その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は鈴木博毅さんの『 30の名著とたどる リーダー論の3000年史 』です。

【はじめに】

 本書は、古典や現代の一流のトップによる著作から、リーダーシップのエッセンスを学ぶ本です。

 取り上げた中で最も古い書籍は、紀元前8世紀頃に成立した『イリアス』。新しいところでは著名なリーダーシップ本や一流経営者の著作も分析し、リーダーシップの本質を学んでいきます。

 なぜ、古今東西の多くの書籍を紐解く必要があるのか。理由は、現代のリーダーが直面している問題が、急速に多面的になっているからです。

 平和で順調な時代には、型通りのリーダーの役割を果たせば問題ありませんでした。しかし困難な時代には、リーダーに複数の課題や難題が持ち込まれます。乗り越えるべき山の形が変わり、問題も違った風景になるのです。

 過去40年の日本経済の動向を振り返っても、順風期と逆風期がありました。

 会社の方針通りに仕事を行えばよかった時代もあるでしょう。競合他社とのシェア争いが、最大にして唯一の課題だった時代もあるはずです。

 しかし現代は、競合他社が潰れる時代です。さらに、モノを作るだけでは売れず、会社をどうやって新たな時代に適合させるかが焦点となっています。

 新製品を作るよりも、業界の垣根を越えるほうが儲かることさえあります。

 企業にとって、まったく新しいリーダーシップが必要な時代がやってくるかもしれません。日本のリーダーはこのような難しい時代に直面しながら、成果を強く期待されているのです。舵(かじ)取りが難しく、混沌としたこの時代には、リーダーシップの既成概念をいったん取り払い、より本質を見つめる必要があります。

 そのため、リーダーが果たす役割・機能の全体を俯瞰(ふかん)することも重要な目標の一つとして、本書は分析と解説を進めていきます。

リーダーが輝くのは、集団が危機や問題に直面したとき

 歴史上、あるいは現代ビジネスでリーダーが輝きを発するのはどんなときか。

 それはずばり、集団が何らかの危機に直面したときです。集団が危機に瀕(ひん)したとき、打開してくれるリーダーこそがひかり輝くのです。

 そのような実力を発揮した人には、誰もがついていきたいと願います。

 困難やある種の問題は、解決できる人にとっては出世の階段の一つです。特別な一段を踏みしめることで、より高みを目指して登り続けることができるのです。

 本書で解説する30の書籍は、困難を打破し、問題を解決した人の物語です。

 優れたリーダーは、困難な局面に、勇躍して挑戦していきます。「突破できれば、これは大きなチャンスだ!」と考える姿勢が重要なのです。

 そのためにも、可能な限り広く問題を知っておくことが有効です。リーダーが直面する問題を、多くの種類にわたって理解しておくのです。

 あらゆる困難はリーダーにとって大きなチャンスです。あなたがその問題を解決できるならば、です。

あらゆる組織は、人によって動かされている現実

 どのような集団でも、必ず人によって動かされています。その意味で、リーダーシップは「人に関する戦略思考」と言えるかもしれません。

「人に関する戦略思考」には、リーダーという立場そのものへの洞察も含まれています。

 リーダーとしてのあるべき姿を理解し、自分なりに規律を作り上げていくことは、何を優先しどんな方向を目指すのかを周囲に示し、成果を上げていくために必要なことだからです。

 一方で、「人に関する戦略思考」には、成果の上がりやすい仕組みを作り上げるという視点も不可欠です。

 人は組織という枠組みに大きな影響を受けます。同時に、人間はロボットのようには動きません。そのためリーダーには、合理的思考をしつつ人の感情や意欲の源泉を知るという、2つの方向性を持った実務能力も重要になってきます。

 つまり、リーダーは「自分という人」をリーダーに育て上げ、「周囲という人」を理解しながら、壁を突破し、時に大胆な飛躍を目指して周囲を鼓舞しなければならない難しい立場にあるのです。

 人によって動かされている組織で、最も重要な存在の一人がリーダーなのです。

優れたリーダーが持っている、価値観や視点の正体

 リーダーは、人間としての自分自身を知ることも必要でしょう。

 そのために、本書では偉大な成果を上げたリーダーたちの価値観や視点も含めました。

 実績を上げたリーダーたちは、どんな価値観を持っていたのか。彼らはどんな点を重視し、どのようにして自己研鑽をし続けたのか。

 歴史的な名著や、長期間にわたり世界中のリーダーから支持された書籍を分析しているのは、それを知るためです。

 英雄叙事詩の主人公や、アンデスの雪山での遭難から奇跡の生還を遂げた若者、第二次世界大戦で最も難しい役割を見事に果たしたウィンストン・チャーチルなど、彼らは重圧の中で、冷静かつ、果敢な決断をして窮地を脱しました。

 現代のビジネスリーダーは戦場や遭難事故で指揮を執ることはありません。

 しかしそのような状況で、リーダーが何を成し遂げたかを知ることは、リーダーの根本的な存在意義や、何が真に求められるのかを私たちに教えてくれます。

 極限の場でこそ、リーダーの本質がより浮き彫りにされるからです。

 優れたリーダーの活動、葛藤や価値観を知ることには大きな学びがあるのです。

リーダーに期待される変革ができる人になってください

 すべてのリーダーには、ある種の管理能力が必要です。

 組織や集団が成果を出すために、何らかの規律がやはり必要になるからです。

 しかし、単なる管理業務を超えた活動・役割が求められているのが現代です。

 時代の変化、人口動態の変化などで、ビジネスの革新を余儀なくされる日本企業が、ますます増えると考えられるからです。このような環境の中で「リーダーの役割」「リーダーの段階的なレべルアップ」「視野の広い問題解決」などを学び、実践力を拡大していくことには、大きな成果が期待できます。

 リーダーの役割をより創造的なものに変更できる企業が大きく飛躍し、それができない企業は次第に衰退していく可能性さえあるのです。


 真のリーダーは何ができるのか、どこまでのことを達成可能なのか。

 リーダーとしての視野の広さは、この時代に間違いなく武器となります。

 リーダーの道を歩んでいる読者の皆さんに、リーダーシップの価値とその威力に改めて気づいていただくことが、本書の最大の目標なのです。


【目次】

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