その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は宮下芳明さんの『 13歳から挑むフロンティア思考 イグ・ノーベル賞受賞者が明かす「解なき世界」を生き抜くヒント 』です(ウェブ公開用に一部再編集)。

【はじめに】

未知に出合うときこそワクワクする

 本書のタイトルにもしている、フロンティア思考について、少しお話しさせてください。

 フロンティア(frontier)という英語は国境や境界を指しますが、ここでは「未知の領域」を探求するという意味で使っています。フロンティア思考は、そんな未知の領域に踏み込むための、2つの要素を併せ持つ考え方です。

 1つは「方法論」。すなわち、まだ分からないものをどう分析して、どう試してみるかというやり方のことです。

 もう1つは「心構え」。例えば、失敗をネガティブにではなく、新しい発見のチャンスだと考えるという感じ方です。この2つがセットになるからこそ、未知の領域(フロンティア)に対して前向きに、しかも論理的に進んでいけるのです。

 研究者は、未知の問題や予想外の結果にぶつかったとき、すなわちフロンティアを目前にしたとき、「面白いぞ! 思ってたのと違う! 次はどうなるのだろう?」「この先には何か面白い発見があるかもしれない!」と、高揚感を持って進んでいきます。それを、もっと一般に広げる狙いで考えました。

 難しそうな課題を前にうんざりしたり、計画通りにいかなくて落ち込んだりするのではなく、未知の領域を探求する面白さにテンションが上がる。フロンティア思考の根幹にあるのは、そうしたポジティブな姿勢です。

 もちろん、ただテンションを上げるだけではなく、当然ながらやり方(方法論)も重要なポイント。何をどう観察し、どのように検証するのかという冷静な思考もあってこそ「未知って面白い」というワクワクが生きてきます。

 ロールプレイングゲーム(RPG)、特にオープンワールドのゲームで遊ぶのが好きな人は、こうした考え方に共感できるかもしれません。初めて訪れる町を探索したり、謎の仕掛けを見つけたり、思いもよらないモンスターに出合ったりするたび「なんだこれは! どうやって攻略しよう?」と盛り上がりますよね。

 うまくいかなかったとしても「なーるほど、こうきたか!」なんてゲーム実況のようにつぶやきながら、「別のルートを試してみよう」「まだ見つけていないアイテムがあるのでは?」「素材を組み合わせて新しいアイテムを作ってみよう」と、楽しみながら試行錯誤を重ねていくでしょう。ゲームの攻略に取り組むモチベーションは、研究者が持つ好奇心と通ずるものがあると、僕は思っています。

 ところで、僕たちが生きているこの世界は、自分が主人公の、究極のオープンワールドといえます。なので、日常生活においてもフロンティア思考はとても大事です。

 未知の問題に出合ったときに「面白そう」と好奇心を持って、ワクワクしながら謎解きや攻略に向かう姿勢。うまくいかなくても、落ち込むどころか「次はどうやって挑もうか」と、むしろ楽しんでしまう冒険者の気持ち。こういう心構えでいれば、身近にある問題をいい意味で「ゲーム感覚」で捉え、ポジティブな姿勢で取り組めるようになるのです。

 そのため本書では、みなさんが失敗や未知の問題に出合うときに「脳内ゲーム実況」を使うことをおすすめします。ゲーム実況者のように自分を解説し、トラブルや失敗をむしろ“おいしい展開”と捉えてワクワクする――そんな姿勢がフロンティア思考を加速させるんです。

誰でも使える方法論と心構え

 執筆方針についてもここでお伝えしておきます。この執筆方針が、僕自身にとって大きなチャレンジでした。

 まず、この本はタイトルの通り「13歳」の読者を意識するようにしました。そのため、ビジネス用語や難しい用語は極力使わないようにしています。
 それは、読んだときに「何か難しいかも」「大人向けの話なのかな」「自分には関係なさそう」と感じられてしまうかもしれないからです。そうした気持ちになってしまうと、せっかくの面白さや役立つ部分がうまく伝わらない恐れがあるので、できるだけ分かりやすい言葉で伝えることを心掛けています。もちろん、大人が読んでも有益な内容であると自負しています!

 同様の考えで、この手の本にありがちな、著名な学者や実業家、アスリートといった「偉人」たちのエピソードを例に出すことも一切しないことにしました。そうした特殊な事例を挙げるよりも、「どんな人にも応用できる方法」をまとめる方が、はるかにみなさんのためになると考えるからです。

 同じ理由でさらに、「僕個人の経験についても紹介しない」決断をしました。イグ・ノーベル賞を受賞するまでの研究の顛末(てんまつ)や、僕個人のライフスタイルなどは一切出てきません。

 代わりに採用したのは、皆さんが日常生活の中で一度は出合ったことがある場面、取り組んだ経験があるイベント、身近にあるものなどを例に挙げることです。中学生から大人まで誰もが、こうした事例に対して「確かにそうだな」と実感してくれることを最優先しました。なお本書では、同じ事例を複数の章であえて再利用してみました。「同じ場面でも視点を変えれば、こんなに新たな発見が見つかるんだ」と実感していただければうれしいです!

 また、方法論だけでなく、「そのときにどんな気持ちで取り組むか」という姿勢やモチベーション、すなわち心構えについても説明するように心掛けました。これはかなり重要なことです。

 見たことのない問題に直面したときにどう取り組むか? うまくいかなかったときにどう考えるか? 想定外の結果を見たとき、次にどうつなげていくのか? そうした心構えは、方法論を知ること以上に重要だと僕は考えています。

 このように本書では、できるだけ身近で、誰にでも活かせるように、フロンティア思考の考え方や心構えについて伝えます。読者のみなさんが、それらを「どんな場面で使えるかな?」と具体的に想像できるように工夫したつもりです。みなさんの想像力にブレーキをかけることのないよう、ビジネス書などにありがちな、方法論や枠組みなどの抽象的な図解は一切入れていません。

 読者のみなさんが「これなら自分にもできそうだ」と思ってくれること。そして、日常にある問題に前向きに取り組んだり、新しいチャレンジをしてみたりできる姿勢を持てること。この本がそうしたきっかけになれたなら、大変うれしく思います!

宮下芳明


【目次】

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