その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は近藤弥生子さんの『 心を守りチーム力を高める EQリーダーシップ 』です。

【はじめに】
1秒間に浮かぶ考え方次第で、180度違う結果になる

 あなたは怒り、悲しみといったネガティブな感情とどのように向き合っていますか?
 今この瞬間も心の中に、何かしらの不満を抱えてモヤモヤしていることがありますか。

 私はネガティブ感情のコントロールが苦手です。湧いてきた不満や怒りを身近な人にぶつけてしまう癖(くせ)があり、それが長年にわたって人間関係にさまざまな支障をきたしてきました。自覚はあるので、アサーション(自己表現)トレーニングに通ったこともあります。
 私はネガティブな感情が湧いてくること自体は悪いことだと思っていません。ただ、湧いてくる感情を我慢して押し殺し続けても、きっといつか爆発してしまいます。それに、他者への恨みつらみを募らせるということは、ただただ自分が苦しみ続けることに他なりませんから、結局のところ何のメリットもありません。

 では、どうしたらいいのでしょう?

 長年の持病のように、なかなか解決できない感情の癖に悩まされていた私でしたが、ひょんなことから暮らし始めた台湾では、職場での人間関係に悩む人がとても少ないといいます。
 日本生まれの日本育ち、公務員の父とパート勤務の母という、ごく普通の家庭環境で育った純ドメスティックな私が結婚を機に台湾に移住したのが今から13年前。勤め先の台湾企業内で自分の事業部を立ち上げ独立したり、台湾で育児をしたりする中で、最も鍛えられたと思うスキル、それが“心の知能指数”と呼ばれる「EQ(Emotional Intelligence)」です。

 台湾人は、仕事でもプライベートでも、このEQを非常に重視します。
 仕事上で何らかのトラブルがあったとき、スタッフがミスをしたとき……。感情に任せて機嫌を悪くするような上司は「EQが低い」として尊敬されることはありません。逆に、自分の感情をコントロールしながら、相手を否定することなく冷静に対応できる上司は「EQが高い」と一目置かれます。対応にユーモアがプラスできると、一気に好感度が上がります。
 台湾で暮らすまでEQという評価軸が自分の中になかった私は、この文化の違いにとても驚き、同時に、これが切実に自分に足りていないと思い知ることになりました。

 クライアントや社長から、理不尽な無理難題を言われたとき。
 職場で自分の悪い噂が流れたり、部下からあれもこれも嫌だと文句を言われたとき。
 大事なプレゼン当日の朝、子どもの幼稚園がクラス閉鎖になったとき……。

 日々起こるさまざまな不条理やアクシデントにさらされ続けると、時に感情が爆発しそうになるのは当然ですよね。
 興味深いのが、台湾ではネガティブな感情を抱くこと自体が否定されるのではなく、それを“相手や周囲に影響させることをEQが低いと表現する”という点です。要は「感じ方」をどうするかではなく、「爆発させることなく、どう伝えるか」という概念です。
 遅まきながら私もEQを意識し始め、どうにか感情をコントロールしながら対処していると、不思議と周囲との関係が次第に良好になっていきました。どうやら台湾では「この人のEQは低くない」と感じてもらえると、協力者が増え、物事がスムーズに進むようなのです。「大成する人にはEQが欠かせない」と、よく言われます。
 プライベートで会う友人との会話にも、「あの女優さん、またメディアからひどい質問されていたけど、すごく上手にかわしていてかっこよかった!」「彼女は本当にEQ高いよね」などという形でEQが出てくるので、みんな本当にこの概念を意識しているんだなと感じます。
 そして、これまでは単に「文化の違いって面白いな」と意識する程度だったのが、ここ数年の間に「いや、これは今の自分、そして日本にも必要な概念かもしれない」と切実に感じるようになり、本書を書きました。
 IQ(知能指数)は生まれた時にある程度決まっているのに対し、EQは自分自身で育てることができる能力です。私もこの本を書きながらEQを育てることを意識していたら、周囲から「変わったね」と言われることが多くなりました。そして何より、ネガティブ感情を掌握できるようになると、他でもない自分自身が幸せでいられる時間が長くなるということに気が付きました。
 “能力を開発する”と聞くと難しく感じられるかもしれませんが、私自身は「たった1秒間をコントロールするだけ」で、人間関係が劇的にスムーズになると感じています。そう聞くと、少しハードルが下がるように感じませんか?

 なお、次の項目が当てはまる方はすでに十分なEQを備えていらっしゃるので、本書は必要ないかもしれません。

  • 自分の“情動(喜怒哀楽、恐れなど、一時的かつ急激に湧き起こる感情)”をよく理解している。
  • 感情に引きずられて不機嫌になることがない。
  • 簡単に「ブチギレる」ことがない。
  • オープンでおおらかな見方で人と接することができる。
  • 自分のモチベーションが低いことを、他人のせいにしない。
  • 自己と他者の間に心理的な境界線『バウンダリー(Boundary)』を引くことができている。

 もしこれらが苦手だな、うまくできていないなと感じられたら、この本を通じて、私と一緒にEQを知り、育ててみませんか?

近藤 弥生子


【目次】

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