはわかりません。ときに、突然電話がかかってきて慌てふためくこともないとはいえません。
 その際には、この「メッセージノート」を急いで手元に開き、それをもとに対応するのです。
 ホウレンソウが、頻度、内容ともに円滑に行えるようになると、とたんに仕事の進むスピードは上がっていきます。
 以上のポイントを念頭に置いて、丁寧なホウレンソウを心がけてみてください。

(写真:metamorworks/stock.adobe.com)
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(図制作:OKIKATA イラスト:坂木浩子=ぽるか)

「東日本大震災の復興支援、スクリーニングのPCR検査、コロナワクチン…彼は判断の難しいことを形にしてきた。この整理には、学べることがあるはずだ」(孫正義氏)──本書で紹介する「表」は、「膨大な情報を整理する」ツールであり、「抜け漏れなく、多角的に物事を考える」ツールでもあります。情報の整理・企画立案・交渉・プレゼン資料の作成・比較検討・役割分担に。コミュニケーションやチームビルディングのツールに。誰でも今日から使えるフレームワーク!

池田昌人(著)、日経BP、1760円(税込み)