その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は東徹さんの『 精神科病院で人生を終えるということ(日経ビジネス人文庫) 』です。
【はじめに】
世の中にタブーと呼ばれるものはいくつもあります。中でも、「精神疾患」はその最たるものといえないでしょうか。精神疾患について公に語られることは少なく、どのような病気であるかが一般的に広く知られているとはいえません。それどころか、精神疾患を持った方がどのような生活をしているのか、どこでどのように暮らしているのかを詳しくご存じの方は極めて少ないのではないでしょうか。
この本は、精神科単科病院という精神疾患の治療を専門とする病院を舞台とするお話を集めたものです。その中でも、一年以上の長期入院を余儀なくされていた方、そして病院で亡くなった方についてのエピソードを紹介しています。
これらは、精神疾患自体がよく知られていない中、おそらく誰も知らないといってよいほど社会の目から離れた場所での話ではないかと思います。その現実、実情をご紹介することで、少しでも精神医療がタブーから解放され、皆様の関心を向けられることになれば、という気持ちで書いたものです。想定した読者は、精神科以外の医療関係者ですが、精神科関係者にも「あるあるネタ」として共感を持っていただいたり、何かの参考にしていただければとも思っています。加えて、あわよくば一般の方にも読んでいただけるように、分かりやすい内容を心掛けています。
また、精神医療の話だけではなく、終末期医療など医療全般にわたることについても多くの字数を割いています。胃瘻や誤嚥性肺炎など、高齢者医療において避けては通れない話が随所に出てきます。その辺りについても、1つの見解を提示させていただきました。
これは日経メディカル Onlineという医療関係者向けのウェブサイトに、2015年3月から2016年9月にかけて連載したコラムを一部改変してまとめたものです。だいたい月1話のペースで書いたものですので、一気に読むと流れが少し気になるところもあるかもしれませんが、連載時の流れをそのままにしています。どこから読んでいただいても大丈夫だとは思いますが、初めから順番に読んでいただいた方がよりスムーズに意図をご理解いただけるのではないかと思っています。
エピソードの中には、心温まるような話もあれば、憤りを感じるような話もあると思います。そのようないろいろな感情を味わっていただければ幸いです。ひとくちに精神疾患といっても、人それぞれ全く違う背景があり、それぞれのストーリーがあるわけです。まずはそのことを理解していただければと思っています。
この連載を続けている間に衝撃的な事件が起こりました。相模原障害者施設殺傷事件です。そのことについても、最後の方で少し触れています。それほど深く掘り下げてはいませんが、この本を読んでいただければ、事件に対する印象もほんの少しだけ変わるかもしれない。そんなことも期待しています。
堅苦しいまえがきになってしまいましたが、中身は全体的に軽いタッチで書いています。あまり構えずに、気軽に読んでいただければ幸いです。
東 徹
【目次】

